自分に合った研究室を選ぶために
はじめに
皆さんはどのように研究室を選ぼうとしているのでしょうか?私自身は研究テーマ以上にラボとの相性が重要と折に触れて口にしています。
このノートでは研究室を選ぶにあたっての考え方を述べてみたいと思います。
自らの能力を発揮できる環境を
皆さんは研究室に何を期待しているでしょうか?最先端の分野の学習、スキルの修得、就職準備、保護者や友人からの推奨、自身の興味の探求、国際会議での活躍など、進学には様々な理由があると思います。
学部までのカリキュラムはある程度標準化されてる一方で、研究室は研究内容、指導方針、ライフスタイルなどは企業と同等、場合によってはそれ以上に多様性にあふれています。締め切り間際には一日の2/3もの時間を生活する可能性もある研究室では、研究のテーマ以上に研究生活のマッチングが重要となります。
ところで皆さんは、各々の能力は自身の身体に帰属していると考えているかもしれません。しかし人間拡張工学の研究を通して私が学んだ知見の一つが、実は我々の能力は環境と身体との関係性によって定められるということです。
サッカーが苦手でも囲碁で活躍できたり、学部の成績があまり芳しくなくても研究で良い結果を出したり、研究室を変えたとたんに良い成果を出し始めた学生がいることは、我々自身も目の当たりにしています。
つまり、皆さんの能力はその能力が発揮される環境と出会ったときに最大化されるわけです。
一方で皆さんもすでに興味のある研究領域を見つけているかもしれません。それでは興味と環境、どちらを重視すべきなのでしょうか?
どのテーマが自分に合うか、実はなかなかわからない
得意なことや興味のある分野があること自体は素晴らしいことです。しかし良く考えてみてください。皆さんは、いつからそのことに興味を持ちはじめたのでしょうか?そしてどんなきっかけでそのことを得意と認識したのでしょうか?
友人や教員から話を聞いた、ふと本を手にしてみた、巷で流行っていたので勉強してみた、コンテストで受賞したなど、理由は多様だと思います。ただ概ね下記のような感じだと思います。
ほら、なんか恋愛みたいですよね?多くの大学の教員の方は、自らの研究分野に愛情と誇りを持ち、所属する研究コミュニティの中で活躍しているはずです。つまり、どんな研究領域でも何らかの面白ポイントは必ずあるはずなのです。
皆さんは高校生の頃、大学で行われている研究を今と同じ解像度で見えていたでしょうか?大学に入学し、教員から話を聞いたり、研究室を見学するうちに、かつては全く知らなかった分野があることに気付いたはずです。今は興味が無くても実際携わってみると面白いこと、得意になることはまだまだ沢山あると思います。
そして分野には流行り廃りがあります。現在隆盛を誇る研究領域のトップを走る研究者は、サーフィンと同様に波が来る遥か前からパドリングしていた方々です。トレンドの波がそのまま一層高くなるのか、ベタ凪になるのか。次の大波がいつ、どこに来るかは、実際の波浪予測以上に困難です。よって今流行っているというだけの理由で所属先を決めることはお勧めできません。
一方で恋愛との大きな違いは、お互い合わないからと言ってすぐには相手を変えられないことです。その分事前に慎重に検討することが必要ですし、どうしても合わない場合は、指導教員以外にも、専攻主任や相談教員などと早めに話してください。
以上のことから、自らが心から信じる研究分野にチャレンジするのも良いですが、ラボとの相性にも気を配ることをお勧めしているわけです。
研究室との相性を知るには
それでは、自らが能力を発揮できる環境を選ぶにはどうすればよいのでしょうか?
メディアや講義、説明会などを通してテーマはある程度想像できますが、なかなか自らの研究生活を想像することは困難です。ラボへの憧れや期待が高ければ高いほど、研究生活が思い通りにならないときの失望も深くなることでしょう。
理工系の研究室の場合、例えば以下の項目のうち、自分が主体性を持ってコントロールしたいのはどれか、ラボにリードして欲しいのはどれか、あまり気に留めないのはどれかを良く考え、その上で希望する研究室の教員や卒業生、現役学生に状況を聞いてみると相性が透けて見えてくるかもしれません。
我々の研究分野では「行為主体感(agency)」は自らの身体を、もしくは自己と他者との界面を象るうえで重要と言われています。
どこまでが自分として譲れないところか、どこを期待したいか、どこを気に留めないのか、それらの総体が大学院生としての皆さんを定義し、研究室での活躍と評価に繋がります。
もちろん、所属する学生の個性に合わせ、指導方針をフレキシブルに変える研究室も多いと思います。相性の良い研究室、研究テーマと出会えるよう、ぜひ自分を見つめなおし、ラボを良く調べてみてください。
繰り返しになりますが、教員だけでなく、卒業生や所属学生からも意見を聞くことで、同じ学生視点での意見がもらえることでしょう。
進捗が無い時こそラボに頼ろう
実際に研究室に入ってからのことを少し書かせてください。いくら相性の良い研究室に入ったとしても、ときに思うように研究が進まず、ときにプライベートで問題が起き、研究が手につかなるなることがあります。
そんなときは、誰でも研究室に顔を出しにくくなってしまうものです。でもそんなときこそラボを頼って欲しいと多くの教員が思っています。進捗を生むために是非ラボを頼ってください。
慌てなるな、でも続けよう(2020年2月18日追記)
ソーシャルメディアを見ると、同世代の学生がコンテストで受賞していたりいち早く国際会議で発表していたりと、まだ何者でもない自分と見比べてどうしても焦ってしまうことがあるかもしれません。
私も学生時代、同じような悩みを抱えていました。そんな時に大切なことが「慌てるな、でも続けよう」ということです。
この連続tweetsが好評だったようなのでtogetterにまとめました。周囲を見て焦燥感にかられるとき、ぜひ読んでみてください。
その他参考になる情報
多くの大学院生にとって下記記事はとても参考になると思いますので一読することをお勧めします。