新規学卒就職者の3年以内の離職率を考える
ここのところ大学生の就活状況は改善の兆しを見せている。その理由は色々な理由が重なっているのだろうけれど、結果として学生たちが比較的明るく大学生活の最終盤を過ごせるようになっていて「良かったなー」と思う反面、しかしなかなか内定が貰えない学生たちを前に一様に同じ姿勢を見せることもできず難しい。
昨日、厚生労働省の若年者・キャリア形成支援担当からリリースされた「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)の発表がさまざまなメディアで報じられた。
目にした人も多いと思うが、総じて離職率が高く、少子化社会において早急な対応が求められる的な論調をベースとして報じられているように見える。
就職後3年以内の離職率は、16年ぶりの高水準、「3年連続の上昇で、コロナ禍が収束して転職活動が活発化したとみられる」とある。
ここには、2015年に施行された「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)に関する指針の中で、「卒業後3年以内のものも「新卒枠」での応募ができるように」企業に努めて欲しい旨を伝えていることも影響しているのだろう。
卒業後、すぐに新卒で就職したものも3年以内であれば新卒枠が充当されるとすれば、仕事の内容に合わずとも、「次」を考えていてもおかしくない。
一方で、大卒就職者の3年離職率の高さが16年ぶりに高かったとは言え、2009年を除いて、1995年以降はずっと30%を超えている。また3年離職率といっても1年目でやめるというよりは、2〜3年目の退職を選ぶ人が多い。
また同省のPRによると、これまで尾のところ、大卒生の場合、就職率が低いほど離職率が高く、就職率が高くなれば離職率が相対的に減る状況にあるように見える。
需要高の影響で必然的に離職率が高いと、企業の実績に大いに影響があることから、少しこれまでとは異なる問題意識があるように感じる。
何れにせよ「離職後1年の状況を見ると、初職での勤続期間が短いほど非正規雇用になりやすい傾向があり」、「正社員として転職できても、賃金は低下傾向にある」ということを考えると、記事にもある通り、「正社員として働くことや賃金上昇が目的なら、早期離職は防止すべき課題」とも言える。
労働市場が流動的なことは悪いことではなく、また学生・新入社員の人権意識の高まりと、SNSに代表される情報網の広がりもまたその結果であるだろう。そう考えると、必然ともいえ、「若者に根性がない」的なおっさん、おばさん世代の嘆きはおそらくベースとしては見当違いだ(完全に否定できるものではないが)。既社会人の我々は襟を揃え、自省的に社会の現状を見つつ、自分の会社のありようを深く考える必要もあるに違いない。
一方、若者としては、上記のような思いを持つ人ともまた働かなければならない以上、その実情もまた相互に歩み寄りつつ、会社が、社会がより良くなる方法を模索する必要があるのだろう。