準備時間24hで臨む!崖っぷちドイツワインケナー挑戦記 - 後編: テイスティング編-
前編では筆記試験への恨みつらみを込めて筆を進めたところ、大変な長文になってしまった(テヘペロ
さてこのドイツワインケナー試験、筆記は公式過去問などもあり対策がしやすいのだが、テイスティングパートについては何とも情報が少ない。
なので、ぜひ記憶が薄れないうちに記録しておきたいと思う…浪人したときの自分のためにも!!!
(11/2追記: 無事合格してました)
2024年テイスティング試験実録
如何せん情報が少なかったのが実際の出題について。なので、まずは当日の模様を記述していきたい。
※試験会場内は撮影禁止のため、文字ばかりの記録になることをご容赦いただきたい
ワイン: 今年は白3赤2の計5種であった
5種なのは長らく変更が無いようだが、白・赤の出題数は例年異なる
白・赤いずれか3題の年が多いようだが、2022年は赤1題だったもよう
流れ:
筆記開始時からテーブルにグラスが5脚置いてある(蓋されている)
筆記終了時にグラスの汚れチェックの指示があり、希望者は交換可能
その後一度退出し、約30分後に再入場。その時には5杯が注がれた状態
試験時間: 30分
出題: 計20題、全問3択マークシート式
①品種、産地、VT、味筋
②品種、産地、VT、地質
③品種、産地、VT
④品種、産地、VT、アルコール度
⑤品種、産地、VT
①③⑤の産地で最北のものは?
①②③で残糖が一番少ないものは?
実際の出題ワイン:
①2022 Vom Löss Müller-Thurgau Qualitätswein Weingut Georg Albrecht Schneider (Rheinhessen)
②2021 Würzburg Silvaner trocken Qualitätswein Weingut am stein (Franken) VDP. ORTSWEIN
③2021 Vom Schiefer Riesling trocken Qualitätswein Weingut Ansger Clusserath (Mosel)
④2021 Spätburgunder trocken Qualitätswein Weinhaus Steffen (Baden)
⑤2021 Lemberger trocken Qualitätswein Weingut Fürst Hohenlohe Oehringen (Württemberg) VDP. GUTSWEINその他留意点・tips等
温度は最初から香りが取りやすい程度の適温にはなっていた。とはいえ、温度上昇後に印象が変わらないか、回答の見直しをしつつ何ラウンドかテイスティングし直した
使用されていたグラスがINAO規格よりはやや開放型なので警戒したが、私自身は思ったよりテイスティングに支障はなかった
時間はかなり余裕があるが、あまり特定の問題にひっかかるよりは一度さっと最後まで通して、全体バランスや辻褄などもふまえて二周目で最終考察すると安全
試験当日のうちに、ドイツワイン協会インスタグラムアカウントにて出題ワインの速報あり
今年の出題について、どのように考察したか
結果は品種5/5、産地4/5正答でした。
最初に宣言しておきますが、初心者なので全然参考にはなりません(ドヤァ
※メモは問題用紙に取っており回収されたので、かなり簡易的な記録になります。
①のワイン(白): ミュラートゥルガウ/ラインヘッセン
外観: 澄んで輝きのある、グリーンがかった淡いレモンイエロー、泡滓無し、粘性やや高め
香り: アロマティック、開いている。マスカット香、独特のキーンとした香り(交配品種的)。少しグラッシー(青味)のある感じもある。時間経過でマスカット香は弱まったり強まったりした
味わい: 甘味はfeinherb程度、酸味中~やや高め、苦味ほぼ感じず、アルコール度やや低め(11-11.5程度)。ミッドパレートが薄く、余韻が極端に短い
その他の考察と結論:
まずマスカット香と余韻の極端な短さが一番の判別根拠
正直ミュラートゥルガウはここまでマスカット香が顕著なものばかりではないと思うが、逆に出題対象品種の中で他にマスカット香のあるものが無いので、必然ミュラートゥルガウが第一候補
グラッシー(というかボタニカル)な香りで万一ジルヴァーナーだったらどうしようとは思ったが、アロマティックさや余韻の短さ、ジルヴァーナー特有の厚くもったりと口中に残る芯のような感じ(ミネラル感?)が無いので、却下
加えて、色調の薄さ、甘口の造り、中程度~やや高め程度の酸などもミュラートゥルガウの考察と矛盾しない
②のワイン(白): ジルヴァーナー / フランケン
外観: 澄んで輝きのある、グリーンがかったやや濃いめのイエロー、泡滓なし、粘性中程度
香り: ニュートラル。強く香って来る特徴香は無く、果実で言えばフレッシュな青りんご~リンゴ、後はほんのりとした穀物感程度。口中に含んでレトロネーザルを慎重にとるとほんのりジュニパーベリーのようなボタニカル感・グラッシーさが感じられる
味わい: 甘味なし、酸は中程度からやや高め(ジルヴァーナーにしてはある方か)、口中に残る芯のような苦味とミネラル感がある。アルコール度12.5-13程度、余韻は中程度
その他の考察と結論:
ニュートラル感、穀物感、ボタニカル、苦味とミネラル感からの総合判断
グラウブルグンダーと迷ったが外観のグリ感は無く、香りにナッツやキャラメルも感じない。酸味もグラウにしては高すぎると感じた
酸の高さは貝殻石灰質土壌によるものかなどと思ったりした(雑念w)
③のワイン(白): リースリング / モーゼル
外観: 澄んで輝きのある、グリーンがかったやや淡めのレモンイエロー、泡滓無し、粘性中程度
香り: アロマティック。フレッシュな青リンゴ、白い花、ペトロール
味わい: 甘味はトロッケンの範疇だがわずかに残糖を感じる、酸味は豊かでシャープ、苦みは殆ど感じない。アルコール度12.5程度、余韻やや長め
その他の考察と結論:
あからさまなモーゼルリースリング。これは迷った方いなかったのではないだろうか
④のワイン(赤): シュペートブルグンダー / プファルツ (×でバーデン産)
外観: 澄んで輝きのある、(ほんのり)オレンジがかった中程度のラズベリーレッド。エッジも少しオレンジがかってきている。泡滓無し。粘性中程度
香り: フレッシュなラズベリー、スミレ、クローヴ、ヴァニラ(樽は結構効いてる方)
味わい: 甘味なし、酸味豊か、渋味は量も少な目で収斂性も無くさらさら。アルコール13-13.5程度、果実味はやや控えめ。余韻中程度
その他の考察と結論:
これも品種は殆ど迷った方がいなかったであろうあからさまなシュペートブルグンダー
但し、産地はプファルツとバーデンの二択で迷った。というか今回正直その2地域の区別がつくほど飲み込んでいない。今までの数少ない経験上ではバーデンはもう少し熟した感じがある(果実味やタンニンがもう少ししっかり)と思ったので、エイヤでプファルツに
VTは、色調のオレンジ味は強かったものの、タンニン量や第三アロマの発展度など考慮すると2021程度と考えた
アルコール度は流石に15は感じなかったため13に
⑤のワイン(赤): レンベルガー / ヴュルテンベルク
外観: 澄んで輝きのある、紫がかった濃いラズベリーレッド、泡滓無し、粘性中程度
香り: フレッシュなラズベリーやレッドチェリー、野ばら、ミント、クローヴ、黒胡椒
味わい: 甘味無し、酸味中程度、渋味は量は中程度だがなめらか、アルコール13-13.5%、余韻やや短め
その他の考察と結論:
判別ポイントは「④より濃いとはいえダークチェリー系とまではいかない色の濃さ」、及び赤系フルーツに加えて野ばら、ミント、黒胡椒等の特徴香
正直1回だけ飲んだドイツのレンベルガーとはイメージが違ったのだが、何度も飲んでいるオーストリアのブラウフレンキッシュに大変近いと感じた
赤の定番出題であるドルンフェルダーは試験前に2回飲んだだけであったが、色調がもっと明確に濃かったこと、及び味わいの方向性が赤系ではなく紫系果実で、かつスイートスパイスや土のような牧歌的な香りがあったため、赤系×黒胡椒のこちらとは方向性が異なりすぎたこともあり、レンベルガーを選択
典型的なテイスティングプロセスでの考察は以上の通りだが、試験特有の考察可能事項として「出題から逆推測できる部分」もある。
例1: ②のワインについて、地質を問われているならフランケンの可能性が高い。「グラウでバーデンのカイザーシュトゥール→火成岩」も無しではないが、「ジルヴァーナー→マインドライエック&貝殻石灰」の王道パターンに比べると…
例2: ①③⑤で北を聞いてるので、明確に北と言える地域があるはず…等
本番を踏まえて振り返るテイスティング対策
以下、本番の試験と自分の行った対策を踏まえての、対策についての(半ば感想的な)考察です。
基本的なテイスティングフォーム:
少数派だとは思いますが、JSAやWSETなどの基本的なテイスティングの考え方の素地が無く(=初めてのワイン資格がドイツワインケナー試験)臨む場合は、簡単で良いのでさっと身につけておいた方が一周回って楽かと思います(考察に使える情報量が違ってくる)
JSAやWSETなどのがっつり資格系のフォームがとっつきにくければ、谷先生や鈴木先生のテイスティング本などを参考にするのも良いかと思います(というかその方がわかりやすいかもしれない)
テイスティングパートについての情報収集: 筆記同様ですが、テイスティング対策に着手する前に、情報収集はした方が良いと思います。情報が大変限られていましたが、下記のnote・ブログを大変参考にさせていただきました
講座:
筆記同様、レコール講座には大変お世話になりました。対象品種が一通り飲めて比較試飲もできるので、突貫でろくにテイスティング対策に時間を割けない中、とても効率良く学べたと思います。私の今回のテイスティング対策はほぼこちらの講座が9割です
また、試飲や解説ももちろんなのですが、吉住先生の「テイスティング専科」は資料も豊富です。品種の特徴整理などももちろんですが、特に「過去出題品種・産地の一覧表」もまとめて下さっており、「本番各品種が出たらどの地域で回答するか」のあたりを事前につけておくのにとても役に立ちました。また、今回ポルトギーザーは「捨てて(一回も試飲せずに)」臨んだのですが、それも過去出題頻度に基づく判断でした(なお、テイスティング専科「白赤」だと、多分一回で赤・白両方の資料が入手できるかと思います)
なお、上記の過去出題情報は協会HPの新着情報欄から過去の出題ワインや対策講座試飲ワインなど記録が辿れるものもあるので、自分でまとめられない事も無いのですが…結構手間がかかると思います。かつ、吉住先生の資料は協会HPに掲載される以前の年の記録も含まれてます
また、吉住先生が講義中に紹介されていたアロマラットの各品種のアロマイメージ画像が大変わかりやすかったのですが、その後ググっても出てこず…(インスティテュートHPにヴァイスだけ例で画像掲載あり)
自主練
カシエルさんが試験対策用の小瓶セットを販売されており、解説のYoutube動画もあります
私自身は駆け込み受験すぎて最終回第8弾しか利用できなかったのですが、日程に余裕のある方は上記のセットで3~4回程度自主練できると、大分安心感が出るのではないでしょうか。なお、解説Youtube動画は少しあっさり気味ではあるので、受験仲間がいる方は、集まって意見交換などされながら小瓶トレをしたらさらに効率的だと思います
さらに、余裕があれば銀座ワイナックスさんやゆううん赤坂さん、カシエルさん(店舗)など、豊富なグラス試飲やケナー対策試飲などを提供されているお店でトレーニングしたら万全かと。私はこれまた駆け込みすぎて時間がなくいずれも行けませんでしたが…
私は上述の通り時間がなさすぎてレコール講座以外でのトレーニングはろくにできなかったですが、レコールでの試飲回数が少なく自信がなかったミュラートゥルガウとドルンフェルダーについては、ボトルで購入して試験直前に自宅錬しました。結果、ミュラートゥルガウは本番に出て、ドルンフェルダーは出題が無かったものの逆にレンベルガーを選択する判断の助けになったので、やってよかったと思います
以上です。時間があれば、来年以降の自分の備忘録として、テイスティング対象品種それぞれの判別ポイントなど別途まとめるかもしれません。
前編(筆記試験について)はこちら↓