引き算で減らすという考え方
こんにちは。
自動車ライター/インストラクター/ジャーナリスト/ドラマーの齊藤優太です。
引き算をして減らすという考え方を持っておくのは大切なことです。
そこで、さまざまな問題に発展している「電動キックボード」を例に挙げ、ルール作りにおける引き算の考え方を考察していきます。
免許不要で乗れる電動キックボードの問題点
「免許不要」「ヘルメットは努力義務」で話題となった電動キックボード。
電動キックボードは「車両」の1つであり、「特定小型原動機付自転車」の名に含まれている文字のとおり原動機付自転車の1つです。
そのため、ルールや条件がいくつも存在します。
もちろん、条件を満たしている人が、条件を満たした車両に乗り、法令遵守していれば、何ら問題ありません。
しかし、実際の交通社会では、電動キックボードに関する問題がいくつも発生しています。
では、その問題とは何なのか?
まず、ニュースにもなった問題をいくつかピックアップして見ていきましょう。
FNN:電動キックボード逆走
ANN:電動キックボード飲酒運転
CBC:電動キックボード操作ミス
法改正から3ヶ月以上経過しても事故やトラブルは減っていない
2023年(令和5年)7月1日に施行された道路交通法改正により、電動キックボードの区分は「特定小型原動機付自転車」となり、免許不要&ヘルメット着用努力義務となりました。
(その他にもルールがいくつもあるため、政府広報オンラインや各都道府県警察のホームページなどで確認してください)
法改正されてから3ヶ月以上が経過し、ルールが広く知られるようになっているのかと思いきや、2023年10月末~11月はじめ頃になっても、無理無謀運転、飲酒運転、運転装置の誤操作による事故が発生しています。
ルールを周知させても混乱させる可能性が高いルール
電動キックボードのトラブルや事故を減らすためには、ルールを周知させることも大切です。
しかし、電動キックボードに関するルールは、細かく複雑で難解です。
例えば、走行する場所によって最高速度が変わったり、基準を満たしていない車両は原付と同じ扱いになったりするなど、正しく理解しなければ違反になることが数多く存在します。
このようことは「知らない」で済まされることではありません。
実際に電動キックボードを利用する人の中に、細かなルールや条件などを正しく明確に理解している人は何人いるのでしょうか。
細かなルールを定めるのも良いですが、ルールの中に追加ルールを作りすぎてしまうと、利用者を混乱させてしまう可能性が高くなるのではないでしょうか。
ルールを減らすという決断も必要
大枠のルールを定め、そこに追加ルールを加え、さらに特定の条件を付け、その特定条件の中に規定やルールを作るとどうなるのか…。
それは、「ルールが複雑すぎて何が何だかわからない」という混乱状態になるでしょう。
電動キックボードは、まさに道路交通法という大枠のルールの中に作られた追加ルールです。また、追加された電動キックボードのルールの中に条件や基準があり、これらの条件・基準を満たしていなければ、大枠の道路交通法というルールに則って罰則を受ける乗り物となっています。
つまり、電動キックボードのルールは、わかりづらいということです。
であれば、ルールを減らしてみるのもよいのではないでしょうか?
共通学科試験による免許交付
私が考えるのは、かつて二輪と四輪の学科教習がバラバラだったのを1つにまとめたように、全ての乗り物に共通する学科講習の義務付けです。
また、講習を受けるだけでなく、学科試験を受け、合格ラインに到達していなければ、車両に乗ることができないという関門(試験)を設けることも必要だと考えています。
共通学科試験に合格した場合は免許を交付し、公的な身分証明書として使えるようにしておけば、あらゆる場面で役立つでしょう。
さらに、この共通学科講習は何歳からでも受けられる試験にしておき、自転車やキックボードなど、車両に乗るときの条件として付しておくことも必要だと考えています。
学校の交通安全教育を共通学科講習と位置づけ免許を交付する
学校教育では、自転車の危険性や信号を守るなど、交通安全教室が実施されているところがほとんどです。
この学校の交通安全教育を共通学科講習と位置付け、その年代に合った試験を受けてもらい、公的な免許証を交付すれば、交通社会の一員である自覚と責任を持つことができるのではないでしょうか。
そして、電動キックボードが乗れる年齢=16歳(高校1年)で、電動キックボードを乗ろうとした場合、技能の講習(基本操作とルールに従った運転の基礎)と共に、再度学科試験を行い、技能講習の受講証明と共通学科試験合格証明書がなければ免許の更新がでないという方式が望ましいと考えています。
つまり、共通学科試験の合格に伴う免許を保有していなければ、自転車・電動キックボード・原付・二輪車・四輪など、あらゆる車両に乗ることができないというルールに変更するということです。
最初は厳しいが後が楽という考え方
私が考える共通学科講習および学科試験は、信号、標識・標示などの基礎的なルールだけでなく、交通社会における歩行者の立場、自転車の立場、二輪車の立場、四輪車の立場、バスやトラックの立場、大型車両の立場、けん引車の立場など、あらゆる立場における危険予測の2本柱が理想的だと考えています。
なぜなら、年齢に関係なく、大型車やけん引車のことまで理解しておくことで、道路や交差点など、どの場面でどこにいれば自分の身を守れるのかということをより深く理解できるからです。
それぞれの立場がわかれば、なぜ危険なのか、今どのような行動をすれば安全かなど、危険を予測して次のアクションを起こせます。
この危険予測は、小さい頃から学んでおいて損はないことです。また、互いに危険予測ができれば、大事故を回避できる確率が高まるでしょう。
基本的なルールは同じ
歩行者・自転車・電動キックボード・原付・自動車・自動二輪車・大型車・けん引車など、交通社会における基本的なルールは、どの立場でも同じです。
であれば、基本的なルールは早い段階で学んでおいた方がよいでしょう。
早い段階で基本ルールを習得しておけば、自分の身を守ることに繋がるだけでなく、相手の命を守る行動ができるようになるのではないでしょうか。
電動キックボードから見えるルール追加の弊害
電動キックボードによる交通の危険や事故は、時間が経過しても減ることはないでしょう。
なぜなら、ルールが複雑すぎるために、正確に理解するのに時間がかかるからです。
このような複雑で難解なルールになってしまったのは、ルールの中にルールを追加したり、ルールの変更や例外事項を増やしたりしてしまったからなのではないでしょうか。
さまざまな乗り物やシェアリングが普及しているからこそ、ルールをより簡素に理解しやすくする抜本的な改革が必要なのではないでしょうか。