心電図⑥ 胸がドキドキ:PSVT
「胸がどきどきする」の代表的存在、発作性上室性頻拍(paradoxical supra ventricular tarchycardia: PSVT)。
この主訴で多い不整脈の一角といっても過言ではありません。
どんな不整脈?
とにかく早い。心房細動・心房粗動よりも早い。
HR:180/分とかもザラ。というか、HR:180/分と報告がきたら、大体PSVT。
患者さんは強烈な動悸を訴えることがしばしば。脈拍が速すぎて血圧が測れないのか、本当に下がっているのかわからないことも。
どうやって診断するの?
PSVTは、そもそも特定の疾患を指すものではありません。
基本的には4つの不整脈の総称です。
特徴は、「同じところをぐるぐる回る」ということ。
・・・心房粗動でも同じような説明出てきましたね。
「同じところをぐるぐる回る」っていう意味では似ているかも。
でも、回るところが違う。
PSVTの中で圧倒的に多いのが、房室結節回帰性頻拍(Atrial-ventricular node re-entry tarchycardia: AVNRT)と房室回帰性頻拍(Atrial-ventricular re-entry tarchycardia: AVRT)の二つ。
超大雑把ですが、典型的にはこんな感じで不整脈が同じところをぐるぐる回ります。
一応、大雑把に鑑別はできます。ただ、確定診断には電気生理学的検査が必要になります。
さて、同じところをぐるぐる回る不整脈の特徴。
同じ形の波形が続きます。R-R間隔も一定です。
さらに、上室性の不整脈なのでQRS幅が狭いです(例外あり)。
これだけ。
でも、なんで同じところをぐるぐる回る?
それを理解するには、心臓を動かすための刺激伝達系について少しだけ学ぶ必要があります。不整脈医に知られたら怒られるほど、雑に解説します
。
基本的に、房室結節は2通りのルートが存在します。それぞれを通る信号の速さは異なり、速くりすぎる方のルートを通った信号が先にゴールに到達して分岐し、一部が遅い方のルートにゴール側から侵入します。その信号は遅いルートから入ってきた信号とぶつかって消滅します。
この後、しばらく不応期といって房室結節が信号を受け付けない時間があります。クールダウンみたいなものですね。
普通にR-Rが整であれば、この電気信号同士の衝突が毎回起こり、余計な信号は消滅します。ただ、タイミングよく(悪く?)期外収縮が発生してうまく不応期を回避してしまうと、たまーに反対側からの電気信号との衝突もかいくぐって同じルートを回り続けます。これがAVNRTの正体ですね。
AVRTも原理は同じです。ただ、本来は刺激伝達系が存在しない部位にKENT束というレールがしかれることにより、刺激が橋渡しされることが原因になります。
危険な不整脈?
これ自体は危険な不整脈ではありません。ただ頻脈全般にいえることですが、血液がまともに充填される前に収縮が始まるので、空打ちのような状態になります。ギア1の自転車を全力で漕いでも、あまり進まないのと同じですね。
出会ったらどうする?
まずは落ち着きましょう。焦る不整脈ではありません。
ただ、速すぎて精神衛生上あまりよろしくない。なので、ほっとかずに止めましょう。
基本的に房室結節を通過する不整脈なので、その一点を抑えてあげればOK。ベラパミルやアデホス、ジギタリス等の房室結節の伝導を抑制する薬剤が有効。カルディオバージョンもよし。
はい、超雑な解説でした。
でも、まずは典型例を知るのが大事。そして、大雑把な理解でいいんです。
そもそもこの不整脈、電気生理学的検査なしじゃ診断つかないし。
専攻医のために、後日もう少し詳しい記事にします。
閲覧して頂きありがとうございました!
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