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分骨
火葬場でパパの骨あげ。
喪主はパパのお父様。
隅っこで遠慮しているとパパのおじさんが声を掛けてくれた。大きな壺に、私達もパパの骨を入れた。
壺はそろそろ一杯になって、この儀式が終わりに差し掛かった時。
この壺は自分のではないと悟った我が子。
小さい声で私に言った。「パパの骨欲しい」
いいよとかダメだとかいう権限は私にはなかった。
「ねえ、ほしい!!」さっきより大きな声で言った。
かなり頑張ったんだと思う。本当に欲しかったんだね。おじいちゃんが「いいよ!」と声を掛けた。
私は「ちょっと売店に行ってきます!」と走り出す。
さっきパパが骨になるのを待っている間、売店で飲み物を買った時、売店のレジの横の小さい骨壷が目に入っていたのだ。
その時は、こんなかわいい骨壺もあるんだなとしか思わなかった。
ここにパパの骨入れて帰るぞ!なんてこれっぽっちも思ってなかった。
「パパの骨欲しい。」と言ってくれた我が子。
グッジョブ!
これからの私達にはパパの骨が必要だと私も思った。
小さい骨壺に、我が子の小さい手でパパの大好きなパーツが収められていく。
係の人が子どものために、もう一度丁寧に説明してくれた。
ここがね、お手手の骨だよ。って。
お手手をよく繋いでいたから。
パパの右手のこの指のところ。
そして左手も。
よく頭突き対決したパパのおでこ。
肩車してくれた肩のところ。
もっと入れたそうにしたてけど小さな壺はすぐに一杯になった。
残った骨はどうなるんだと気にしていた。
私も気になった。
終わった。
一同が退室し、係の人が私たちに一礼して扉は閉められた。
手を振って残りのパパにさよならをした。
そして満足そうに骨壺を自分のリュックに収め、「ママ、帰ろう!」と私の手を繋いだ。
火葬場の係の方から渡された”分骨用火葬済証明書”と書かれた封筒の中には埋火葬許可証と火葬施設利用許可証の写しが入っている。
私たちの突然の申し出に、係りの方は嫌な顔一つせずテキパキと書類の準備をしてくださった。
これは納骨する時に必要な書類とのこと。
無くさないように気をつけよう。
これって私達とパパが同じ苗字であったからスムーズに出来たみたい。
なんかめんどくさいからいいやって元の姓に戻さなかった私もグッジョブ!
帰宅後、子どもがなまえペンで骨壺のお名前のところに”パパ”と書いた。