血中マイクロRNAによって13種のがんを高精度に区別することが可能に
がんは本邦の死因順位の第 1 位であり、全死亡者の25%以上です。 今、がんの早期診断技術の開発が進んできており、近い将来単一の低侵襲検査システムによって多種の悪性腫瘍を一度にスクリーニングできる「多がん早期検出(multi-cancer early detection: MCED)」(注 1)技術が実現されるかもしれません。
MCEDの検出対象物として最も有望なのは血液であり、細胞外DNA、細胞外RNA、エクソソームなど細胞外小胞、血小板中のRNAなどによる検査技術開発がされています。
血中の細胞外RNAのうち、最も量が多く含まれているものがマイクロRNA(miRNA) (注 2)です。 miRNAは細胞外小胞に包含されるなどの様式で細胞外へ分泌され、他の細胞に取り込まれることによって、細胞間コミュニケーションツールとしての役割があります。腫瘍サイズが小さい段階から、通常とは異なるmiRNAの分泌が認められることから、従来の腫瘍マーカーよりもその変化が早く血中に現れやすく、がん早期診断に適しているのではないかと考えられています
今回東京医科大学医学総合研究所 落谷孝広教授、慶應義塾大学薬学部 松﨑潤太郎准教授らを中心とした、国立がん研究センター、国立長寿医療研究センター、東レ株式会社、株式会社Preferred Networksなどの共同研究グループは、がん患者の血清中に含まれるマイクロRNAの網羅的解析データから、がんの種類を高い精度で区別できることを実証しました。
本研究成果は、2022年11月25日(米国東部時間)に米国国立癌研究所(NCI)の学術誌『JNCI Cancer Spectrum』 オンライン版に掲載されました。
この研究は体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクトとして国立がん研究センターを拠点に実施されたものです。
国立がん研究センターバイオバンク、国立長寿医療センターバイオバンク等を活用し、膵がんや卵巣がんなどを含む13種類の固形がん9,921例と非がん対照5,643例、および各種良性疾患626例の血清マイクロRNAプロファイルが解析されました。
診断予測精度の結果ですが、全ステージで0.88(95%信頼区間:0.87-0.90)、特に早期診断の意義が高いステージ0~IIに限っても精度0.90(95%信頼区間:0.88-0.91)と高い精度でした。今後新たながん検診としてMCED(Multi-cancer Early Detection)検査への期待が高まっていますが、血中マイクロRNA検査がそのひとつの戦略として有望です。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
(注 1) MCED検査:
多がん早期検出検査。血液など採取が容易な単一サンプルから複数の種類のがんを発見する手法です。がん患者の血液には、特徴的なDNAやRNA、蛋白質の断片などが含まれていることが明らかになっており、これらを網羅的にチェックすることで、その人ががんにかかっているかどうか、また、どの臓器からがんが発生したかを予測可能であると示唆されています。MCED検査が陽性であれば、診断を確定させるための画像検査など他の検査も必要になります。
(注 2)血中マイクロRNA:
ヒトの細胞に存在する22塩基長程度の小さなRNAのことで、血液や唾液、尿などの体液にも含まれます。近年の研究で、がん等の疾患にともなって患者の血液中でその種類や量が変動することが明らかになっています。さらに、こうした血液中のマイクロRNA量は、抗がん剤の感受性の変化や転移、がんの消失等の病態の変化に相関するため、新しい診断マーカーとして期待されています。
参考文献:
(タイトル)Prediction of tissue-of-origin of early-stage cancers using serum miRNomes (著者名)Juntaro Matsuzaki, Ken Kato, Kenta Oono, Naoto Tsuchiya, Kazuki Sudo, Akihiko Shimomura, Kenji Tamura, Sho Shiino, Takayuki Kinoshita, Hiroyuki Daiko, Takeyuki Wada, Hitoshi Katai, Hiroki Ochiai, Yukihide Kanemitsu, Hiroyuki Takamaru, Seiichiro Abe, Yutaka Saito, Narikazu Boku, Shunsuke Kondo, Hideki Ueno, Takuji Okusaka, Kazuaki Shimada, Yuichiro Ohe, Keisuke Asakura, Yukihiro Yoshida, Shun-ichi Watanabe, Naofumi Asano, Akira Kawai, Makoto Ohno, Yoshitaka Narita, Mitsuya Ishikawa, Tomoyasu Kato, Hiroyuki Fujimoto, Shumpei Niida, Hiromi Sakamoto, Satoko Takizawa, Takuya Akiba, Daisuke Okanohara, Kouya Shiraishi, Takashi Kohno, Fumitaka Takeshita, Hitoshi Nakagama, Nobuyuki Ota, Takahiro Ochiya, and the Project Team for Development and Diagnostic Technology for Detection of miRNA in Body Fluids
(雑誌)JNCI Cancer Spectrum
(DOI) 10.1093/jncics/pkac080
・院長プロフィール
総合内科、形成外科、美容皮膚科、美容外科。
がん診療に関しては10代の頃に母親を末期癌で亡くした経験と形成外科で癌術後の再建で患者様と日々関わることで、早期発見、予防医療の重要性を痛感し、がん検査や治療も行っている。
疾患の種類を問わず、アンチエイジングまで幅広い患者様に対応し、体の内側・外側ともに健康に綺麗にをモットーにしている。
・青山メディカルクリニックホームページ・
👉https://amclinic.tokyo
・Instagram・
👉クリニック公式 https://www.instagram.com/amclinic.tokyo
👉院長個人アカウント https://www.instagram.com/dr.matsuzawa
・Facebook・
👉クリニック公式 https://www.facebook.com/amclinic.tokyo
👉院長個人アカウント https://www.facebook.com/munenori.matsuzawa
・Twitter・
👉クリニック公式 https://twitter.com/amclinictokyo
👉院長個人アカウント https://twitter.com/drmatsuzawa
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?