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結局、エイダと『龍脈長歌 下部』を観なかったのは── [OPUS 星歌の響き/感想]

「いや、あれはあれで良かったんじゃない?俺は観ない方(のストーリー展開)が好きだよ」

プレイ環境 : PC(Xbox Game Pass) 月額¥825
進行状況 : 1周クリア
備考 : ラノベ、ノベルゲー等のボーイミーツガール作品は10本も知らない程度

『OPUS 星歌の響き』をクリアした。タイトル部分は後半に回す。
未プレイで本作を買うかどうか考えている人向けにネタバレ無しでちょっと述べる。トレイラーを観てくれ。

サウンドが好みならイケる。まずはそこだ。
OPUSシリーズの目玉と言えばサウンドと言われるだけあり、宇宙をめぐるヒューマンドラマを一番支えていた要素だった。特にタイトル画面の「River」の美しさはすぐに分かるが、クリア後に戻って聴くと他の感情が想起される。
台湾Sigonoのインディーゲーなのでローカライズを挟んであり、台詞とボイスのズレや誤字はあるものの、十分に作品の魅力が伝わる質だったので特に問題ない。何なら吹替声優にぼっちざろっくの伊地知虹夏/喜多郁代 役の2名が参加しているので実質ぼっちざOPUS。

ぼくはエイダがすきです https://www.famitsu.com/news/202205/12261022.html

全体的なストーリー展開は一本道の構成で、老体の主人公(リバク)が一人で未開の地に降り立つシーンから始まる。なぜ彼は一人でなければならなかったのか、彼の話すエイダと何があったのか。約10時間にわたる冒険を通して、儚くも濃密な過程を追体験するのが本作となる。詳しくは後述する実況動画を見れば早い。
また、SigonoはこれまでにOPUSシリーズを2作出しているが、直接的なつながりは無いため経験が無くても大丈夫だ。

人間以外の種族もいるが、出番はほぼこれっきり

中国文化ならではの難読漢字が多く、しかも(慣れない人が多い)信仰の話に限ってよく出てくるが、ルビ振りやフレーバーテキストなど最低限でも理解できるように用意されている。今思えば、『紅楼夢(清王朝時代の文学)』が船名に引用されているあたり、知っておけばより耽ることも出来たのだろうか。

道中の探索難易度はかなり低め。宇宙マップ探索においてリソース管理が求められるが、基本的に何をやっても詰むことは一切ない。ただ、「惑星探査(デブリ拾い)一回につき大体2個燃料が溜まる」ことを覚えておくとリソース管理が簡単になる。
また、小規模イベントとしてTRPGのダイスロールが度々挟まるが、極端に不利になるようなものは無い。むしろ、失敗でも換金できるアイテムがもらえたり、成功時の特殊アイテムでミニイベントが進むケースが多いので、どんどん挑戦した方がトータルでプラスだ。

矢印キーは結構使いづらいと思うのだが…

不満としては、UIが非常に使いづらい点だ。キーコンフィグが実装されておらず、矢印キーでUI移動するハメになる。コントローラーでプレイすればある程度快適になるが、宇宙マップでのカーソル移動が遅い。
また、セーブデータは原則一つしかないのは「一回きり」の体験を大切にするためだと考えられるが、過去の会話を確認するためにも用いる身としては、カバーとしてのバックログが無いのが解せない。
加えて、回想などの多くのイベントでは中断出来ないのが非常にやりづらい。タイトル画面に戻ったり、キャラの音声をリアルタイムで調節したり、「旅の記憶」から用語を確認することも、そのタイミングでは行えないのは不便でしかなかった。

レビューは大体こんなところだ。PC環境でプレイしたが、取り回しやすさからSwitch版で遊ぶのを大いにオススメする。僕はk4sen氏の実況動画から本作を知り、(タイミングは2年遅れたが)購入を決めたので判断材料にするのもアリだろう。

案件じゃねえか!いやk4senさんのシングルADVを選ぶセンスは個人的に大好きなので、むしろ案件で1章しかない分ゲーム紹介として勧めやすい。

以下ネタバレ有り。














全体的なストーリー展開は一本道とはいったものの、あまりにもストレートな展開で殴ってくる形だったので、「その手があったか~~」と期待を裏切られたい気持ちは、あった。けれど終わり良ければなんとやら、本当に最後の一瞬に「ありったけ」がきたな…。

圧巻

ただ、ミクロな視点でいえば、彼らの関係は予想していたもの──ボーイミーツガールと言えば恋愛だろう──とはちょっと違っていた。
リバクの動機が龍脈からエイダに移り変わった辺りで思ったことに、彼ら2人は恋愛的というよりは相棒的で、エイダが紅に囚われている以上、リバクと結ばれることはないんじゃないかな…と。ラニアが2人の会話に文字通り水をかけたのは「その方向性じゃない」というメッセージを感じた。

結局マダラ関連も深堀してないな…

中盤から終盤にかけて加速していくストーリーに没入するために、この解釈の捉え直しはせざるを得なかった…が、諦めた。

この手の物語に関わるキャラが少なければ少ない程、主人公にどれだけのめり込めるかが勝負だと思っている。
プレイングだけでロールプレイを完遂出来ないゲームならば、コントローラーを置いて頭の中で行間を作り出すんだ。それを育むために道中イベントを積み重ねたり、回想に思いを馳せたりして、最期にどう実るか見届けるのが好きだ。
じゃあさ、その宇宙を創ってみようよ。捉え直しじゃなくて、延長線上で。

『龍脈長歌』。中盤に訪れる寄り道のひとつで、本編の進行には一切関係が無い歌劇だ。上中下の3部作なので、全て観るには3回足を運ぶ必要がある。

僕は、いや彼らは、中部までしか観ていない。

下部は珍しくメール通知で案内が来ていた、にもかかわらず

なぜ下部を観れなかったのか、実際の理由は黒龍に夢中ですっかり忘れてしまったからだが、むしろこの無意識さがいいんだ。
やっと思い出した時にはもう分離後の貨物室にいて、リバクはひとしきり無線機に向かって叫び続けた後だった。どこかで口にするかもしれないし、ラニアから告げられるかもしれない。
周期を待つ傍ら、独りで劇場に足を運ぶかもしれない。手垢のついた歴史由来のストーリー、長きにわたる探索の弊害で既に結末を知っているからこそ、ありもしない横顔を観ようとしたはずだ。
一緒に『龍脈長歌 下部』を観れなかったことを悔いている彼は、あの宇宙の中にいたんだ。

証拠はない。確信はある。だから行ったんだろう?白龍にさ。

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