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【Kvi Baba】 EP『Toge ni Bara』 には寂しさと共鳴する歌がある

寂しくて、どうしようもない日
ってありますよね。

そんな時は、このEP『Toge ni Bara』を聴いてみて下さい。

ここには寂しさと共鳴する歌があり、
自身の醜さをさらけ出すことで、
もがき、苦しみながらも、
かすかな光を見いだすことができるはずです。



Kvi Baba(クヴィ ババ)は、1999年生まれで大阪・茨木出身のラッパー。Red Bullがキュレートする人気マイクリレー企画・RASENへの参加したり、人気ラッパー ZORN の日本武道館ライブで、AK-69、KREVA、般若、ILL-BOSSTINOといった大御所ラッパーと共に客演参加するなど注目を集めています。

すでに4枚EPと1枚のアルバムを発表しており、2nd EP『19』以降、全ての楽曲をプロデュースしているのがBACHLOGICです。4th EP『LOVE or PEACE or BOTH』発売を期に、BACHLOGICが主宰するレーベル・O.Y.W.M. に活動拠点に移しています 。

これは互いの持つメロディセンスをさらに深めようという意思の表れでしょう。今回紹介する5th EP『Toge ni Bara』でも彼が全曲プロデュースしているのは言うまでもありません。

Kvi Babaは、デビューしてから人間関係で悩み、レーベルも抜け、身体もメンタルもボロボロになってどん底を経験します。楽曲「Life is Short」では、自殺しようとビルの屋上で立ち尽くしたエピソードがつづられています。

ネガティブな感情と、そこから這い上がろうとするポジティブさ。その全部をありのままをリリックにしているので、歌が心に響きます。

サウンドは、XXXTentaxionやLil Pumpに代表されるエモトラップ〜クラウドラップから影響が感じられます。HIP HOPの垣根を越えてロックファンにも受け入れられる口ずさめるメロディとダイナミックさがあります。

6曲入りの5th EP『Toge ni Bara』から、MVがすでに4曲公開されているので、これから一曲ずつ紐解いて行きましょう。

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|Too Bad Day But...|

(EP『Toge ni Bara』1曲目に収録)

幸せと不幸せの比率は何%?

いつも幸せでいたいけど、辛いことや耐える事が多くて、幸せを感じられるのはほんの一時というのが現実ではないでしょうか?

常に数字という結果と向き合っているアーティストなら余計にそう思うでしょうね。Kvi Babaはこう歌ってます。

「9割が悪い事なんだって
 けど1割は良い事あるんだって」

さすがに悪い事が9割はネガティブすぎる…
なんて思いますが、残りの1割を大切にしていくと歌ってて、いい意味での裏切りと潔さがあります。

また悪い事のエピソードが、マンガっぽくて可愛らしいですね。都会的なアーバンサウンドに合わせた韻が心地いい仕上がりとなっています。

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|Fool in the Moon|

(EP『Toge ni Bara』4曲目に収録)

嫌なことを忘れるためのダンス

切なさをダンスで紛らわせられるのは、一時しのぎに過ぎない。そんなことは百も承知で、それでも踊らざるをえないやり切れなさが描かれた曲です。

UK a.k.a AMP Killer によるギターと、太めの縦ノリなドラムが、'80〜'90年代のオルタネイティブ・ロックっぽい疾走感があります。その疾走感が増せば増すほど、余計に切なくなって胸が締めつけられます。

最後に「yeah」とはり上げた歌声が、夜の街中に響き渡りそうです。

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|ヤワじゃない|

(EP『Toge ni Bara』5曲目に収録)

マッチョではないけれど…

「ヤワじゃない」というタイトルからして力強い歌なのかと思いきや、冒頭で「僕は 僕は 僕は 一言で言えばタフではない」と歌っていて肩透かしをくらいます。

ですが曲が進むにつれ、その理由が明らかになってきます。推理小説のように「そういうことか」と謎が解けるリリックの構成に引き込まれます。

どこかのインフルエンサーのように、"弱者の命はどうでもいい"と切り捨てるのではなく、徹底的に寄りそった視点がいいですね。その視点は、黒人というだけで、白人から虐げられた歴史を持つマイノリティから生まれたHIP HOPらしいなと感じました。

「僕はタフじゃない だけどヤワじゃない」

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|Tear Wave |

(EP『Toge ni Bara』6曲目に収録)

ロックファンもうならせる

ギターがリードするトラックは、途中でタムが効果的に鳴らされるなどONE OK ROCKのようなアグレッシブかつダイナミックなサウンドに仕上がっています。

汚れた手で涙を掻き分けて
醜さを含めても風とゆけ
誰の為でもない独り言も
誰かの孤独を埋めるのなら
Singin‘ My Heart 嘘はないもう
Singin’ My Heart 醜さも一つの
美しさへと変わりゆく
ここで君といれるなら

強さと弱さ、美しさと醜さ
自分の中に抱えた矛盾すらも受け止めて歌にする。
個人の思いはいつしか、他人を思いやる気持ちに変わっていく。

茶色くなったサナギから、蝶となり、美しいハネを広げて羽ばたくように、ネガティブな感情がドラマチックに昇華されていきます。

この曲でEP『Toge ni Bara』が締められており、そこには希望が提示されています。

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Kvi Babaが立つべきステージ

Kvi Babaの楽曲はスケール感があり、大観衆の前で鳴らされるべきだと思います。実は5/29(土)に野外フェス・KOBE MELLOW CRUISE 2021への出演が決まっていたの、フェス自体が緊急事態宣言の影響で中止になってしまいました。私はチケットを取って行く気満々だったのに、残念で仕方ありませんでした。

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これらの曲が巨大スピーカーからどのように鳴り響くのか。ヘッズはもちろんのこと、普段HIP HOPを聴かない音楽ファンにどのように受け止められるのか想像するだけで楽しみです。

その時は必ず訪れるはずなので、一緒の空間で体験できるといいですね。それまでEP『Toge ni Bara』を聴いて備えましょう。

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5th EP『Toge ni Bara』

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1. Too Bad Day But...
2. Toge ni Bara
3. After Effect feat. SALU
4. Fool in the Moon
5. ヤワじゃない
6. Tear Wave


▼配信リンク


▼4th EP『LOVE or PEACE or BOTH』に収録された2曲を紹介した記事


HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。