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こんにちは。

突然の申し出にも関わらず、前向きに検討していただいて、どうもありがとうございます。病理医ヤンデルでございます。

さっそくですが、文通の前口上をお送りします。

以下をお読みになり、ご賢察いただければ幸いです。

できれば、多少、わくわくしてほしいなー、と思っています。

そして、お返事をいただけることを願っております。


***


今回あなたとやりとりさせていただきたいとぼくが思った理由は、わりと、フクザツです。一言で説明するのが、なかなか難しいんです。



まず、ある「前提」があります。ただし、それは複数ある。

ぼくが医者であること。
SNSアカウントを持っていること。
文章を読むのが好きだということ。
文章を書くのも好きだということ。

たぶん、まだまだあります。



そしてぼくは「プロセスの中」にいます。渦中にいると言ってもいいでしょう。たとえば、こんなかんじです。

患者とのやりとりの渦中にいる。
医療者とのやりとりの渦中にいる。
フォローしているアカウントの情報を日々追いかけている。
フォロワーたちに向けて情報を発信することもある。
興味を持って読み進めている本のジャンルがある。
書き途中の本がある。



前提は、「確定している場もしくはアバターの情報」。

プロセスは、「進行形で刻々と変化していくこと」です。

もっとも、これらをそこまで厳密にわけようとも思っていません。ある程度フンイキで書いています。


どんどん当たり前のことを言い続けていきます。

これらの「前提」と「プロセス」は組み合わさって、フクザツになります。


医者であるぼくが、SNSで何かを発信する
本を読むぼくが、フォロワーに何かを教わる
書くことで、ぼくの患者に何かが起こる
……エトセトラ。


なんと言うか……無限に線がつながっていくと言うか……矢印まみれになると言うか……。


グッチャングッチャンのカオスの中にボワーンと浮き上がってくるのが、「ぼく」という存在です。AならばB、CならばDといった、ひとつひとつの因果関係を追いかけても、「ぼく」は見えてこない。


複雑系の中に、多数の矢印があって、「ぼく」がいる。



「ぼく」を作っている因果の矢印は、ひとつじゃない。

「みんな」を作っている因果の矢印も、ひとつじゃない。

もっと、ずっとフクザツなんだと思います。



ここまでの話を「そりゃあそうだね」って納得して頂けると、ようやく、「なぜあなたと往復書簡をやりたいか」という話を、ぼんやりとはじめられます。




あなたと「往復書簡」でやりとりしたいもの、見つけてみたいことは、

「ネットワークのフクザツ」を扱うための、ヒント

です。



ここ数年、ぼくはときおり、多くの医療者や研究者が主宰するイベントに出席しています。そこには患者もやって来るし、メディア関係者も来るし、さまざまな立場の人が通りすがって、いろいろなことが起こります。

そこで経験したあれこれを文章にまとめていくうち、

「医療に関する情報をたどると、複数の意図がフクザツに絡み合って、ネットワークを作っていて、まるで曼荼羅みたいだ」

と感じるようになりました。




矢印が多すぎて、単純な因果ひとつを追いかけても、全貌がちっとも見えてこない。


……この先、ここで何かを担うためには、

もっと、ネットワークの知識が必要だと思うんです。

フクザツで膨大な情報の中から、多くの人に「これぞ」という情報を届ける、届け続けるために、インターネットやSNSの扱い方を、あらためて勉強し直してみたいな、と思ったのです。


自分がこれまでやってきた、自分のペースでのんびり散歩するような、けもの道を踏み固めるタイプのSNSのやり方にも、不満はないけれど。

医療情報産業を相手にするならば、もっと戦略を学ばないといけないんじゃないかな。

そう感じる機会が増えました。



では、そういうことを、誰と話し合うか。どの関係から見出すか




思い出したのは、旧知のあなたです。

まだみんなには明かす気がないかもしれませんが、あなたはかつて、とあるツイッターアカウントで多くの人々と、軽やかにやりとりをした実績がありますよね。


ここだけの話、私は「病理医ヤンデル」というアカウントを作る前に、4か月ほど個人のアカウントでツイッターを勉強していたのですが、その際に、もっとも参考にしたアカウントが2つあって。

ひとつは「NHK_PR」。

もうひとつはあなたでした。



加えて、あなたは元々、本を作る側にいた人でもある。

本に対する愛情がある人に「話し相手」になっていただけると、うれしいのです。どんな話題を扱うにしてもです。



そしてなにより肝心なこととして。

あなたは現在、情報産業学の中枢を担うお仕事をなさっていますね。



そんなわけであなたに白羽の矢を飛ばします。もっとも、白羽の矢も一本ではないのだと思います。無数の矢印の行き交う交差点にあなたも立っている。


よかったら、これからいろいろ対話してください。

どうぞよろしくお願い申し上げます。



(2020.11.11 市原→まてぃさん)