比較か規定か。 そして試聴と片耳・両耳問題 #051
はじめに
前号のプロショップ大塚の新社屋のスペック紹介。
ちょっと度肝を抜かれました。
あんな設備でやられたら、患者さんはみな「診療情報提供書(2018)」を貰うためだけにしか病院やクリニックには来ない。そんな状況になるんじゃないかと。
正直、そこまでやるの。
本気で耳鼻科と競争する気ですねと。
ゾッとしてしまったわけです(;゚ロ゚)
しかし、頭冷やして考えれば、
耳鼻科医が権威の名の下に時代遅れなハーフゲインを臆面もなくやっている、武士の商法さながらの補聴器外来を一蹴だにせん。これはまさしく真に正しい補聴器専門店のあるべき姿です。
耳鼻咽喉科医としてのぼくは、ひとまず同業を擁護するとかではなくあっさり白旗揚げるしかなさそうです。
実際、補聴器外来の現場にたって日々患者さんから言われることは、
「病気でもないのに(感染症の)患者もいる外来にクライアントを待たるのってそれでいいんですか。」
「高額商品の販売にもかかわらず、あのレベルのホスピタリティって、医療機関なんかあぐらかいてない?」
「そもそもあの待ち時間とか。ありえないっしょ。」
などなど。
患者さんの仰ることはごもっともです。
『そうおっしゃるのはわかりますが、補聴器は高度な医療的評価と診断なしにはきちんと合わせることはできないんです。街の補聴器屋さんレベルではそうしたことをやる設備も技術もないんですよ。』
なんて説明はもはや言えなくなってしまったわけですから。
補聴器外来に限らず、リテールショップの心構えの最優先は、
安心
安全
快適
であることは疑いようもありません。
そういったものが担保されていてはじめて、
正確な測定
的を得た処方式の提案
カスタマイズとしての調整
という作業が積み上げられていくわけです。
コロナ患者で溢れる病院や診療所で、その片手間に医師が補聴器診療を行うというのでは、患者も安心して寛いで補聴器診療を受けることは難しいんじゃないかと常々そう思っています。
患者さんの
「ぼくは患者じゃない、クライアントだ!」
という気持ちを巧みに拾い上げようとしているプロショップ大塚さんの今回の挑戦は、それが完成型となったとき、「全国制覇したければ静岡で始めよ。」というマーケティングの基本よろしく、全国レベルで展開されることでしょう。抜かりない大塚さんのことビジネルモデル特許とか仕込んで他社寄せ付けずに、プロショップ大塚の名を世に知らしめるための最初の一歩なんだろうとほんとに感心してしまってます。
さて、余談はそこそこにして、本題に戻ります。
ドクターなかがわへの質問
今回は大塚さんから以下のような質問が投げかけられました。
まとめると、
Q1: Oticon特有の騒音抑制ってどーよ。ノイズ抑制より両耳間通信による挟角度の指向性マイクの方がよかね?
Q2: 規定選択法っそもそもなによ?それだけじゃ不十分ですよ。特定の器種を選ぶための考え方もあっての規定選択であってほしいよね?
Q3: 結論、どれも比較選択じゃね?
Q4: 両耳装用か片耳装用か?本人の希望を聞いて決めるのでよいの?
Q5: 試聴ってタルいよね~。クライアントの納得のため?
決断するまでの時間?囲い込みな情動マーケティング?でもそれってコロナ感染症対策的にはどーよ。そもそも試聴聞き比べって比較選択じゃん。REMあれば試聴いらないし。
ぼくは前回の記事を読んで、大塚さんの問いはこの5つに集約されると理解しました。
そこで、今回は、これら5個の質問のひとつひとつに、なかがわ流の『答え』を展開していくことにします。それぞれの質問で完結できるようにまとめましたので、回答ごとに同じような内容がかぶるかもしれませんが、個々の項ごとに完結した読みやすさというのを優先で書き下ろしていきます。
ここから先は
¥ 990
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?