Graphic Period
(普通にポップアップの服の話です)
2014年
これ書いてる今から
丁度10年前
モードシーンにストリートラグジュアリーの概念が普及して、簡潔な型紙に、グラフィックのクオリティで勝負する所謂《グラフィックモノ》が増えたタイミング。
そしてその尋常ならざる勢いは
後から見返せば
2010年代を象徴する、キーセンテンスであったように思います。
そんな中
文脈を凡そ同じくして
《後から見返さなきゃ見えないもの》
がもうひとつあります。
それが
モードブランドによる
グラフィックデザインのパワー。
この年
PRADAは複数人の現代アーティストをフックアップしたコラボレーションを行い、時代に合わせ簡潔になった雛型をキャンバスに現代芸術を映しました。
MBMJ (Marc By Marc Jacobs)は
ストリートカルチャーに根差したグラフィックアーティストを起用し、そのグラフィックをコレクションのメインピースとして数々のルックで大々的に採用しました。
GIVENCHYはタネも仕掛けも無い写真の集積を幾何学的にコラージュし、全く新しいビジュアルメイクをメンズのハイファッションシーンへ提示しました。
グラフィックモノが溢れていたこの時代、あまりにメインストリームとなり過ぎていて埋れていたけれど、後から見返すと、これらはやっぱり並々ならない傑出した美的感覚のもと作られています。
その中でも私が好きなものを
幾つか纏めて並べてみます。
先ずはMBMJ。
創始者のMarc JacobsよりセカンドラインのMBMJを任された二人のデザイナー
・Katie Hillier
・Luella Bartrey
による新時代のMBMJ。
このシーズンのアイコンコードのひとつに
極めて奇抜で独創的なグラフィックデザインがあります。
そしてこれを手掛けていたのが
・Fergus Purcell
現Ariesの創始メンバーであり
この時代のMBMJを始め、枚挙に遑無い程のレーベルと仕事をしてきたグラフィックアーティスト。
PALACEのロゴデザインも彼の仕事。
新時代を作るロンドンの若きデザインデュオとも旧知の仲。
このポップでカオスなグラフィックを使っているのに、そのビジュアルが全然“ストリートウェア然”としていないのは、このデザインデュオのセンス。
主張と主張/エゴとエゴを敢えて衝突させた、ダイナミックなコラージュワークはやっぱりモードの仕事。
MJの轍をなぞるだけでも面白くない。
ストリートコードを引用するだけなんて尚更陳腐。
そんな中での
極めてエキサイティングなディレクション。
こんなのこの時期のMBMJ、このピンポイントからしか出てきません。
ETRAKでは以前から幾つかご紹介しているシーズンですが、また幾つか……。
(2014A/W)
さあ、次はPRADAです。
この年 (2014S/S)
PRADAでは4人の壁画家、2人のイラストレーターを含む 6人の現代美術家と創造を共にしました。
そして
メンズの世界はこれ。
思い切り抽象化された不規則な立体で
ランダムに組み立てられたステージ。
S/Sらしいトロピカルなモチーフを主題に据えつつも、スモーキートーンやダルトーンを織り交ぜて暗鬱なムードが散らされています。
そして、ランウェイの中にも幾つか、このアートワークと手法を同じくして構成されたシリーズがあります。
ハイライトとシャドーのみを徹底的に抽出したビジュアルは、宛ら切り絵のようなタッチ。
H.Matisseは色彩と線の関係性、そのバランスを見出すために用いたこの手法。
《世界の画面化》へ向けたアイロニカルな視線をも感じる、平面性とその破壊を強調したこの世界観は正にMiucciaの視座からこそ飛び出す鏑矢。
今回はカットソーを2つ。
飛び切り滑らかでハリのあるカットソーに
其れこそ切り絵と同じく、グラフィックパーツを圧着して組み上げる絵画然とした作り込み。
途方も無いアイデアです。
言うは易し行うは難し……。
シーズンこそ半年分違えど
同じ暦を冠するコレクションにて
こうしたビジュアルメイクの共通項が見られたこと、これは2010年代のモードをアーカイブする上で大きなヒントであるように感じています。
ハイレーベルでこそ成り立つ、
底抜けに贅沢な素材選びと
研ぎ澄ましたビジュアルディレクション。
どちらか片方だけじゃつまらない。
S極とS極を無理矢理接合するようなこのデザインパワーをこそ、私は素晴らしく思うのです。
この辺りは
ETRAKらしさと季節感、
どちらも貪欲に両取りしてくれるとっても貴重なスペシャルピース。
是非実物をお楽しみください。
あと、折角良いグラフィックが集まっているのでオマケでこんなのも………。
METALLICAの運転免許証Tee。
ポップに描かれたScary Guyのアレコレをライセンスのフォーマットに当て嵌めた意匠。
このバンドからこの可愛いグラフィック?
という強過ぎるギャップ。
今回はこんなのも並べます。
よろしくお願いします。
まだまだ氷山の一角、
ここから先も、また書きます。
お楽しみに。
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