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タチヨミ「コーヒーを飲みながら」②

「コーヒーを飲みながら」第1巻 第1章<落花生>落花生


 もう、十数年前のことだが落花生は芋ではなくて豆なのに地下茎で実がなると思っていたから不思議だった。そのことを植物学者の方に尋ねてみたら
「畑に生えているところを見たことがないのか」
と、言われた。そうだ。見ないことには分からない。
 今年の7月、ホームセンターの園芸売り場の種の袋の並んだラックから落花生と大きく書かれた種を買う。ハサミで封を切り袋から出した種は、煎って塩をしていないだけで殻から出したピーナッツと同じだ。ベランダの空いている植木鉢に落花生の種を蒔いた。7月10日、3つの植木鉢に1つずつ植えて、13日、芽が一つ出た。芽だと思っていたのは根だったようで、爪楊枝くらいの太さの一本の根はアーチ状に伸びて再び土に潜った。次の日には豆が半分に割れたような形で土から現れた。それが2枚の葉になるのだろうと思っていたら芽らしきものが豆の間から現れた。16日の朝、窓の外の落花生を見ると、いきなり葉っぱが12枚付いていた。おかしい。こんなことはない。普通は種の使用の部分がそのまま最初の葉になるはず。その葉の間から出てきた芽が伸びていくのだ。種の半分の形のものは葉にならず豆の形のままで、その豆の先から葉が12枚一晩で出るなんて。私の勤め先の宮崎県立農業試験場の上司に尋ねたら
「1枚が4枚にわかれているんだよ」
と、教えてくださった。なるほど。それにしても、たった一晩でステッキが一振りで花束に変わる手品のようにイチ、二のサン、ハイ!と葉が出てきたのは驚いた。落花生はぐんぐん成長し15センチほどの高さに伸びたとき、下から3節目の葉の付け根に花が咲いた。複雑な豆の花の形そのままに小さく淡く黄色がとてもかわいい。


「コーヒーを飲みながら」第1章<落花生>落花生より抜粋。
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                              星原理沙



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