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「そこまで来ている」各曲コメント

はじめに

はじめまして。カナモリです。

2023年10月4日(水)に影ドロボウ(@kagedorobou)の1st Single『そこまで来ている』をリリースしました。
この文章はその『そこまで来ている』に収録した2曲(「そこまで来ている」「胞子」)に寄せたコメントです。


影ドロボウは2022年結成の宅録プロジェクト。
『そこまで来ている』制作時のメンバーは3人だったが、その後新たに1名加入して現在は4人体制。
メンバーが共通して好きなのは90年代邦楽とレゲエdub。スローペースながらも、音源リリースを目指して活動している。



本当は去年のリリース直後に解説的な文章を出す予定だったのですが、面倒がっているうちに半年以上経ってしまいました。
幸か不幸か『そこまで来ている』は世間的には全然聞かれていない(聞いてくださった方本当にありがとうございます。励みになります。)ので、まだ間に合うと思い書くことにしました。
駄文ですが読んでいただけると嬉しいです。
(※制作時の記憶がないので、推測で語っている部分が多々あります。忘れないうちに書くべきでした。)

音源リンクはこちら↓
(youtubeにも上がってるみたいです。)

https://music.apple.com/jp/album/%E3%81%9D%E3%81%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E6%9D%A5%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B-single/1707291620

各曲コメント

1.そこまで来ている

【歌詞】
=============================
会いたい人も
時間だけ
わからないまま
削れてく

見えなくなるほど
声がしないほど深く

何が好きかも
時代だけ
わからないまま
進んでく

聞けなくなるほど
忘れてしまうまで 見ていた

精算の船が来るまでは
立って歩いて働くが
君が見ているもの 全てが
好きなわけではないかも

意味ありげに
水面だけ
息を潜めて
揺れている

行くまで待ってて
行くまで待ってて欲しい

精算の船が来るまでは
立って歩いて働くが
君に似ているもの全てが
好きなわけではないかも

君に似ているもの全てが
好きなわけではないかも
==============================

"なんとなく死にたい"みたいな、頻繁に考えるくせに本気で思っているのかわからない気持ちがある。
これだけ書くとイタいと思われそうだけど、正直多かれ少なかれ誰もが抱えているものだと思う。決して心が病んでいるわけではなく、癖のような感じ。

"なんとなく死にたい"と似た雰囲気を感じる言葉は他にもある。

"なんとなく誰かを待ちたい"
"今日と明日の間に住みたい"
"家にいるのに帰りたい"
……

どれも考えたところで仕方がない内容だから良い。何にもならないということに安心する。
自分はまだ大人になれていなくて、いつまでも現実逃避をしたいということなんだろう。

一方で、毎日地に足をつけて生きていたいとも思う。僕は毎日体を動かすし、友達の声には反応する。自分が何か言うとそれを誰かが聞いている。生活の中で現実と向き合う時間はとても長い。長いということは大切にしなければならない。

「そこまで来ている」はそんな2つの相反
する気持ちに折り合いをつける曲なんだと思う。

"死ぬまでは現実と向き合って頑張ろう。死んでからはいくらでも好きなことができる。"みたいな。
死というと暗くてネガティブな感じがするけど、あくまでポジティブな曲のつもりだ。


ちなみに、歌い出しの部分は元々こんな感じだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
会いたい人も
わからないまま
時間だけ
削れてく
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

リリース版では2行目と3行目をひっくり返している。
現実逃避の文章は律儀に文法を守る必要もない、そう思ってひっくり返したけれど、少し読みにくい気もする。
偶然生まれた「会いたい人も時間だけ」というフレーズがロマンチックで良い。決め手はそれだった気がする。

また、この曲の最後の一文は本当に気に入っている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
君に似ているもの全てが
好きなわけではないかも
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

I Love Youを自分なりに最上級に表したつもりだったけれど、見返すと捻くれてるなと思う。
他の人がどう感じるかはわからないが、もしかしたらI Love Youであることすら伝わらないのかもしれない(悲しい)。

2.胞子

【歌詞】
=============================
取り憑いて管の中 
するり滑り込んだ
滑り台みたいな管
滑り台みたいな管

見るからに頬骨が 
ずぶり突き出した
かわいそう誰のせいだろ
かわいそう誰のせいだろ

根を張ってから10日と3日
衰え衰えゆくね
気にしない70年後が今さ
気にしない70年後が今さ

ごめんなさいね 君の顔
実はよく見えんのです
笑ってんなら上々の出来さ
笑ってんなら上々の出来さ

相変わらずだな この町も
横断歩道を渡る
ジェットコースターに乗ってる
ジェットコースターに乗ってる

根を張ってから10日と3日
衰え衰えゆくね
気にしない70年後が今さ
気にしない70年後が今さ

目が覚めて町のはずれ
バスじゃ帰れない
長すぎるこの道は
でかすぎるこの町は

見るからにあばら骨が 
ずぶり突き出した
かわいそう誰がやったの
かわいそう誰がやったの

根を張ってから30年が経って
未踏の地もまだ横たわるが そら
気にしない40年後が今さ
気にしない40年後が今さ

まだ来ない70年後が今さ
まだ先の死期がほんとは今夜さ
=============================

サルノコシカケというキノコがある。木の幹から生えるキノコで、椅子のような見た目をしている。どうぶつの森の家具にもあった気がする。
見た目はかわいらしいものの、造園分野では害菌として扱われているらしい。放っておくと木を枯らすだけでなく、胞子を飛ばして連鎖的に被害を広げるそうだ。(特にシマサルノコシカケという種類が厄介とのこと)

今簡単に「木を枯らす」と書いたが、木が枯れるということは本当に恐ろしい。それは何百年も生き続ける木がたった1つの胞子から枯れてしまうということで、怖い。
長い年月を生きる木からすると、きっと全く予期していなかった突然の死なんだろう。

また、サルノコシカケの胞子の無邪気さも恐ろしい(植物に性格を当てはめたくはないけど)。
多分、その行動が取り返しのつかない結果(枯死)を引き起こすなんて思っていないんだろう。奔放に動きまわる胞子は恐ろしいけれど、もはや魅力的ですらある。

僕含め多くの人は"自分は天寿を全うできる"と思い込んでいて、その時が近づくまでは自分の死を意識しないんじゃないかと思う。
けれど、そんな70年後の死は実は今夜訪れるのかもしれない(何百年も生きる木が簡単に枯れてしまうように)。それならいっそサルノコシカケの胞子のように奔放に生きてみたい。


……書いていて思ったけど、この曲は「とにかく今日死ぬと思って頑張れ!」という、かなり嫌な感じの曲かもしれない、、、


お気に入りの歌詞はこのあたり↓

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
長すぎるこの道は
でかすぎるこの町は
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アホすぎて好き。酔っ払って道で寝て起きた時ってこんな気分かもしれない。駅までがやたら遠い感じ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
横断歩道を渡る
ジェットコースターに乗ってる
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「横断歩道を渡るジェットコースター」という言葉の間抜けさが好き。なんとなく遅そうだし、スリル体験遊具として成立していなさそう。
僕はかなり死を恐れるタイプなので、絶叫マシンは苦手だしエナジードリンクは飲まない(絶叫マシンもエナジードリンクも死には繋がらないと知りながらも、なんとなく避けてしまう)。
「横断歩道を渡るジェットコースター」がもしあるなら、そんな人のためにあるんだろう。
けど、100%安全にスリルを楽しむってなんだかすごく傲慢な気がする。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
未踏の地もまだ横たわるが そら
気にしない40年後が今さ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アホっぽくて間抜けな歌詞の中に突然「未踏の地」という言葉が登場すると光って見える。

「根を張ってから30年が経って」ときて「気にしない40年後が今さ」なのも好きなポイント。「根を張ってから10日と3日」「気にしない70年後が今さ」と見比べると、歌詞の中で常に合計を70年にしようとしていることがわかる。合計がずれていても誰も何も気にしないんだけど、こういうこだわりが好きだ。
全体的に酔っ払ったような曲だけど、どこかで冷静さをもたせたかったのかもしれない。
自分の中で冷静さの象徴は"足し算"らしい。

おわりに

ここまで読んでくださってありがとうございます。
『そこまで来ている』は稚拙な部分も多々ありますが、影ドロボウのメンバー皆でごちゃごちゃ工夫を詰め込みながら作った思い出深い音源です。聞いていただけることが何より嬉しいです。

影ドロボウは次のリリースに向けて新曲のアレンジを練っています。
良いものが出来上がる予感がしているので、是非是非チェックよろしくお願いします!






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