事実婚だった友人が突然入籍した理由
僕の友人のちょっと先輩で、もうすでに50歳を超えている女性の事務員さんがいまして、彼女のことを僕は若い頃から知ってるんですけど、同棲している相手がいて、事実婚状態ですね。彼女よりちょっと年上の方なんですよね。
その彼女が突然、50歳を超えて籍を入れて、名前が変わりました。正直、驚きましたね。ずっと事実婚で行くのかなと思ってたんですが、たまたま年賀状で名字が変わったことを知ったんです。
次の機会に会った時に、「どうして結婚したの?」って聞いたら、なんと彼女のパートナーが入院した時に非常に困ったそうなのです。
事実婚である、内縁であると病院に説明しても納得してくれなくて、結局ご兄弟に手術の説明を聞くのを頼まざるを得なかったとのこと。
そういった経験があってから、これはこの先困るなと思って籍を入れたと言っていました。
「なるほど」と思いましたね。
病院でも内縁の関係問題があります。
基本的に病院は本来、家族以外の方には病状の説明ができないようにしているんですけど、内縁の妻であると言われてしまうと認めざるを得ないというか、認めないと手術ができないという緊急性があったりして、ある程度認めています。
患者本人が内縁であると言ってくれればいいんです。ですが、実は僕の病院でもこんな事件がありました。
ある患者さんが救急搬送されてきて、半身不随になっていたんですね。診断は脳梗塞だったんですけど、一緒に来ていた女性をその患者さん曰く、内縁の妻であると言ったので、その患者さんの病状をその方に説明しました。
奥様であるということで、患者さんの了解を得た上でお財布や貴重品などを預けたわけです。
その後が問題なんですけど、その3日後からその内縁の奥様が電話に出られなくなり、行方不明になってしまいました。
患者さんの家の合鍵も持っていたので、家にいるのかなと思って、しょうがないのでソーシャルワーカーがわざわざ家まで見に行ったんですけど、患者さんから借りた鍵で入って中を見ると、家具が一切なく、もぬけの殻でした。
どういうことなのかと患者さんに尋ねると、なんと内縁と言っていたが3日前に初めて会ったとの事でした。
ある意味、行きずりの相手だったわけです。
その患者さんに持ち逃げされたという事実を伝えるとかなり落ち込んでいましたが、これって僕らはどうしたらよかったんでしょうか。
患者さん本人に内縁の奥様と言われてしまっていると、僕らにはどうすることもできません。
僕らが責められるとするならば、内縁の奥様と言われた相手に、患者さんに言われるままに信用して説明したり貴重品を預けてしまったことになっちゃいます。
難しいですね。訴訟になったらひょっとしたら病院側が負けるかもしれません。
そういうこともあるんですけど、僕は普段から患者さんが外来に来たときに一緒に入ってくるパートナーの方がいたら、必ず「彼氏です。彼女です」といった場合でも「内縁と言うことにしていいですか?」と尋ねています。
そうしないと診療が進まないと考えるからです。
それか、患者さんの了承を得てそのパートナーの方のフルネームを聞き、カルテに記載し、「〇〇さんの了解を得て、診療に同席していただく」と言うような旨をカルテに残すようにしています。
前述のような事件を経験するようになってくると、やっぱりこの問題は大事になってきます。
これまで内縁の奥様だから説明するというようなことができなくなっちゃうかもしれません。
それは誰にとっても不幸なことです。
やっぱり内縁状態への対応マニュアルをしっかり持つ必要があるんだと思います。実際問題、うちの病院には婚姻と同様に扱うと言うマニュアルがあるにはあるんですけど、その内縁の定義が明記されていないんですね。
前述の患者さんは三日間同棲した相手を内縁だと言い張ったわけですけど、こうされてしまうと、僕らには何もできません。
僕のその知り合いが今回結婚したというのは、そういったトラブルを避けるためにも、ある意味正しいんだなと思っています。