ココロラジオ
みなさんこんばんは。ココロラジオのお時間です。
とはいっても第1回目の放送なので、急に番組名を言われてもピンと来ませんよね。番組名はココロラジオです。しかしそれ以外は何も決まっていません。とりあえず今から自分が長い間1人しゃべりをします。かといって1人で1時間話し続けられるほどの話術はありません。ですから、メール送ってください。メールを送ってくださればそれを元になんとかお話を膨らませて1時間埋めていきたいと思います。
えー。そういえば自己紹介をしておりませんでした。
私の名前は親指ちゃんです。え?なんでそんな名前かって?
これは私についたはじめてのニックネームでかなりお気に入りなんです。
クラスで1人か2人はずっと自分の指を噛んでる子いたでしょ?
まさに自分がそうでした。ずっと自分の親指に歯形をつけていると、ある日の朝、急に「親指ちゃんおはよう!」と隣の席の子言われました。
「親指に辛子塗るぞ!」と毎日両親から脅されていた自分にとって、とてもうれしい出来事でした。親指に辛子を塗らなくても、自分の癖が直らなくても”親指ちゃん”としてならこの場にいていいんだということがうれしかったのです。だから家に帰ったとき両親に「親指ちゃんただいま!」と言いました。でも自分が高校生ではじめてできた彼女とデートに行ったときに
「それやめて。」
と言われました。
私は歯形で一杯になった親指を自分のポケットにしまいました。
私はそのとき”親指ちゃん”であることを辞めてしまいました。
でも今こうして好きなラジオをやらせてもらっている。
だから親指ちゃんに戻ろうと思います。
親指ちゃんのままで私はリスナーさんと触れ合いたいと思います。
さて、自己紹介はこのへんにして早速、お話をしていきます。
ラジオで何を話したら良いか全く検討がつかず、この番組の放送作家に相談すると親指ちゃんが悔しかったり、惨めだったりする話をしたら面白いと思うよ。という回答が返ってきました。
悔しかったり、惨めだったりする話はなかなか友人にも話せないタイプの私は、この話をするの嫌だなーって思う話がいくつもあります。
でもせっかくのラジオですからリスナーの皆さんだけにはお伝えしたいと思います。
これは私が大学生のときに、はじめて好きな子に告白してこっぴどく振られた話です。私の好きな小説家に原田マハさんという人がいます。その小説家はよく、情けない感情を描写するときに
”まるで好きな女の子に告白して、○○とは友達で居たいと言われた男の子のように”
という表現をします。自分はフィクションでなく、残酷な現実としてその言葉の雨が降りしきる世界を生きていかなければならないのでした。
恥ずかしながら、自分は大学生になるまで人生の一大イベントである告白をしてこなかったのです。運良く告白されることがあってものんきな私はその重大性に気付きませんでした。
いざその子に告白して、その子が大変驚いて顔を赤らめているとき、告白の重大性を知ったのです。もう結果は言わなくてもいいですよね。あはは。
その日はさすがの暢気な親指ちゃんもね。ショックすぎて夜八時に布団に入りました。あはは。もちろん寝れるはずもなく、夜中に公園のベンチに座りに行きました。
自分が情けなくて苦しくて頭を抱えてうなだれていると
「大丈夫ですか?」
と声が聞こえました。
感情的になっていた私は
「うるせー!ほっとけよ!」
と吐き捨てました。
でもね。。。顔を上げてびっくり。なんと目の前には怖そうな警官が二人居ました。
午前3時の駐在所で父親ほどの年齢の警官に自分の失恋の話をしました。
その鈴木という警官は、私の話をうんうんとうなずきながら聞いた後、私に向けてこう言いました。
「これからも好きな子にたくさん告白して振られてしまえ!あはは。」
今となっては、その言葉の意味がよく分かります。
その子はずっと私にとっての、はじめての告白の相手で、その告白という時間を共有した特別な人なんです。
だから好きな人を自分にとって特別な人にできてよかったなんて思うんです。ずっとずっと特別な人なんです。
だから、今となっては自分も同じ台詞を言うことができます。
「振られてしまえ!」ってね。
え?そんな偉そうな口を叩くなら、またその子に告白してこいって?
あははは。また会えたらね。
それではここで一曲。MONGOL800であなたに。
よく友人とカラオケに行くたび
「お前ってうまいけど全く歌に感情こもってないよね。」
と言われてきました。
みんなの流行に合わせてラブソングばかり歌っていたのですが、、、、、
歌詞の意味を理解しないで適当に歌っているのがばれてしまったのです。
もちろん自分の中にも恋はありました。でもどのラブソングも共感するにはあまりにもファンタジー色が濃すぎる気がしてなりませんでした。
先ほど聞いていただいたMONGOL800のあなたには、そんな私に最も寄り添ってくれる曲でした。
気の強い女の友人から
「その人と付き合って、何をしたいかについて具体的なプランをつくってから恋愛しろ!」
と言われたことがあります。
全く、女の子って手厳しいなー。これじゃしばらく恋愛できそうにないなー。と思ったのを覚えています。
自分にとって好きとは、”その子に会いたい気持ち”でしかなかったからです。
完璧なデートプランも完璧なデートでの振る舞いも自分には一切ありません。見るに堪えないほど、下手くそで、全てが不器用です。
後から女子会で馬鹿にされるに違いありません。
それでも君に会いたい。
その後の予定なんかどうでもよくて。
とにかく君に会いに行きたくて。
それができないと苦しくてたまらない。
それが私にとっての好き。
あはははは!こんなこと言ってしまったら自分がもてない男だと大勢の人に演説しているようなものですね。
さてさて。もう話すこともなくなって来たので、リスナーの皆さんから届いたメールを紹介します。
ラジオネーム プリンアラモード
親指ちゃんの素敵なお話で寝れない夜も退屈しません!
今後の放送のコーナーに関してのご提案なのですが、リスナーの皆さんの恋愛相談に親指ちゃんが乗るというコーナーはどうでしょうか?
きっとみんなもここでしか話せない話あると思いますよ。
プリンアラモードさん。メールありがとう。
即採用したいぐらいの良いコーナーですね。
そういえば、みんなにお伝えしなければならないことがありました。
実はこの番組、今日が初回であり、今日が最終回でもあります。
更に、衝撃の事実を言うと、実は親指ちゃん。つまり私はもうこの世にいない人間です。今日のニュースにも載ったアパートで首を吊って自殺した20代の男です。自殺した原因なんてものはありません。考え事に疲れて、考え事をもうしないように死を選んだだけです。
死んで無になるはずが、そううまくはいきませんでした。
数年前に亡くなった、祖母が自分の前に訪れて
「あなたがあまりにもかわいそうだから1日だけ好きなことさせてあげる。」
と言いました。
気付くと私はラジオブースにいて、放送作家と今日の放送の打ち合わせをしました。
Radikoの番組表では、放送中止の時間のはずなのにこうやって機器越しに若い男の声が聞こえることぐらいしか証拠は提示できませんがね。
自分の心に溜めていたことを誰かに話せたこと。
それに対して誰から反応してくれること。
今日、読めたメールは一通だけでしたが、たくさんのメールをいただきました。ありがとう。
今更ですが、自分の人生って意外と悪くなかったかもな。って思えました。
今、みるみる自分の体が空気に溶けていっています。
あはは。本当にいじわるですよね。
自分の全てに嫌気がさしたまま無になりたかった。
本当に最後までうまくいかない人生でした。
いつか生まれ変わったら、また親指ちゃんとしてラジオをします。
それまで、皆さんどうか生きて。生きて。お会いしましょう。