ブラウンチーズと乳糖不耐症について
けっこーアカデミックな話です。
先に結論ををいうとブラウンチーズは乳糖不耐症の方でも問題なくたべれますっていう話です。
さてさて、
ノルウェーの国民食であり、国内ではナカシマファームが初めて商品化したブラウンチーズ。
このチーズはチーズの製造時に出るホエイを煮詰めて作ります。
ホエイには乳糖が含まれており、それを凝縮しますから乳糖不耐症(牛乳飲むとお腹がゴロゴロするアレです。詳しくは後述します)の方にとってはどうなんだろう?おすすめしていいものかという疑問がありました。
ちなみに僕の考えだと、
ブラウンチーズは糖とタンパク質を加熱によって結合させるメイラード反応が起きているため、乳糖不耐症は問題ないと考えていました。
(個人レベルの結果ですが牛乳ではゴロゴロなるスタッフがたべても大丈夫です)
ちなみにちなみに、
チーズはホエイに乳糖がほとんど排出しているため、またヨーグルトは乳酸菌の発酵によって乳糖は減っていますので、牛乳ではゴロゴロする方でもこれらが大丈夫なのはそのためです。
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話をもどしますが、
とはいえ乳糖のカタマリであるホエイを凝縮するわけなので実際どうなんだろうと疑問は尽きません。
そんなことをスタッフでチーズ職人の浦川千晴さんと話していると、
ちょっと専門家に聞いてみます!と。
(その行動力よ)
で、ここからが今回の本題なのですが、
その専門家というのが
堂迫俊一先生です。
簡単ではありますが紹介させていただきますと、
元・雪印の技術研究室所長、チーズプロフェッショナル協会の顧問、またチーズの著書も多数出版され、チーズ業界に多大な貢献をされています。
そんな堂迫先生が浦川さんの質問
"ブラウンチーズと乳糖不耐症について"
に快く答えてくださいました。
以下堂迫先生のご回答です。
掲載についても是非ということでした。
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ブラウンチーズと乳糖不耐症
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乳糖不耐症の症状は
①大腸(colon)における浸透圧、②大腸の細菌が乳糖を分解し発生するガスに起因します。浸透圧が高くなり、それを下げる為に大腸に水が入り、下痢となります。
また、細菌がガスを発生させるので膨満感を感じます。
何故、浸透圧が高くなるのか。
乳糖がグルコースとガラクトースに分解されれば小腸にて吸収され、大腸には基本的には到達しません。しかし、乳糖が分解されなければ小腸にて吸収されないので、大腸に到達します。浸透圧=定数×モル濃度×温度で計算することができます。
モル濃度=その物質の重量/分子量です。
乳糖の分子量は約340です。
なので、もし、10gの乳糖を摂取すれば、定数×温度×10/340 の浸透圧が発生します。
一方、乳糖を多く含むチーズを長時間加熱するとメイラード(Maillard)反応が起こり、様々な高分子が生成します。それら高分子の中には茶色や黒色の物質も生成するので、いわゆる褐変が認められるので、高分子化合物が生成されたことはすぐに分かります。
これら呼応分子の分子量は分かりません。
乳糖はたんぱく質とも結合するので、仮に平均分子量を20,000とすると、乳糖10g摂取すれば高分子のモル濃度は10/20,000となります。
なので、高分子が大腸に到達しても浸透圧は乳糖の場合と比べて340/20,000=0.017で、めっちゃ低いわけです。なので、下痢症状は殆ど起きません。
また、これら高分子は大腸の細菌では殆ど分解されないため、膨満感もありません。
高分子の一つにラクチュロースというのがあります。これは森永乳業がホエイを加熱して製造しているのですが、一種の食物繊維と同じような働きをすると訴求しています。
なので、乳糖不耐症の方がBrunostやブラウンチーズ、あるいは蘇など乳糖を含み加熱濃縮され、褐変している乳製品は乳糖不耐症の方でも問題なく食べることができますし、食物繊維に似た働きも期待(整腸効果)できます。
ブラウンチーズ、万歳‼
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堂迫先生!
ありがとうございます!!
やはりメイラード反応によって乳糖が減少しているということが言えそうです!
しかも整腸効果も期待できるというのは思ってもみなかったことでした。
もちろんすべてにおいて個人差はありますが、
"このような方向性がある"というのは言えますね。
ブラウンチーズはノルウェーでは国民食なので、こういった研究はたくさんされているのかもしれませんが、
日本においてはこれまであまり認知がなかったので議論が少なかったと思います。(もしくはあったのかもしれませんが表にでにくい)
新しいことにチャレンジし、それをきっかけにこれまで起こらなかった議論が起こり、知識が集積されていくと良いですよね。
改めて堂迫先生、浦川さんありがとうございます!
ブラウンチーズ、バンザイ!!
堂迫先生
出典/雪印HPより
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