戦略的であれ
From:Dr.kappa
月曜日、23時40分
日本、本州
(これは、2020年5月6日に送信した私のメルマガを一部編集したものです。)
この2回にわたって、「儲かるビジネスの構築法」と「刺さる言葉の紡ぎ方」というテーマで話してきました。
そこで話したことを一言でまとめると、人間の強い欲求をまず狙い、それを叶えるための戦略を立て、最後の段階で初めて理性を必要とする言葉を用いようという内容でした。
これらのメールに対して、質問を頂きました。
「すべきことの大枠はわかった。それで具体的にどうすれば良いの?」
という趣旨の質問です。
偶然、今回お話ししようと考えていたことは、この質問に(少なくとも部分的に)答えるものになっています。
ですが、一部答えられない部分もありますので、そこだけ本題に入る前に回答しておきます。
具体的には、強い欲求のある市場の探し方です。
数十年前であれば、このような調査は大変だったでしょうが、現代では国や様々な組織が調査を行ってくれていますので、簡単に統計を得ることができます。
少し調べてみると、次のようなサイトが見つかります。
https://stat.visualizing.info/msm
このサイトでは、様々な市場の規模を面積の大きさとして可視化してくれています。
しかも、前年比を色によって表してくれていますので、規模は大きくとも衰退している業界や、まだそこまで大きな市場でなくとも急激に伸びている分野を簡単に探すことができます。
(データによっては古いものもありますが、大体の傾向を掴むには十分でしょう。)
そして、この図を見ていると、いくつかの傾向が見えてきます。
例えば、
・移動手段や建設、医療など、生活に必要となるものは規模が大きいこと
・オンライン化が進んだことにより必要性が下がっている印刷・出版などは規模の縮小傾向があること
・逆にオンライン化によってモバイルコンテンツ・ECなどは伸びていること、などなど。
したがって、もしあなたがどんなビジネスにしようか悩んでいるのでしたら、オンラインで行えるビジネスを選んでおけば、少なくともここ数年は間違いないでしょう。
また、物を持つのはデメリットが大きいので、情報を販売できれば強いです。
情報であれば在庫を持つ必要がなく、時間や場所も縛られないからです。
ちなみに、「紙とインクからできた商品」はゲイリー・ハルバートも勧めています。
http://www.thegaryhalbertletter.com/Boron/TChapter22.htm
これらの制限を無くしておくのは、生活を自由にしてくれるだけでなく、今回の新型コロナウイルスのような予期せぬ天変地異に対する耐性を高めることにも繋がります。
制限が多いと、その内のどれか1つが引っ掛かるだけでビジネスが回らなくなる危険を抱えてしまうからです。
このような市場調査の結果を分析すること、これが強い欲求を探す具体的方法の1つ目です。
(一応コメントしておきますと、前回触れた性に関する業界も上のサイトで大きな市場として現れていることが確認できます。)
このような市場調査を用いても選べない場合は、成功している大企業が選んだ選択を参考にさせてもらうのも手です。
実は、私が前回までのメールを書いている時に念頭にあったのは、この方法です。
私の頭にあった会社はアメリカの出版社で、様々な分野のニュースレターを発行しています。
その会社はAgora Publishing(アゴラ出版社)です。
https://theagora.com/subscribe/
この会社は非常に成功している出版社として有名です。
大企業となると1つの選択に大きなリスクを負う可能性がありますから、彼らが選んだ市場は大きな欲求がある、儲かる市場と考えて良いです。
そこで、アゴラが提供している情報を見てみると、投資やビジネス、健康、旅行などの分野を彼らが選んでいることが確認できます。
したがって、もし1つ目の市場調査を用いる方法で選べない場合は、これらの分野から選ぶという方法がやりやすいでしょう。
今、このメルマガを書いていて思い付いた、もう1つの選択肢があります。
それは、アゴラに似た日本企業を参考にする方法です。
その企業とはリクルートです。
ここはホットペッパーグルメなど、様々な分野のプラットフォームを持っています。
そして、ホットペッパーに掲載するには月に数万円から数10万円掛かります。
集客にこれだけのお金を掛けられる分野ということはその数倍の利益をあげていることを意味し、そんなお店が数千、数万件とあるということは、リクルートが提供しているプラットフォームの業界も強い欲求があると考えて良いでしょう。
このように、複数の業界でビジネスを行なっている大企業を参考にするのが2つ目の方法です。
強い欲求を選ぶ具体的な方法として、参考になりましたら幸いです。
さて、では本題に入ります。
これは、強い欲求が存在する市場がわかった後の話です。
上で見たように、投資やビジネス、旅行、健康などに対して人は強い欲求を抱いていると考えられます。
では、これらの中からどれを選んだら良いでしょうか?
実は、答えは人に依ります。
これだけでは「答えになっていないじゃないか」と思われるでしょうから、「人に依る」の意味を説明させてください。
まず最初に注意しておきますが、強い欲求があるとわかったからと言って何も考えずに飛び込んではいけません。
ただ、そのような方は私のメルマガを読んでいる方にはいらっしゃいませんから、詳細は省きます。
市場はなんとなく選ばず、戦略的に選ぶようにしましょう。
この考え方の土台となったのは、リッチ・シェフレンの本です。
彼は、アメリカの起業家で、グーグルやヤフー、マイクロソフトなどのコンサルも行なっていると言います。
そんな彼が本の中で言っていることを要約すると、戦略的になれ、に尽きます。
曰く、世の中には2種類の人間がいて、一方は目の前のチャンスに飛びつくが、もう一方は自分の戦略に適ったものだけ採用すると。
いま、彼の本は手元に無いので、記憶を基に話していますが、少なくとも私の記憶では彼は本の中で「戦略的」であるとはどのようなことか明確には定義していませんでした。
ただ、戦略的でない、もう一方のグループを参考にすれば(少なくとも私流の)明確な定義が得られます。
つまり、戦略的でない状態とは手当たり次第(良さげな打ち手に)手を出している状況です。
言い換えれば、目的が無いまま手だけ動かしている状態と言えるでしょう。
(実は、学生の頃の私は、研究に関して正にこんな状態でした。
具体的には、すぐできそうな研究に片っ端から手を出しており、専門間を飛び回っていました。
理解したい物理がある訳ではなく、興味を惹かれた問題というだけで取り掛かってしまっていたのです。)
この状況は、例えれば酔っ払いの歩行のようなものです。
あっちに行ってはフラフラとこっちに戻り、ほとんど進むことができません。
もしご存知でしたら、数学でランダムウォークと呼ばれるものです。
このような「進み方」ではどこへも行くことはできないでしょう。
(もちろん、偶然当たる可能性は否定しませんが、ランダムである以上、勝ち続けることはできません。)
戦略的とは「このような状況でないこと」ですから、目的を持って真っ直ぐ進んでいる状態と特徴付けられるでしょう。
あるいは、まずゴールを明確にして、そこへ向かって手を打っていくことを戦略的と定義できそうです。
したがって、戦略的な者は、どんなに魅力的な対象が目の前に現れようが、それがゴールへ向かうのに役に立たないのであれば見向きもしません。
目的達成の為に他の手を捨てられる者と言っても良いです。
では、どんなゴールを選べば良いでしょうか?
これはビジネスにおいては利益をあげることに尽きます。
もちろん、それによって社会貢献したいという想いが背後にあるはずですが、ビジネスとして行う以上、利益をあげなければなりません。
想いの実現だけが目的であれば、非営利組織・ボランティアとして行えば良いからです。
(ちなみに、私のビジネスの背後には次のような想いがあります。
私のように研究者を目指すには、大学院を出なければなりません。
ですが、その為には膨大な学費が必要で、それを払えず、諦めてしまう学生たちがいます。
また、晴れて大学院を出ても、研究者という職業はあまり稼げませんので、やはり経済的理由で研究者の道を諦めてしまう優秀な学生が多いのです。
こういった学生たちが、経済的不安を抱かずに学問に専念できるようになれば、将来的に彼らが親となった時に知的水準の高い親となり、次の世代の子供達も自らの頭で考えられる大人になると考えられます。
その結果、思考的に自立した大人が増えれば、世界は良くなると私は考えています。
したがって、そんな世界を実現する為に、私はビジネスを行なっています。
具体的には、まずは私自身が自力で稼ぐこと。
そして、将来的には、学生たちを雇って、彼らには給料を受けながら各々好きなように副業の研究をしてもらおうと考えています。
また、その会社の利益からは、学生たちへの奨学金も作ろうと思っています。)
少し脇道に逸れましたが、以上のような理由で、ビジネスは全て利益をあげる為に行われるべきだと私は考えています。
利益をあげること、これがビジネスの場合はゴールになります。
ゴールが明確になったら、次はそこへ向かっていく(抽象的な)道筋を考えます。
そして、この道筋に沿って歩み続けることが戦略となります。
では、その道筋はどうやって選べば良いでしょうか?
実は、そのヒントは前回のメールで書いています。
つまり、あなたの中で最も強い欲求を明らかにすることが道筋を選ぶ助けとなります。
ほとんどの人は、小さい頃から行なってきた諸々の選択の背後に、この欲求が隠れています。
ちょうど、私の場合、モテたいという欲求を満たす為に、私が美しさを感じる理論物理学や言葉の研究という道を選んできたように。
(言い換えると、そうなるように私はWHYを定義していました。)
そして、人間の脳は繰り返し行う行動は強化されるようにできています。
強化というのは、より容易に、より精度高くなって行くという意味です。
様々な技術を思い浮かべてもらえばわかりやすいでしょう。
どんなスポーツでも、型の動作を繰り返すことにより、無意識に洗練された動作ができるようになっていきます。
そして、これはスポーツだけでなく、思考などでも同様です。
例えば、研究者がいくつもの未解決問題を次々と解決していけるのは、順序立てて問題を解く脳内回路が強化されているからです。
少しまとめましょう。
人々は各々のWHYに含まれている強い欲求に則って(ほぼ)一貫した選択を行なっており、その選択は何度も行っていることにより関連した脳内回路が強化されていると考えられます。
(私であれば、様々な具体的な現象の背後に潜む原理を抽出するという物理学の方法を繰り返し用いており、言葉の研究に対しても同様の手法を適用していますので、原理を抽出して行くという思考が他人より強いと思われます。)
したがって、各々のWHYに含まれる欲求の実現に至る道を選ぶと良いです。
その上で、その欲求を叶える為にあなたが強化してきた思考・技術・知識を利用できる市場を選べば最も勝ちやすいと考えられます。
それぞれの重視する欲求と得意分野は人に依ります。
これが上で、どの市場を選んだら良いかは人に依ると言った理由です。
これだけだと抽象的なので、1つ具体例を見てみましょう。
主人公は上で登場したリッチです。
彼は、20歳くらいの頃、身内の服屋の立て直しを任されたそうです。
彼の店舗のエリアには、競合がたくさんあったのですが、リッチは彼の強みを活かすことにしました。
つまり、彼は若く、若者に受ける音楽について深い知識があったので、その知識を利用して服屋を改造しました。
店内では彼が詳しい若者受けするジャンルの音楽を掛け、しかも販売する服もその音楽に興味のある層に集中した物に限定しました。
その結果、リッチの店は若者の溜まり場となり、2年で年商が1.5億円から7.5億円になりました。
彼の店の成功を見た競合は、リッチの真似をしようとしました。
そして、店内には若者受けする音楽を流し、服も彼らが好む物を強く売り出したのです。
ところが、付け焼き刃の知識ではリッチに敵わず、時代の最先端の音楽、流行を知っている彼のなすがままとなったのです。
これが強みを活かす、戦略的な戦い方です。
もし、彼が流行の服を手当たり次第売り、何のコンセプトも無い店舗としていたら、競合他社に埋もれていたことでしょう。
そうではなく、自分の強みである若者に関する知識を活かしたことにより彼は成功しました。
この例からもわかるように、強みと言ったとき、特別な技術や知識を持っている必要はありません。
年齢や性別、住んでいる地域などだけで既に差別化可能な知識があると思って良いです。
もしあなたが、自分には特殊な強みは無いと思っていたとしても、これらの知識を活かせば勝ちやすいビジネスを構築することができます。
その中でも特に勝ちやすいビジネスは他でもなく、あなたのWHYに則ったビジネスです。
ここまでは、どんな市場を選ぶかという最初の一歩の話でした。
ですが、ゴールへ到達するには、そこへ向かって真っ直ぐ歩み続けなければなりません。
つまり、ゴールへ近づく選択をし続ける必要があります。
そこで、この話で今回のメールを締めくくりたいと思います。
上でお話ししたように最初に行うビジネスを選んだとします。
そしてそのビジネスが当たった(そうなるように考えていたので、当たる確率は高いです)としましょう。
次に、何をすれば良いでしょうか?
戦略的であることの定義を思い出すと、手当たり次第、儲かりそうな分野に手を出してはダメなのでした。
戦略的な次の打ち手としては、当たった分野の経験を活かせるビジネスを行うのが良いです。
例として、上のリッチの場合であれば、若者向けの飲食店などが候補となるでしょうか。
服屋の会社の系列として飲食店を出せば、服屋のファンが来てくれることが期待され、成功する確率が高いと考えられます。
(ちなみに、前回お話ししたサイモン・シネックの言うように、WHYを明確にすることにより人はファンになってくれます。
この点はまた今度お話しします。)
これだけだとやはり抽象的なので、当たった分野に止まることの有効性を様々な例で見てみましょう。
膨大な金額を稼ぐ起業家は、1度当てた分野を深掘りして行く傾向があります。
これはコピーライティングの観点からも有効な方法です。
なぜなら、どんどんと顧客の声が溜まっていき、リサーチの精度が上がっていくからです。
この傾向が見やすいところとして、次のサイト(英語です)をご紹介します。
このサイトには、過去の膨大なセールスレターが収録されています。
もしあなたがコピーライターに詳しければ、彼らの名前やジャンルで検索してみると、何十本ものレターが見つかるでしょう。
1例として、このメルマガに何度も登場しているゲイリー・ハルバートを取り上げてみましょう。
このサイトの検索窓に「Gary Halbert」と入力し、検索してみてください。
すると、美容やダイエット、ビジネスに関するセールスレターが多いことに気付くでしょう。
(ゲイリーのレターは傑作ばかりなので、読んでみることを強くお勧めします。)
つまり、まずi)強い欲求がある市場で、ii)何度もビジネスを行なっていたこと、がわかります。
このように、当たった分野に止まることによって、より経験が蓄積され、精度が上がって、更に勝ちやすくなります。
この方法はビジネスだけに留まりません。
私の本業である研究に関しても当てはまります。
生産性の高い研究者たちの書いて来た論文を調べてみると、同じ分野に何十年も止まっていることがわかります。
やはり、そうすることにより経験が蓄積され、更にその分野に強くなるからです。
実は、同じ分野に止まることにより、新たに勉強することが少なくて済むだけでなく、今までに強化した脳内回路を更に強化できるので、効率も高められる方法になっています。
長くなりましたので最後にまとめます。
ゴールを明確にし、そのゴールへ向かって真っ直ぐ進んでいく(不要な選択肢は魅力的でも捨てる)ことを戦略的と(私は)定義しました。
(ビジネスにおける明らかなゴールの1つは利益をあげることでした。)
そのゴールへ至る道筋はいくつも考えられますが、その中からあなたの強みを活かせるものを選び、そこに集中します。
このように戦略的になることにより、勝ちやすいビジネスを構築することができます。
特にWHYの定義に含まれている戦略(私の場合、美しくなる)に則った道筋を選ぶと最強です。
そして、そこで勝てたら、あなたの強みを更に深掘りできるように展開していきましょう。
このような筋の通った戦略的なビジネスを構築していけば、勝つ確率は限りなく高くなります。
最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。
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