【HIPHOP 年末 座談会】2022年にクラった曲
Twitterで、HIPHOPのレビューを書き続けて5年目に突入したドラム師匠です。今回は、Twitter・InstagramでHIPHOPを紹介している PAPA-KIMG さんとの座談会をお届けします。
お互いに「2022年にクラった曲 ベスト25」のプレイリストを作りました。その中からそれぞれ3曲ずつ紹介していきます。
▼PAPA-KIMGのプレイリスト
▼ドラム師匠のプレイリスト
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PAPA-KIMGがクラった曲①
World Jack & Bloods / Believe in your dream
PAPA-KIMG:それでは私が最初に紹介するのは、G-HEZZの二枚看板World JackとBloodsのマイクリレーです。G-HEZZは岸和田と久米田という地域のクルーで、若いのに激渋なラップをしています。
ドラム師匠:2022年も岸和田周辺は熱かったですね。ちゃんと町のカラーが音に反映されているというか、この音は南大阪かなと思ったら、やっぱりそうだったということが多いです。
PAPA-KIMG:何なんでしょう。岸和田って分かりますよね。岸和田スタイルって語尾が巻き舌になってハネるんですよね。
ドラム師匠:あとリズムが早くなくて、これはレゲエの流れなんでしょうね。
PAPA-KIMG:レゲエの要素があるから、ちゃんとリズムに乗せて一語一語きかせるというか、噛み締めるようにラップしています。それが岸和田っぽいです。とか語ってますけど、岸和田に行ったことないんですけどね(笑)
ドラム師匠:ははは。たぶん行ったら、この商店街のこの通りMVで見たことあるってなりますよ。
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ドラム師匠がクラった曲①
Watson / NEW REAL feat. Young zetton (Prod. Homunculu$)
ドラム師匠:2022年にブレイクしたアーティストだと思い、選んだのは徳島出身のラッパー Watson です。
PAPA-KIMG:Watson、確かにキテますよね。
ドラム師匠:私は、楽曲「break bad」のMVで知りました。PAPA-KIMGさんは、ずいぶん前からWatsonを注目してましたよね?
PAPA-KIMG:Watsonが出始めの頃、Twitterで紹介してるんですよ。その曲は消されてしまってて、今となっては幻なんですけど。当時からクセになる声でした。でも、もう少し柔らかいラップをしてたかな…
ドラム師匠:へー、徐々に今のパキパキしたスタイルになってきたんですね。偶然、この曲に「ラップを始めたばっか最初 その頃に書いてた歌詞 恥ずかしいから絶対内緒」ってリリックがあります。
PAPA-KIMG:本人が聴かせられないって消去したんでしょうね。
ドラム師匠:Watsonの何がスゴいって、日々思っていることをカッコつけずにありのままリリックにしてて、日記を読んでいる感覚なんですよ。
PAPA-KIMG:友達の名前とかも普通に出てきますもんね。
ドラム師匠:そうなんです。母親の名前も出てきます。
PAPA-KIMG:けっこう名前を憶えてしまうという(笑) 曲が出るたびに、今回はあの人は登場しないのとか考えてしまいます。面白いですよね。
ドラム師匠:あと、おっぱいもよく出てくる(笑)
PAPA-KIMG:そうそう(笑)けっこう露骨な下ネタを出すんだけど、曲になると聴けてしまうという。これってなんなんでしょう?
ドラム師匠:確かにイヤらしくないですよね。カラっとしたラップスタイルだからいいんでしょうね。
PAPA-KIMG:あれで甘ったるく歌われると気持ちワルってなりますよね。
ドラム師匠:「あとホンマのこと言う 前財布パチモン ナイキのジャージGUCCIバック借り物」とそこまで言っちゃう?ってぐらいの正直さもいいですね。
いまは"お金がない"っていうリリックが多いんですけど、お金が入るようになったら生活がどう変わったとか、女性がどうとかありのままに語ってくれるじゃないかと期待しています。
PAPA-KIMG:彼はもっといきそうですね。
ドラム師匠:間違いないです。あと徳島は、T-STONE がアルバムが1stアルバムをリリースしたり、Ring-toっていう若手も台頭してて、2022年のホットスポットでした。
PAPA-KIMG:地方が盛り上がるのはいいですよね。では次、私が紹介します。
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PAPA-KIMGがクラった曲②
CHB / MY WAY(Prod. G.a.k.k.i.)
ドラム師匠:PAPA-KIMGさんがどんな曲が好きとか大体分かるようになりましたが、この曲を選んだのは意外です!
PAPA-KIMG:超フレッシュな感じと、「温泉 つかりに行こうぜ ラーメン食う時 真剣」というドストレートがリリックがいいなって思って。
CHB は、2000年生まれで福岡県田川出身のラッパーです。ドラクエが好きなのか分からないですけど、PULPUNTEっていうクルーのメンバーです。HOOKが良くないですか?
ドラム師匠:確かに、一度聴いたら耳に残るHOOKです。
PAPA-KIMG:今年は、なんだかんだこの曲を聴いてましたね。再生回数の100回ぐらいは僕が再生してました(笑) 一般的な認知はまだこれからなんですけど、だからそこ僕が紹介するのが使命だと思って選びました。
ドラム師匠:声が高めで若々しいので、エグい内容のリリックも聴いてみたいですね。あと年齢を重ねるごとに声が落ち着いてくるので、その変化も見てみたいです。個人的にはクルーの楽曲が好みです。
PAPA-KIMG:伸び代ありますよね。PULPUNTEもまだ一曲しかMVをアップしてないので、これからもっとリリースして欲しいいです。注目しています!
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ドラム師匠がクラった曲②
DJ Mitsu the Beats / Deadly Combo with 仙人掌
ドラム師匠:2022年、リリックでクラったのがこの仙人掌でした。HIPHOPにずっと魂を捧げてた人の言葉はやっぱり重たくて、ズシンと心に響きました。
PAPA-KIMG:なるほど。
ドラム師匠:例えばこの曲の、「あっという間にキックとスネアの言いなり」「ライムがタイトだから浴びる光」なんて言うフレーズは、生活の中心に常にHIPHOPがあって、そんな生活を何年も続けているから出てくる言葉だと思います。あと声の渋みも増してきて、いい感じで油が乗っていると思いました。
PAPA-KIMG:確かに仙人掌は、一言で刺さるワードの破壊力がスゴいですよね。ビートメーカーKapsoulとの楽曲「GaryPayton」での「Dope MCはHoodに根ざす」ってフレーズがグッときました。
ドラム師匠:ロサンゼルスでこれを言ってるってところが余計にいいですよねす。あと、hokutoの楽曲「Imposter」で唾奇と共演していたり、STUTSの楽曲に参加したりとアンダーグランドな活動だけにとどまっていなかったのも嬉しかったです。
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PAPA-KIMGがクラった曲③
TECH NINE x mosaic404 / HIP HOP PRESIDENT
PAPA-KIMG:もう俺はこういう曲はスルーできないんで選びました。
ドラム師匠:イントロを聴いただけで、いい曲って分かります。
PAPA-KIMG:ここからビートが入ると、イキきっちゃいますからね。もう、映像・ビート・ラップ、あとファッションとか小物とかレコードとかもう全部がツボですね。
ドラム師匠:あとカセットでリリースっていうね。
PAPA-KIMG:そう、そう。当時ショックウェーヴ(※1)を握りしめて登校していた僕からしたら、それもツボなんです。
ドラム師匠:タイトルが「HIP HOP PRESIDENT」で、自分たちの好きなHIPHOPはこれですよと宣言してますもんね。
PAPA-KIMG:TECH NINEっていうラッパーも面白くて、石垣出身なんですけど今は京都在住なんですよね。スケーターでもあるから、滑ってるシーンもあって、本当にこの人の好きなものがこのMVに濃縮されている感じです。
ドラム師匠:PAPA-KIMGさんは、どこからHIPHOPに入ったんですか?
PAPA-KIMG:LL COOL Jの『Mr Smith』っていうアルバムですね。中一ぐらいかな、その時に個人で経営しているCD屋さんでジャケ買いしました。それで、家にあるCDラジカセを自分の部屋に持ち込んで聴いていました。
USのHIPHOPから入って、メロコアといったスケーターシーンを通過して、キングギドラ、ラッパ我リヤ、シャカゾンビといった さんピンCAMP 世代の日本語ラップを聴くようになりました。
で、もう一度波がきたのが2000年代の SCARS とかSEEDAが主宰する『CONCRETE GREEN』シリーズでガツンとハマって今に至ります。
ドラム師匠:この曲は、80s〜90sのHIPHOPの空気が収められているので、その頃にHIPHOPにハマり、今だにシーンを追いかけている人にはたまらんでしょうね。
PAPA-KIMG:あと、mosaic404 は、宮古島のビートメーカーで、有名な曲だと「CHOUJI / 奮闘中」のビートを作っている人です。僕の大好きな曲の元ネタをサンプリングしている曲が多いです。名曲「NORIKIYO Feat. BES (I-DeA) / 2Face」の元ネタを使った曲も好きです。
ドラム師匠:では、この流れで最後に私が紹介します。
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ドラム師匠がクラった曲③
TWIGY / RAPATTACK(Prod. dj honda)
ドラム師匠:このMVが出る前、子供がブレイクダンスしている映像のバックでこの曲が流れていたんです。声が若々しいし、TWIGYの昔の曲かな?でも今っぽさもあるしな?なんて思ってたら、ニューアルバムのアナウンスと共に、このMVがアップされててブチ上がりました。
PAPA-KIMG:しかもビートが dj hondaって!dj hondaは2022年、働きすぎじゃないですか?SIMON JAPともダブルネイムアルバムをリリースしてましたし、それ以外にもすごい量を出しています。何曲出しているんだろう?
ドラム師匠:確かにコンスタントに目にしました。この曲では、やんちゃなTWIGYが帰ってきたって感じで嬉しかったです。
PAPA-KIMG:最近はこんなトゲトゲしいスタイルではなかったですよね。
ドラム師匠:そうですね。JAZZYで大人のHIPHOPって感じでした。見た目は仙人みたいになってますけど、まだこんなラップができるんですね。
私もPAPA-KIMGさんと同じで、さんピンCAMPから日本語ラップに入った世代です。でも、その世代のアーティストの復活にテンションが上がるかというとそうでもありません。
PAPA-KIMG:分かります。キングギドラの復活は上がりましたけど、熱心に聴くかと言われるとそうでもないかな。
ドラム師匠:ですよね。ラップって筋肉だと思っていて、現役から遠のくとどうしても筋力が落ちるというか、モタついて聴こえてしまいます。そんな中、TWIGYは別格で、今だに型破りなところが好きです。
PAPA-KIMG:昔から天才器質ですよね。
ドラム師匠:だから昔から色々なプロジェクトを立ち上げて、認知される頃には次のプロジェクトが始まっててリスナーは煙に巻かれるという。晋平太との対談動画で、そこら辺の話をしています。さんピンCAMPのコンピCDに参加したのに、イベントにはなぜ出演しなかったか不思議だったんです。25年前の答え合わせができました。
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終わりに
ドラム師匠:今回、お互いのプレイリストを見比べると、共にリストアップしてたのがcarefreemanがプロデュースした「Not In Sight」、「ONENESS / DROP DOWN STREET」「M.A(BONG BROS) / The Devil Gives… feat. STINKY SCIZA」の3曲ありました。
PAPA-KIMG:carefreeman も2022年良かったですね。SNSがすべて消去されていたのですが、どうもInstagramが一時バンされていたみたいで、今は復活しています。
ドラム師匠:ビートアルバム「Loosey」がリリースされましたし、2023年も活躍が楽しみですね。
PAPA-KIMG:ONENESSはMCが1人加わって3人体制になりました。ここ最近コンスタントにMVをアップしてます。カッコいいBoomBapスタイルでいいですよね。僕は大好きです。
ドラム師匠:聴き心地が最高ですよね。BONG BROSのM.Aさんの楽曲も面白かったです。ダークさが最高なんですけど、雅楽の管楽器・篳篥(ひちりき)が入ることでちょっと上品になっているという。
PAPA-KIMG:そうだBONG BROSって京都なんですよね。いいですよね〜。
ドラム師匠:そんな感じでプレイリストに入ってる曲はどれも強烈な個性と色気のあるものばかりなのでチェックして下さい。
PAPA-KIMG:2人の対談は、2022年に4月・9月・12月と年3回やりましたが、秋〜冬にかけてリリースされたものが総括したりない感じです。2023年は対談の頻度を上げていきましょう。
ドラム師匠:そうしましょう!では最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
PAPA-KIMG:ありがとうございました。