ある海兵のセーター
とある国の海兵用セーター。
分かりやすいネイビー。
ハーフジップでのハイネック。
別に市場価値が高いとか
隠れた名品とか
そういうんじゃない。
市場価値もそうだけど
別に僕の主観で見ても
「希少」な服ではない。
結論から言うと
「たまたま」良い服。
「「たまたま」良い」ってのも気持ち悪い日本語だけど、そうとしか言いようがない。
と言うのも
“機能のために為されたデザイン”が
数十年経った現代で
“可愛いディテール”……、
つまり、少なくとも一個人以上のこころに刺さるような、視覚的かつ理論的な魅力を持ったディテールとして
捉え直されたんです。
先ず
現代視点でのビジュアル的な魅力から順を立てていきましょうか。
第一に言及したいのは襟の仕様。
リブニットでのタートルネック故に生まれる
“首筋への吸い付き”
これはニット以外の布帛ではどうしたって、物理的に不可能なディテールです。
さあジップを開いたまま立ててみると、
なるほど
「ここで襟を折ってね」
なんて言わんばかりのアウトライン。
ハイネックの真ん中だけ
リブニットのキックバックの強さを切り替えて「襟折れ線」を作ったのか。
こうなると襟を立てた時にも
リブニットでありながらある程度首のラインをトレースしてくれることになり、必要以上に首を締めつけることも無い。
視覚的には全く切り替え線を入れずして
台襟/羽襟 の概念を持ち込んでる訳ですね。
さてこの部分では
“寒い甲板作業のために保温性の高いハイネックにしよう!”
が第一にあって
その次に
“首を必要以上に締め付け過ぎないように”
というヒントがあって
【首のラインをトレースするためのキックバック調整】
に辿り着いた。
辿り着いたその先の現代、
【羽襟として倒した時でも首に吸い付く美しいアウトライン】
として輝く。
最初からここを狙ってた訳じゃないんですよね。
まあ 「たまたま良い」 ですよね。
次です。
ジップを隠すため編み足された
ニットのカバーパーツ。
これが海兵のため作られた
ということを考えて見直すと
これは
波飛沫による浸水を少しでも防ぐフラップの意味合い。
しかし現代視点では
武骨なジップを覆い隠す、
エレガントなキラーディテール。
「ミリタリーなのに上品!」
なんて感想が出てくる。
次です。
“セーター”でありながらセーラー服みたいに表情を変える襟型。
これは、言わずもがなかもしれませんが
ハイネックのセーターを
“着やすく&脱ぎやすく”
するためのデザインとして設計された胸まで開くハーフジップの副産物。
これも当時/現場 では副産物でしかなく
これに“セーラー服性”を見出してコード遊びに興じてるのは今の我々(いや、僕だけかもしれませんね)だけ。
しかし
ミリタリー100%の野暮ったいウールニットの重さを軽快に中和する清涼感のあるディテールとして、デイリーユースに一役買ってくれることでしょう。
防寒も防風も、いくらでも叶う現代
飽食の時代に生きる我々からの需要ってのは
“面白いこと” 。
さあここでもリブニットならではの吸い付きが良い仕事をする。
布帛でのセーラーカラーじゃ出ないカーブ。
狙ってない、「たまたま」出る色気。
テーラードジャケットとか重ねたくなる。
これだよ。
互いのためにあるようなラインの噛み合わせ。
美しいですね。
でもやっぱり、真髄はカジュアルブルゾンでしょうか。
うん、程良く品を加えてくれる気がします。
シャツとセーターの中間地点という趣。
さて
テーラードよりもブルゾンに……というのは
視覚的な相性の話だけではなくって。
これでもかと平行に
Tの字に付けられた袖設計。
作業の邪魔にならない、手首ジャストの袖丈。
ついでに肩を補強するため、ヨークラインと同じく設定された編み変え。
お分かりいただけますでしょう、完全に用途に根差した服であるということです。
絶え間なく揺れるデッキでの
緊張感のあるハードワーク。
腕の可動域のみを目一杯に見据えたデザイン。
完全に“働くための服”。
別に腕をおろしてもそこまで酷いものではないんですけれど、まあ来た時の脇下のゴワ付きとかがね。
さあ折角ですので下も履かせて
僕の思うカッコ良い着方もご紹介しときます。
普通にジャストサイズで着てドレッシーなスラックスなんかを合わせたいんですけれど、素材感のギャップのせいでどうもニットが変な浮き方をしてしまいがち……。
そんな訳で
美しいカットで組まれたブラックデニム……、
なんてどうでしょうかね。
そんな都合良く出て来るアイテムカテゴリでもないですが、例えばこんなの。
綺麗なラインでしょう。
90年代末~2000年代初頭のRive Gaucheです。
脇役だけど良い服。
このセーターが偶然の合流を果たした美意識ってのはこうした西洋的なボディコンシャスにありますから、こうしたアイテムの相性は言うに及びません。
理想主義のもと組まれる清潔なダンディズム。
たまにはブログでガッツリご紹介してみました。
良い服だと思います。
この国ならではの美しい軍服。
デッドで4着入れます。
サイズスペックなどの詳細は商品ページより。
(数日後に出ます。)
(また出品しましたらIGにて告知します。)
是非宜しくお願い致します。
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ハイネックのニットウェア。
そこにジップが付くと生まれる
“ドライバーズ”感。
このセーターではハーフジップですが、その色味ってのは確かに共通するものがあります。
先程のスタイリングでも提示した
スリムフィットのセーターが作る、
削ぎ落とされた清潔なメンズスタイル。
良い個体が幾つか揃ってるので
今秋色々出していきます。
お楽しみに。
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