医療過誤の第2の犠牲者
医療過誤の第1の犠牲者はもちろん患者です。患者家族もその犠牲者と言えますが、ここでいう第2の犠牲者は、医療従事者です。
被害にあわれた方にとっては、加害者に当たる医療従事者の何が犠牲者だと思われるのも当然だと思いますが、医療過誤のほとんどは意図して起こったものではありません。
意図して起こっていれば、それこそ大問題ですが、意図しないからこそ原因となった医療従事者も大きなショックを受けます。
医療過誤は決して許されることではありません。医療過誤のために社会的刑罰を受け、精神的ショックを受ける。そこまでは当然というかある種仕方ないです。ですが、そのことが原因で医療従事者が医療の現場を去っていくのは、社会的損失です。本来そのことを糧により安全で質の高い医療が提供できるようにすることが、医療安全管理の責務であり、また個人にとっても一種の贖罪になるとも考えています。
しかし、実際の現場ではそうはならないことが多いため、医療過誤を原因に当事者が医療の現場を去ることも多いのです。
なぜそうならないかというと、学問として成り立ってからの歴史が浅いこともあり、医療安全に関する理解が医療業界で広まっておらず、根付いてもいないことが大きな原因と考えています。
医療過誤は、人が起こしたミスやエラーが原因である。というのは事実ではありますが、正しくはありません。
医療過誤をはじめとする様々な事故やエラーは、システムエラーが原因にあり、そのシステムエラーによってもたらされる結果がアクシデントして顕在化した場合を医療現場では医療過誤と呼びます。
システムというと機械的なことを想像されるかと思いますが、その限りではありません。
医療従事者は病院というシステムの中で動いているシステムの一つです。医療設備や職場・作業環境、整備されているマニュアルなどもシステムの一つです。ヒューマンエラーは、システムエラーの一つの因子でしかないのです。
ですが、医療業界では長らくヒューマンエラーは個人の怠慢や知識・技術不足によるものと言われてきました。残念ながら今でもそのような風潮があります。
もちろん医療過誤の中には、当事者の知識や技術不足に起因することもありますが、それを個人の責任にしてしまっては、同じことを繰り返す可能性をそのまま残すことになります。
知識や技術に不足があったのなら、知識や技術を身につける機会は十分にあったのか、マニュアルは整備されているのか、知識や技術不足のままその業務や処置に当たることを許容する、もしくはやらざるを得ない環境があるのかなど、考慮すべきことはたくさんあるはずで、そういった一つ一つの要因に丁寧に根気強くアプローチしていくことが、医療の安全性を高めていくことに繋がるのです。
『To err is human』
日本では医療安全元年とも言われる1999年に米国Institute of Medicine(IOM)が発表したレポートの主題にもある通り、人は誰でも間違えるのです。その間違いが致命的なエラーに繋がらないようにすることが医療に携わるものの責務です。
当事者を必要以上に責めることも、医療現場から追い立ててしまうことも、逃げ出すことも
どれも責任の取り方として間違っています。
犠牲となる人を1人でも減らすためには、医療技術の発展はもちろんですが、医療安全も欠くことのできない大切なピースの1つなのです。
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