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最新HIPHOP20曲を一挙レビュー(2021.11)

伝説のイベント「さんピンCAMP」でガツンとクラい、Twitterで毎日レビューを書き続けて4年目に突入したドラム師匠です。今回は、'21年11月に公開されたMV20曲の魅力をドドンと解説しています。

  • イケてる曲をまとめて知りたい

  • 最新のHIP HOPってどんな感じ?

なんて方にオススメの記事です。それでは音の旅へ、、、

Keiji / ノスタルジック・ラヴ feat.momoka

2021/11/01 公開

不器用にしか生きれない男のノスタルジー

"NEO CHINPIRA(ネオチンピラ)"の愛称で知られる GOBLIN LAND のメンバー Keiji が、7曲入りソロEP『KATASUMI』を8月31日にリリースしました。

Trapを経由したハードコアパンクの要素が強かったGOBLIN LANDと比べるとソロ作品はHIP HOP寄りで、内面をつづった楽曲が並んでいます。

EPの中でも特に異色なのが、ダンスホールレゲエなこの曲「ノスタルジック・ラヴ」です。裏打ちのカッティングギターが切なげに鳴っていますが、それ以上に切ないのが女性ボーカリストmomokaの歌声です。沈みゆく夕日を眺める感覚に襲われます。

Keijiは「俺の愛はいつでも時代遅れ」と歌い、不器用にしか生きられない男の寂しさをラップしています。それでも音楽と向き合うまっすぐな姿勢が浮き彫りになり、音楽性の高さが伺えます。


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中島九条珈琲 × illmore × JIVA Nel MONDO / craft(Prod. illmore)

2021/11/02 公開

苦味、2人の行方、、、

大分県大分市の旧道「中島九条通り」にある喫茶店・中島九条珈琲がHIP HOPのアーティストとコラボした楽曲の第二弾。

ビートは大分県出身であり、ライフスタイルレーベル・Chilly Source に所属するビートメイカー・illmore 。ラップは、Road LeefOll Korrectといったクルーに所属し、愛知県春日井市を拠点にするラッパー・JIVA Nel MONDO が担っています。

illmoreが得意とするピアノが軽快に鳴り響くナンバー。昼下がりの午後にコーヒーを飲みながらリラックスして聴けるのかと思ったら、少し趣が違っていました。

「I see.知らない方がBetter
 とか言って(shit)突き放してみた」

少し距離を置くことで、お互いの時間を見つめ直そういう内容のリリック。コーヒーの苦味に焦点をあてたといったところでしょうか。

愁い

に満ちた空気 妙な

といったように、言葉の文節を意図的に途切れさせたパートがあり、独特のグルーヴ感を生み出しています。またそれが2人の距離感を表しているように思えてなりません。曲が終わっても2人の行方が気になってしまう。そんな後味が残る楽曲になっています。

タイアップなんだけど商品名が出てくるわけではなく、コーヒーを通じたドラマを伝えようとしているところが上品でいいですね。


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maco marets / Nagi (feat. ggoyle)

2021/11/03 公開

なぎ【凪】:風がやみ波が穏やかになること

ラッパー・maco marets のInstagramではこんなことが宣言されていました。

「11月よりmaco marets の第6シーズンがはじまります。」

これから6thアルバムに向けて新曲を毎月配信するという事で、さっそく11月1日にMV「Novemberland (feat. BUGS)」を公開し、2日後にはこの曲「Nagi」のMVが公開されました。

トラックのプロデュースは、日本のDJ / ビートメイカー・ggoyle 。彼は、UKのシンガー / ラッパー・Phoenix Troy とLHRHNDというユニットを組んでいます。maco maretsの前アルバムにも楽曲提供しており、相性の良さが伝わってきます。流動的に音色が流れるエレクトリックなトラックに乗せたリリックは、時に静止画のような情景を続けざまに映し出します。それは連続するスライドショーのよう。

「I feel…… 凪」

かと思えば静止画が動きのある描写に変わったり、息を呑むように時を止めたりと、ビートは鳴り続ける中で言葉だけで時間の感覚を変化させています。

年齢とキャリアを重ねることで声の重心が低くなり、喉の震わせ方にシブみが増したmaco maretsの声は、いつまでも聴いていたくなる。そんな心地よさを感じてください。


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USU / Too fast feat.Chan-K(Prod. DJ KENZI aka BLACKBEATZ)

2021/11/07 公開

BoomBap賛歌

アルコール依存症により生活がボロボロになり、2018年に突然引退した新潟のラッパー・USU 。それから3年の月日がすぎた2021年。依存症を克服し、再びにシーンに戻ってきた。空白の時間に1番意識していたという同郷のラッパー・Chan-K を客演に迎えた曲です。

ラッパーは、ネガティブなことがあってもリリックにすることで説得力をもった曲になります。BoomBapはそんな人間の弱さや過去の過ちすらも燻製するようにスモークし、味わい深くする力がありますね。

人生の波があることで生まれたドラマ。ラップを聴けば、リリックに書かれていることが嘘でないことは一目瞭然です。

HIP HOPを辞めようと思っても辞めれなかった。HIP HOPから愛された男の生き様が刻まれています。

「ブランクなら2年も でも書いてた
 弱い自分も 自然と愛せば
 痛みに耐えて 吐いては泣いてた」


▼さらに深堀り

地元の新聞社から取材をされた記事。アルコール依存症の体験や、病とどう向き合ってきたか、何か支えになったのかが書かれています。

https://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20211127655277.html

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PONEY / kawaru(Track by YMG)

2021/11/09 公開

やりたいことするために行動に移せ

10年前に開催された「B-BOY PARK 2011~冬の陣~」にて、FORKとの決勝戦を制しチャンピョンになった山梨出身のラッパー・PONEY

今ではベテランの域に達した活動歴の長さは、新しいことをしようとするとプライドが邪魔してもおかしくありません。PONEYはそんなことお構いなしに必死でモガく様を惜しげなく見せてくれます。

例えば、PONEY名義での1stアルバムを手売りするために全国の主要スポットでフリースタイル行脚をしたり、YouTubeでは「freestyle diary」と題した1分間フリースタイルをほぼ毎日アップ。11月30日現在、542回をカウントしています。

さらに最近では、36時間ぶっ続けでフリースタイルをやり、ギネス世界記録に挑戦していました。その無謀な挑戦は、テレビ朝日『激レアさんを連れてきた。』への出演に繋がっていきます。

そのオンエアー日に合わせて公開されたMVがこの「kawaru」です。シンプルな言葉選びをしているため、伝えたいメッセージは明白。"やりたいことするために行動に移せ"です。

地道にチャレンジを繰り返すPONEYだから言える説得力があり、リスナーの背中を押してくれます。チャレンジャーであり続けることと、目の輝き、若々しさは無関係とは言えないでしょう。ナイスパニック!

「考えたって答えは出ない 一歩踏みだしたら全部変わる」

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Disry / No Cap feat. T-STONE(Prod. E.C Fresco)

2021/11/09 公開

喉から手が出る渇望感

愛媛県出身で、"4THCOAST YELLA"を合言葉に四国を背負うラッパー・Disryが、徳島のラッパー・T-STONE を客演に迎えた曲。2人は楽曲「NEW ERA」「Badass Matsuyama Remix」「四国銀行」などで共作しており、互いにリスペクトしている事が伺えます。

この曲は、Disryが11月9日にリリースしたEP『F’st DRIP』に収録されており、NYドリル系プロデューサー E.C Fresco のビートを起用。ドラムの音数を削ぎ落とし、スネアもかすかに鳴っている程度にとどめたトラックです。キックとキックの間に生じた空白の時間が、緊迫感を生み出しています。

その隙間で語られる「俺ら行ける 歩いてこれたここまで」というリリックは、自分自身に言い聞かせているよう。

弱気になりそうな気持ちも見え隠れしますが、ネガティブに飲み込まれる前に、自分を鼓舞しているようにも聴こえます。”喉から手が出る”ということわざがあるように、Disryが発する言葉からは、成功をつかもうとする渇望感、そして切実さがヒリヒリと伝わってきます。


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Shurkn Pap / ミハエルシューマッハ (feat. Jinmenusagi)

2021/11/07 公開

ヘッズをとことん楽しませる

Shurkn Pap がメジャーから7月2日にリリースしたアルバム『NEW ERA』に収録された曲。岩崎良美の代表曲「タッチ」のフレーズを大胆に取り入れ、かつて「皇帝」と呼ばれたF1史上に残るドライバー・ミハエル・シューマッハをテーマにしていてスピード感にあふれています。

太い電子ドラム、シンセで奏でるキラキラした音色は80sサウンドそのもの。そこに弦を荒々しく弾くベースが加わることでインディーロックっぽさがミックスされています。

Verse2は Jinmenusagi がキック。彼はエミネムにも匹敵する高速ラップができ、2016年には楽曲「はやい」をスマッシュヒットさせたラッパーですので、最適な人選といえます。

Shurkn Papは、デビュー曲「Road Trip」を連想させる車ネタ、Jinmenusagiは、久々の高速ラップ披露するなどサービス精神がフル装備されていて最高です。

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Sound’s Deli / GOODBYE feat. SEEDA

2021/11/12 公開

別れすらもポジティブに変換

Sound's Deli は東京・下北沢を拠点に活動する G YARDGypsy WellKaleidoMoon JamTim Pepperoni の5MCから成るクルーで、メンバー個々でもすでにリリースを重ねています。

「GOODBYE」と聞くと別れの切なさや寂しさを連想します。この曲でもその感情はあるのですが、Moon Jam が歌うHOOKには、むしろ晴れやかさがあります。

「俺は稼いでも一緒 回しているよいつものstudio
 Goodbye yeah Bitches goodbye」

聴いてる人が楽しくなれるような音楽を作りたい
というだけあって、彼らのポジティブさが現れていますね。

客演に迎えているのは彼らとは一世代上のラッパー SEEDA です。きっかけは、Sound's Deliのビートを担当する MET がSEEDAにトラックを提供する話があったこと繋がったようです。SEEDAのラップは、Sound's Deliのメンバーと比べると落ち着いた雰囲気ですが、Verseにメロディを挿入するなどビートに対するフレッシュなアプローチは彼らと何ら変わりません。



▼さらに深堀り

Sound’s Deliの仲の良さが伝わるインタビュー動画。楽曲制作の様子や、SEEDAとの共演について語っている。(11分9秒から〜)

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SBMB / Still Flyin' feat. Itto

2021/11/11 公開

朝が寒くても陽が昇ったら暖かくて、外に出ないともったいない
そんな日に聴いて欲しい一曲。

SBMB(エスビーエムビー)は、Pitch Odd Mansion 所属のプロデューサー/ビートメイカー。ストリートウェアブランドのAPPLEBUMや飲料CMなど幅広く楽曲提供し、90sのJAZZY HIP HOP〜2000年前後のブレイクビーツ・シーンの影響を感じさせるアーティストです。

客演には、楽曲「蛍」で三味線を引くなど音楽的造詣の深いラッパー・ Itto を迎え、JAZZYなドラムと軽快かつ深みのあるピアノが心を躍らせてくれます。

2009年からラップを始めたという Itto は、ジャニーズ関連の作詞をしている近況を交えながら、まだまだ音の旅の途中だと歌っています。さらにターゲットを海外に定めたプロジェクト・Itto Collective 名義での目標も歌詞にしています。

「晴れでも雨でも喉を鳴らす
 生きてる証をここに残す
 ここで止まる気はさらさらねえ
 国超え街超えまだまだ行け」

音と向き合う興奮と、旅のワクワク感がこの曲調にマッチ。

愛知で活動していること以外、素性が明かされていないSBMBも、アルバムを控えているといいます。この曲と一緒に旅をしながら、彼らの次の動向を楽しみにしましょう。



▼さらに深掘り

世界市場を意識し、日本人でしか奏でられないオリジナリティーを追求したItto Collectiveの1stシングル。和太鼓や三味線など和楽器を用いて、現代ミュージックの土壌へ昇華させている。

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illrain / Birkin ft.Carz & Henny K

2021/11/12 公開

フレッシュな感性に、集まる才能

3rdアルバム『Brainwash Weapon』をリリースした山口のビートメーカー・illrain 。シンプルな音使いの中に、フレッシュな感性を兼ね備えているからアルバムには注目の若手ラッパー達が名を連ねています。

客演参加しているCarz は、AbemaTV『ラップスタア誕生』で31人まで勝ち残った横浜のラッパーで、3rdステージに勝ち残れなかったことを惜しむツイートが数多く上がっていました。

彼らは10月18日に"Carz & illrain"名義で5曲入りのEP『HIGH WALL』をリリースしたばかりで、その創作意欲に驚かされます。

Carzは張りのある高音ボイスが特徴的で、スピーカーを声で覆ってしまうような張りと前に向かう突進力があります。

対するVerse2の Henny K は男性かと見間違うほど低音ボイスが特徴的で、Carzとの声のコントラストが効いています。この2人を組み合わせたillrainのチョイスはいいですね。Henny Kの声が余計に低音が響き、スゴみすら感じます。

illrainのビートは日本のホラー映画から影響を受けたホラーコアトラップと言われており、胸騒ぎのする音作りです。そんな心細さを打破する2人のラップが頼もしく感じられる曲となっています。


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XLARGE / JINSEI feat. OZworld (prod. DJ JAM)

2021/11/16 公開

悠久の彼方からうけづく命のリレー

ストリート系ブランドの老舗 XLARGE が、10月よりXLARGE RECORDSとしてレーベルを始動させた。SANTAWORLDVIEWを客演に迎えた第一弾シングルに続く第2弾は沖縄のラッパー OZworld をフィーチャーしています。

「この旅は 他にはないお前のJINSEI(人生)」

から始まるこの曲は、OZworldがR'kuma(レオクマ)名義でラップを始めた16歳から24歳までを振り返り、自由に生きろと歌っています。

DJ JAMによるビートは、シルクが風に吹かれてゆらめくように、優雅さを兼ね備え、光沢のあるやしなやかなサウンドになっています。

そのゆったりとした時間の流れは、人生をより俯瞰してとらえ、悠久の彼方から続く命のリレー。その中で産み落とされた1人のラッパーについて歌っているように感じられます。


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PEAVIS / ガラスの地球 (黒田卓也 & Shin Sakiura Rework)

2021/11/17 公開

手塚治虫からインスパイア

1月20日に2ndアルバム『PORTRA¥AL』をリリースした福岡のラッパーPEAVIS 。そのアルバムのラストナンバーを飾っていたのが、「ガラスの地球」です。

プロデュースした Shin Sakiura は、SIRUPやmaco marets、BASIとの共作で知られるギタリストで、HIPHOP、R&Bなどをミックスさせた都会的でハイセンスなサウンドを作り出すアーティストです。

今作では、新たにジャズトランペッターの黒田卓也を共同プロデューサーに迎え、Reworkという形で原曲に新たな息吹を吹き込んでいます。

PEAVISは、マンガ家・手塚治虫氏によるエッセイ集『ガラスの地球を救え』からインスパイヤされており、その本には、"人間の欲望によって美しい自然が消えていくこと"への危機感や、"生命の力強さ"に対する尊敬の念が書かれており、リリックにも反映されています。

「このままじゃ壊れちゃいそう 向き合う強さを君と取り戻したいよ」

幸せへの再定義や、進みすぎたテクノロジーへの警告、未来に受け継ぐ大切なことなどを愛情で包むようにラップしています。

Reworkされたアレンジで、曲の透明さが上がり、メッセージの純度が上がったように感じられますね。特に突き抜けるようなトランペットの音色が、未来への橋渡しをしてくれるようで、我々の行く先を明るく照らしてくれます。



▼さらに深堀り

PEAVISがTwitterでツイートをメンションしたことから繋がったPEAVISと手塚治虫の娘・手塚るみ子の対談記事。MVの撮影の様子や、漫画家・音楽家として地球のためにできることを模索してことが分かる。

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RYKEYDADDYDIRTY / CRY NOW SMILE LATER

2021/11/19 公開

生きる喜びに満ち、言葉があふれ出す

2019年7月、知人男性2人に対して暴行を行ったとして逮捕されたラッパーRYKEY。実刑判決が下り、水戸刑務所に収監されて1年間を過ごしました。獄中でも手記が公開され、アーティスト名をRYKEY DADDY DIRTY に変えることがつづられていました。

KAI-YOUのインタビューでは、「“RYKEY DADDY DIRTY”っていうのは汚れた父親だから。自分で自分の名前を汚したんだから、これ以上汚すことは許されないよ」と話しています。

ラッパーであること、父親であること、両方の責任をどうやって全うしていくか。刑務所の中で自分の在り方を見つめ直し、最良の答えを模索することになります。

この曲は、出所してRYKEY DADDY DIRTY名義で発表した初めての曲。独房で感じたこと、ラッパーに憧れた中学生から変わらない気持ちを歌にしています。そして、自分に憧れてラップを始めるであろう中学生にもエールを送っています。


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chelmico / 三億円

2021/11/19 公開

2人ならではの抜けの良さ

メジャーのフィールドで活躍し、キャッチなキャラクターで人気のRachelMamikoからなる女性ラッパー2人組ユニット・chelmico(チェルミコ)。

3月13日には、Rachelが結婚したことと併せて、妊娠したことを発表した。

最近では、エルビスコステロが、テレビ番組『映像研には手を出すな』の主題歌「Easy Breezy」に対して"Very cool"と褒めていたことが話題になりました。

そんな公私ともに調子のいいchelmicoの新曲は、“お金があればみんなが平和になるんじゃない?”という発想から生まれた曲です。

多くもなく、少なくもなく、使いきれないけどリアリティーのある額ということで3億円になったということです。

お金を扱ったものは、"お金より大切なものがある"という曲が多いのですが、彼女らは「毎月3億円ちょうだい」とあっけらかんと言ってるところが突き抜けていていますね。

それがパーカッシブなラテン系サウンドとマッチしていて楽しめます。


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MONJU / Ear to street(Prod. 16FLIP)

2021/11/22 公開

本能を掻き立てるBoomBap

3rd EP『Proof Of Magnetic Field』を発表するのは、ISSUGI、仙人掌、Mr.PUG によるヒップホップユニット・MONJU 。2008年に発表した2nd EP『Black de.ep』以来の約13年半ぶりの新作なっています。

パーカッションを絶妙にミックスさせたドラム、アフリカ由来の黒人が受け継ぐコーラスがプリミティブに本能を掻き立てます。

"足の向くまま気の向くまま"に歩くことをテーマにした曲。そのステップには理由があって、その理由はストリートに聞いてくれと歌っています。

HIP HOPの形がどんどん変わっていってもBoomBapを貫き、地道に活動を続けている3人だからこそ、言葉がストリートに染みていくように感じられます。


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JJJ / Cyberpunk feat. Benjazzy(Prod. JJJ)

2021/11/24 公開

殿ご乱心を!

 JJJ 、1年振りとなる待望の新曲は、夜の街をカオスティックに走り抜けるサイバーエクトリックサウンド。彼はブルージーなギターや、生演奏を取り入れた温もりあるサウンドを得意とするだけに、そのギャップに驚きました。

客演にはBADHOPのBenjazzyを迎え入れおり、この組み合わせも意外性にも驚きました。2人は共に川崎出身なので、同郷の繋がりではないかと思われます。

Benjazzyは、俺達についてこれる?といわんばかりに挑発する口調でまくし立てます。JJJは間を作ることでグルーブ感を作るラップスタイルですが、この曲では英語を交えながら文節を飛び越え、一筆書きのように一気にラップする箇所が聴きどころとなっています。カッコいい。


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Killing Mob & 法斎Beats / Lonely In The Dark

2021/11/24 公開

じんわりと心を暖めてくれる

名古屋市を拠点に活動するラッパー・Killing Mob 。奈良のビートメーカー・法斎Beats とのダブルネイムEP『Bring』を9月30日にリリースしました。EPのラストを飾るこの曲は、リリックを"君"にたとえ、クリエイターならではの産みの苦しみを歌にしています。

ビートを聴きながら目を閉じ、自分と対峙しながら、正解を求めて歌詞を探っていく孤独な作業。そこには諦めであったり、同業者への妬みや嫉妬、お酒に逃げる姿も吐露しています。

すべてを正直にさらけ出すKilling Mobが、暗闇の中でもなんとか希望を見出そうとするひたむきさに胸が打たれます。

法斎Beatsによるピアノのフレーズが優しいですね。薪ストーブのようにじんわりと心を暖めてくれる楽曲に仕上がっています。

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Tokyo Young Vision / EDO feat. Big Mike, OSAMI, Hideyoshi & Young Dalu

2021/11/24 公開

言いたいことはラップで吐き出す

3月31日をもって活動を休止することを発表したNormcore Boyz 。それ以前にGucci PrinceとSpadaが音楽的な方向性の違いから、インスタライブで脱退を表明するなどクルーが機能不全になっている事が明らかにされました。

Gucci PrinceとSpada以外のNormcore Boyzのメンバーは、元々母体クルーであった Tokyo Young Vision として新たなスタートを切ることになります。

Tokyo Young Vision はHideyoshi、Young Dalu、Osami、Big Mike、DJ NORIOで構成され、1st EP『Chawalit』が7月9日にリリースされました。そのオープニングを飾るのがこの曲です。

脱退したメンバーに向けているのでは?と勘繰ってしまうほど、怒りを含んだ言葉が飛び交うリリック。ただそれは直接的な名指しがない分、Big Mike、Osami、Hideyoshiのいつになく低い声が、曲に普遍的なスリリングさと勢いを生んでいます。

最後のVerseを務めるYoung Daluは、以前と変わらずメロディアスなフロー、そして前向きな言葉で締めていてホッとひと安心。互いの道で頑張って欲しいと思いました。


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GOMESS & Yackle / Lost Planet (feat. KERENMI)

2021/11/24 公開

この曲が配信された際、自閉症と共に生きるラッパー GOMESS からのツイートには、こんな言葉がつづられていました。「命が潰(つい)えたあとも残るように。 あの事件のあと最初に書いた曲です」

あの事件とは、おそらく9月23日の出来事だと推測されます。


“遺書まで書き残し、このツイートの後で死ぬ方法をあれこれ考えたが、どう死ねばいいか分からなかった。あれこれ考えている内に友達が自宅を訪ねてきた。最初は無視しようと思ったけど、何度も呼び鈴を鳴らすので部屋に入れて思いとどまった”
という趣旨をYouTube LIVEで語っています。


「死んだ君を思い出して 今を大事に思いました
 僕は君を失うことで 幸せに気づく愚か者です」

そんな出来事の後に書いた曲とあって、必然的に死を意識した曲となっています。君の死を悼むというより、死ぬはずだった自分に、生きている今の自分が言葉をかけているように思えます。

途切れ途切れのグリッチ音が、いつ切れるか分からない生命の糸のように不安定に鳴らさます。

後半には天から光が指すようなストリングスが鳴らされ、魂が昇華されるように思えます。しかしそれは死に近づいているようで素直に祝福できない複雑な感情に襲われます。

ビートは、ビートメーカー / DJのYackleだけでなく、音楽プロデューサー・蔦谷好位置による変名プロジェクト・KERENMIも参加していることで、暗くなりすぎない絶妙なバランス保っていることも注目です。

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AKLO / LOSER(Prod. BACHLOGIC)

2021/11/26 公開


AKLO、久々のシングルとなる「LOSER」は敗北者に捧げた曲。
今、ヘッズの間で話題の番組AbemaTV『ラップスタア誕生』の新シリーズの審査員を務めていて思うことがあって曲にしたという。

「敗北ってやつは苦すぎる味  お前らのせいさ
 神様にでもなった気分かよ 人を評価 随分と偉いご身分やのぉ」

かつての自分が審査員に対して向けた感情が、審査する側になったことで感情を向けられる立場になったことを示している。それは自分みたいな者が審査していいのかという戒めがあります。と同時に批判されるのは承知の上でシーンのことを考え、覚悟を決めて審査していることが分かります。

審査から落とされたかつての自分と重ね合わせ、自分に落とされることになる若手ラッパーの気持ちがわかるからこそ、語りかける口調で送るエールは優しい。


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終わりに

最後までお付き合いありがとうございます。「そうそう、こんな曲が聴きたかったんよ」なんて人がいたら嬉しいです。高評価とフォローもお願いします。皆さんのアクションが支えになりますので…(これ本当)

また、こんな曲もあるよって皆さんのオススメMVも教えて下さい。かならずチェックしますので。

では次の記事でお会いしましょう!またね。

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ドラム師匠@ヒップホップライター
HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。