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新著『腸と森の「土」を育てる〜微生物が健康にする人と環境』”はじめに”と構成公開

渾身の一冊。
『腸と森の「土」を育てる〜微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)

お陰様で多くの方に共感頂き、増刷を重ねております。
地球全体が動乱の中にある今、目を開けば分断された世界で、目には見えないが確かに存在する繋がりを取り戻すこと。
それが、未来への切り札だと思うのです。
この不安定な時代において、地に足をつけて未来へと歩みを進めるヒントになれば幸いです。

人の不調と、地球の不調は 「土」でつながっている――

アレルギー、がん、精神疾患など様々な人の病 
気候変動、砂漠化、海洋汚染など様々な地球の病

日々の食の選択で健康な「土」を取り戻す。 
「プラネタリーヘルス」その理論と実践について深々とお伝えします。

光文社新書のnoteでは、はじめにと目次を全文公開して下さっています。
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『腸と森の「土」を育てる〜微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)

はじめにより抜粋

「ヘルスケア」というエゴイズム

ヘルスケアのために、みなさんは普段、何をしているでしょうか?
医師としてお伝えしたいのは、「個人だけを最適化する」ヘルスケアやウェルネスは、実現不可能だという事実です。
新型ウイルスのまん延によって、自分一人では健康になれないことを、誰もが思い知らされたと思います。
どんなに自分の心身を完璧に保とうとしても、人は、環境の変化に翻弄されます。明らかに、人は環境と一体です。

人と人、人とコミュニティ、人と社会、人と生態系、人と地球全体が、「連続し、相互依存する一つの有機的なネットワークである」という巨視的な視点を取り戻したとき、初めて、根本的なヘルスケア、ウェルネスとは何かがみえてくるでしょう。
(中略)

プラネタリーヘルスで世界の病を解決

あらゆる分野において分断思考に基づいて自然を支配し、社会システムを構築した結果、人を含む地球全体の病を生んでいます。
心身の病気や飢餓、貧困などの社会問題、差し迫る環境問題など、SDGsに掲げられたあらゆる課題は、全て、人が自ら生み出し、全体を破壊しながら自らの首を絞めている自己矛盾した状態です。



「人と地球は別々な存在ではなく、相互依存関係にある」という考えを基盤に、多様な生物が生かし合う生態系を維持し、人を含めた地球全体の健康を実現することを「プラネタリーヘルス」と言います。

土の回復と生命の網への再接続

そのアプローチとして、本書でご提案したいのが、根を下ろす「土」の回復です。
難しい方法ではなく、日々の「食」という最も身近な営みこそが、核心です。
食は、土を回復し、人を生命の網(WEB OF LIFE)へと再接続する媒介です

今、人が地球を覆う土に隕石の衝突並のダメージを与えた時代として、地質学的に「人新世(アントロポセン)」と呼ばれています。土の破壊によって、人と地球の病が顕在化しています。


実は、差し迫る気候変動への対策として、食こそが最大のインパクトを与えます。


SDGsを企業任せにしたり、企業の免罪符にせず、自ら一人一人が今、やる。そのシフトが求められていますが、本書でお示しする方法は、環境のために自己犠牲を払うものではなく、自分をも豊かにしてくれる方法です。

本書では、食により人と地球の土を再接続し、人を生命の網(WEB OF LIFE)の一部へと回帰させます。最も身近な食の選択を通して、人と地球の土を回復し、プラネタリーヘルスを実現する方法をお伝えします。
 生態系・生命のシステムへの洞察を深めることで、問題を作り出す分断思考を解き、巨視的視点へとシフトします。ノウハウを盲信する受動的な消費者ではなく、主体的に判断し最適な選択ができる主体へのシフトを目指します。
 そうしたシフトこそが、カオス化したこの世界の問題を解決していく鍵になると確信しています。

本書の構成

第1章 人は森であり、腸内に土を持つ

第1章では、人と、森の土の相関を観察し、土と微生物へのリテラシーを高めていきます。
土の中の微生物と根っこが作り出す巨大ネットワークと腸の相関。
土の団粒組織と人の組織の相関など、相似形となっているシステムを観察します。

第2章 消化管で人は自然とつながっている 

第2章では、食と消化管、腸内細菌による生命システムをシンプルに理解し、人と生態系を再接続します。
多様な生物の生と死の動的循環によって、巨大な一つの生命の網(WEB OF LIFE)が編まれています。

第3章 腸内の土の悪化が、心身にもたらす病

第3章では、腸内細菌と人体の巨大ネットワークを、最新のポリヴェーガル理論などを交えながら紐解きます。
人の土の腐敗・腸内環境の乱れによる心身の病気について、最新の情報をお伝えします。

第4章 食と農業の選択で、土の未来を変える

第4章では、差し迫る環境問題と、食の選択の重要性と環境へのインパクトについて学びます。農業や畜産による甚大な環境負荷を知ると同時に、解決策となる革新的な方法をご紹介します。
sonyCSLが研究する拡張生態系・協生農法(シネコカルチャー)パタゴニアがリードする環境再生型オーガニック農業(リジェネラティブ・オーガニック農業)ど。
協生農法は、実際に、CSLに指導頂き、米子のガイナーレ鳥取という野人・岡野さんがGMを務めるJリーグチームのYAJINスタジアム横に圃場を開いた様子などもご紹介しています。

第5章 微生物で接続する、腸と土、人と自然
――食の選択・ライフスタイル編

第5章では、具体的に今日からできるアクションとして、自分の腸内の土、地球の土を改良する食の選択と、土と生きるライフスタイルについてお伝えします。「微生物と共に生きる」を意味する「シンバイオティクス」な選択がカギになります。

おわりに

東京大学大学院道徳感情数理工学・光吉俊二准教授が発明した数理をもとに、人工自我が共感と調和の心を持つ時代に、人はまだ分断を生きるのか?

今、人類は、「アンチ」(戦い-)から「シン」(共に−)の時代へシフトしようとしています。
本書が、シン・世界を共創するヒントになれば幸いです。

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『腸と森の「土」を育てる〜微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)

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