セミナーレポート 自治体DXセミナー ~誰でもできるデータ活用第二弾・検索で本音がわかる~
7月15日、「自治体DXセミナー ~誰でもできるデータ活用第二弾・検索で本音がわかる~」を、オンライン形式で開催しました。講師は、第1回のセミナーと同様、山口県庁より出向中の永岡が務め、参加された多くの皆様と同じ自治体目線で、DS.INSIGHTの特徴や活用方法について紹介しました。今回の記事では、検索情報をもとに人々の興味関心を分析できるDS.INSIGHT「People」についてご紹介します。
(文:ヤフー株式会社 永岡慎也 山口県庁より出向中)
DS.INSIGHT「People」の特徴および本記事で扱う分析テーマ
DS.INSIGHT「People」は、ヤフーの検索データをもとに、人々の興味関心を分析できるサービスです。
このサービスには、3つの大きな特徴があります。
①人々の興味関心やニーズ、困り事まで検索ワードから推察し、仮説を立てることができる
②調べたいワードやテーマ、課題の関心者に、どこの地域のどんな人が、どれくらいいるのかが分かる
③2年間を通した検索量の変化が見られる(注目度合いの変化でもある)
セミナーでは、実際にDS.INSIGHTを操作し、デモンストレーションを行いながら、「ふるさと納税」と新型コロナウイルス感染症対策における「ワクチン」の、二つのテーマでご紹介しました。
今回のレポートでは、「ワクチン」について取り上げ、以下の内容について見ていきます。
・同時に検索されるワードから読み取れる困り事とは?
・年代や性別ごとに、不安や悩みは違うのか?
ワクチンの検索量、検索者の属性について
まず、ワクチンというワードが、人々からどのくらい注目を集めているか、検索推移を見てみます。検索推移とは、検索したワードが、過去2年間において、どのくらい検索されているか時系列で表したグラフです。ここでは「コロナ ワクチン」と検索した時の、検索推移を見てみます。
2021年3月より、検索数が急増しており、今まさに、人々から注目を集めていることが分かります。
※縦軸の数値は、利用の規約上省略しております
続いて、「コロナ ワクチン」と併せて、人々はどんなワードを想起しているか見てみます。検索期間は、検索数が急増している真っ只中で、今回のセミナーにあたって私が調べた期間でもある、「2021年5月」の1カ月間に指定します。
こちらが、共起マップといい、2021年5月に、「コロナ ワクチン」と同時に想起、検索されたワードを表示しています。共起マップについて簡単に紹介しますが、円の大きさは、「コロナ ワクチン」と一緒に検索された数が多い程、大きい円になります。また、円の色は、女性の検索割合が高いほど赤色に近く、男性の割合が高いほど青色に近くなります。色が濃くなる程、その割合がより高いことを示しています。併せて、円と円を結ぶ線は、「コロナ ワクチン」と、結ばれた円同士のワードが一緒に検索されたことを表し、その組み合わせの検索数が多い程、線は太くなります。
それでは、人々はどんなワードを想起、検索しているか、大きい円に注目してみます。そうしますと、「副反応」や「接種」、「2回目」等のワードが目立ちます。また、全体的に円の色は赤に近く、女性の検索割合が高いと分かります。
このことから、特に女性からワクチンの関心を集めているとが分かります。
続いて、「コロナ ワクチン」と検索した人の性別と年代別の割合を見てみます。
まずは上段のグラフの性別割合ですが、先程も共起マップで確認したとおり、女性の検索割合が高いです。年代別を見ると、年代が上がるにつれて、検索割合も高くなっており、60代、70代以上だけで過半数を超えています。
このことから、特に60代以上から関心を集めていると分かります。
ユーザーの意識の変化について
続いて、時系列キーワードを見てみます。時系列キーワードとは、指定したワードの検索者が、その前後にどんなワードを検索しているか可視化したグラフです。ここから、検索者の心情変化や行動背景が読み取れます。
今回は、「ワクチン 予約」と検索してみます。
横軸は期間(検索起点から前後それぞれ360日分が確認可能)、縦軸は関連度(「ワクチン 予約」に対して、ユーザーが表示ワードを検索する度合いを数値化したもの)を示しています。
まずは「ワクチン 予約」と検索する前に検索される傾向のあるワードだけをフォーカスして見てみます。「電話繋がらない」「遅い」等、ワクチンに対する不満がある一方、「いつから」等の、期待をしているとも見られます。
続いて、「ワクチン 予約」と検索した後のワードを見てみます。「大規模接種」等、会場を探されておりますが、「キャンセル」や「不足」等、ワクチン予約の後に、どのような疑問を感じているかが把握できます。
そこで、今度は「ワクチン キャンセル」と検索した人の背景にある悩みを把握するため、時系列ワードを「ワクチン キャンセル」で再描画してみます。
こちらが、「ワクチン キャンセル」と指定した時の時系列ワードです。横軸は先程と同様ですが、今回は縦軸を性別割合で表示しています。表示されたワードが、男性と女性のどちらから多く検索されているか表しています。下に行けば行く程、女性の検索割合が高いことを意味します。
ここでワードに注目すると、「打ちたくない」「怖い」等、不安なワードが見られ、「ワクチン キャンセル」と検索したユーザーは、他にも多くの不安を感じていると分かります。また、そういった不安なワードのほとんどが下半分に位置しており、女性がより多く、不安に感じるワードを検索していると分かります。
このことから、先程の共起マップでも確認しましたが、特に女性が、ワクチンに対して、関心や不安があると分かります。
年代ごとのワクチンに対する関心や不安について
さらにここからは、年代ごとで、ワクチンに対する関心や不安に、どんな違いがあるか、年代ごとの検索ワードから深堀をしてみます。
下の表は、2021年5月における、年代ごとの「コロナ ワクチン」を含む検索ワードのランキングです。
先程の年代別割合で確認しましたが、年代が上がると検索量も増えていたため、年代ごとで検索量は異なります。ランキング表からは量の比較ではなく、年代ごとでどんなワードがより上位に位置しており、どんな違いがあるのかを見てみます。
左から順に、10代以下、20代、そして右端に70代以上を表しています。青色で着色したワードがありますが、こちらは「副作用」や「副反応」、「危険性」等、ワクチンのリスクへの関心や不安、悩みを表すワードです。文字は小さく見えないので、色だけに注目して年代ごとの特徴を比較します。そうすると、比較的10代以下から30代までの若い世代で、リスクへの関心や不安、悩みを表すワードが上位に位置していることが分かります。一方で、60代以上では上位に位置しておりません。
続いて、表を切り替えます。
黄色で着色したワードは、先程とは対照的に、「予約」や「2回目」、「いつから」等、ワクチン接種の意向が見受けられるワードです。また、自治体名を含む場合も着色しています。自治体名を含む場合も、いつ、どこの会場か等、ユーザーが接種に向けて必要な情報を検索しており、接種の意向が見受けられると想定しました。こちらも色だけに注目して、年代ごとの特徴を比較します。そうすると、比較的60代以上の世代で、上位に位置しています。やはり、60代以上の世代は、接種の順番が回ってきていることもあり、このようなワードが上位に位置していると見受けられます。
以上のことから、今は、若い方や女性からの、リスクへの関心や不安、悩みの検索が目立っていると分かります。彼らの悩みの内容を、このランキングから理解して、悩みが解消されるよう、私を含めた自治体の皆様が、分かりやすい情報発信やサポートに努める必要があると思います。
あくまでワクチン接種は強制ではなく、本人の意思に基づき決めていただくものですが、住民の皆様が誤解や偏見に翻弄されて本来知るべき情報にたどり着かないまま接種を断念してしまうことがないよう、公的な立場である我々行政が、正確な情報や知っておくべきことを、明確に発信していかなければならないと思います。そして、彼らに接種の順番が回ってきた時に、それぞれにとって良い選択ができる状態を作ることが、望ましいと思います。
振り返り・まとめ
DS.INSIGHT Peopleから
ワクチンと同時想起されたワードから、性別、年代ごとで異なる、不安や悩み、知りたい情報を把握できました。
時系列ワードから、人々の意識の変化を把握できました。
私を含めた自治体の皆様が取り組むべきことは、
特に不安や悩みの多い若者や女性に対して、分かりやすい情報発信やサポートを行うこと。
誤解や偏見に人々が翻弄されないよう、公正な立場である行政が、正しく知るべき情報を伝えること。
今回の記事でご紹介できませんでしたが、セミナーでは、DS.INSIGHTの概要説明や、自治体の活用事例に加え、ふるさと納税をテーマにしたデモンストレーションを行っています。
録画したセミナーの動画については、ヤフー・行政デジタルコミュニティというグループで配信いたします。ぜひグループに登録いただき、動画でご覧ください。
皆様、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
※本記事の内容は公開日時点の情報です。