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Vulfpeckニューアルバム『Clarity of Cal』発売前全曲紹介!

KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、58回目の連載となる。では、講義をはじめよう。

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2024年9月、ついにVulfpeck(ヴォルフペック)のニューアルバムがレコーディングされた!

今回の記事では、まだ発売前だが情報が出回っているこのニューアルバムについて、なるべく多くの情報を紹介していこうと思う。

すでにファンによって撮影された全曲の動画が公開されているため、どんなアルバムになるのかも音源つきで体感することができる。

それでは始めよう。


アルバム概要

まず、今回のアルバムタイトルは『Clarity of Cal』

現在のところ、タイトルの明確な意味は不明。翻訳サイトにかけると「Calの明確性」などと訳されてしまう。そもそも「Cal」が何の意味なのか、というのも明かされていない。

前作『Shcvitz』と同様に、今作もpseudodudoによる刺繍デザインのアパレル商品(今回はパーカー👇)が作られた。この刺繍デザインが、もしかしたらそのままアルバムのジャケットにも使われるかもしれない。

画像出典:https://www.instagram.com/pseudodudo/
画像出典:https://www.instagram.com/vulfpeck/


今回のアルバムはもともと、Vulfpeckの2024年9月のツアーのライブ会場で、観客の前で録音される――ライブレコーディングになることが明かされていた。

👆こちらのライブは9月のツアーの最終日の動画だが、ここでもアルバム全曲が演奏され、そのすべてがレコーディングされている。

レコーディングに使われたライブは全部で8回あったため、その中からJackがベストテイクを選んでアルバムに収録するということだろう。

ちなみに、判明している限りで曲目、収録順は以下のようになっている。

前作『Shcvitz』に参加した8名(Jack、Theo、Joe、Woody、Joey、Antwaun、Cory、Jacob)はそのまま引き続いて全員参加。

画像出典:CLARITY OF CAL - VULFPECK (FULL LIVE ALBUM) Hollywood Palladium Night 2 - 9/24/24

加えて、今回は過去にも何度もゲストで参加してきたCharles Jonesがオルガンで参加している。

Charles Jones 
画像出典:Vulfpeck Live at Madison Square Garden


トータルではAntwaun、Jacob、Joey、Theoの4名のヴォーカルをうまく活かした、ポップでファンキーなアルバムという雰囲気になっている。これも前作『Shcvitz』を引き継ぐものではあるが、前作が若干テイストにばらつきのある内容だったのに対し、今作はより方向性が統一されたような印象を受けた。

それでは、各曲を動画付きで聴いていこう。


1. Big Dipper

こちらのタイトルは「The Big Dipper」が「北斗七星」という意味。

Antwaun、Jacob、Theo、Joeyと、このアルバムのヴォーカル4名が全員一緒に歌う、まさにアルバムの方向性を示すようなキラーチューン。

ジャンル的にはJackの大好きな、ファンキーなAOR。アドリブパートもなく、純粋なヴォーカル曲となっている。

個人的には現在、アルバムの中でもっとも気に入っている曲。


2. Matter of Time

「Matter of Time」は、「時間の問題」「いずれはそうなる」「遅かれ早かれ」という意味。こちらはAntwaunとJacobのツインヴォーカルになっている。ところどころでJoeyがサックスとコーラスを交互に担当。

さっきの「Big Dipper」に引き続きファンキーな曲で、こちらはディスコ。また、ゴスペル風のCharles Jonesのオルガンが非常に良い味になっていると言えるだろう。


3. Can You Tell

こちらはJoey Dosikがメインヴォーカルの、ソウル/R&B。おそらくJoeyの曲だと思われる。コーラスでAntwaunとJacobが参加。

コード的に少し憂いを帯びた進行で、それが70年代前半のニューソウルを思わせる。それはJoeyが大好きなジャンルであり、彼の音楽性が遺憾なく発揮されている。

メロディーやコーラスも素晴らしく、一度聴いたら忘れられない。「Running Away」「Inside Voice」「LAX」に続く、Joeyの新たなマスターピースとなるかもしれない。


4. In Real Life

Antwaun、Jacob、Joeyの3人がメインヴォーカルになる、ソウルの曲。

こちらはモータウンのような印象を受けるが、初期Vulfpeckとは異なり、さらにポップな作風。ラストでWoodyがタンバリンを叩いており、こういうところもモータウンオマージュかもしれない。

どの曲にも言えることだが、こういう曲もJoeのベースラインは素晴らしい。「Animal Spirits」のように、歌えるフレーズが満載だ。


5. Tender Defender

こちらはTheoがメインヴォーカルで、おそらくTheo作曲だと思われる。Theoが自らピアノも弾いて歌うという、Vulfpeckの中では初の編成となる曲だ。

内容はいかにもTheoらしい、16ビートのバラード。この曲はおそらくTheoの弾き語りでも成立する曲であるためか、かなりミニマルに演奏されている。Woodyも鍵盤の前に座ってはいるが、ほとんど弾いていない。

メロディがこちらもいかにもTheoという感じで素晴らしく、まだ詳細が分かっていないがおそらく歌詞も琴線に触れるものなのではないかと予想される。そして、ラストのJoeyのサックスソロも聴きどころ。

ここまで5曲、すべてがヴォーカルや多重コーラス入りの贅沢なファンク/ポップの曲であり、今作の方向性を分かりやすく示している。そして、ここまでがレコードA面となる。


6. New Beast

ここからB面。B面スタートがインスト曲になっているのは過去にもVulfpeckがやってきたことで、今回もそれを踏襲した曲順だと思われる。

タイトル通り、2011年に作られたヒット曲「Beastly」を受け継ぐ、ファンクの新曲。「Beastly」と同じく、Joeが熱いソロを繰り広げる。

ちなみにメンバー、楽器編成も2011年の「Beastly」とまったく同じになっているので、気になる方は見比べてみるのもいいだろう。

7. La Gioconda / The Heist

こちらは「La Gioconda」と「The Heist」という2曲が続けて演奏されている。これらが別の曲として収録されるのか、2つで1つなのかはアルバムのリリースまで分からない。

「La Gioconda」とは名画のモナリザを指し、また「The Heist」は強盗の意味。JackのMCによればこれらの曲は、1911年にルーブル美術館で実際に起きた、モナリザの盗難事件がテーマになっているとのことだ。

「La Gioconda」はヴォーカルがAntwaun、Jacobに、ピアノがJackだけの3人で演奏されている。逆に「The Heist」はバンドによるインスト曲だ。


8. Memories 

こちらはCory WongとVulfpeckの共作アルバム『Wong's Cafe』に収録されていた曲のカヴァー。ジャンルとしてはフュージョンになる。

もともとはCoryのギターだけで演奏され、作曲もCoryによるもの。Coryの曲をVulfpeckで取り上げるのは初めてのことだ。

Coryがテーマを弾き、Joeyもそこに参加。テーマ~アドリブ~テーマという、インストもののフュージョンらしい展開になっている。


9. Aug 26

こちらもインスト曲。短くミニマルな曲で、ジャンルとしてはファンクか、フュージョンにあたる。最初にWoodyがイントロを弾くのもあり、曲調的にもWoody作曲ではないかと予想。

何かの番組などのBGMのような曲で、若干の方向性の違いはあれど、過去のVulfpeckを彷彿とさせる内容。後半はJoeyのソロパートになるが、あまり長くならずに終わるあたりもVulfらしくて良い。


10. This is not the song I wrote

ラストはJoeyがメインヴォーカルとなる曲。途中、サビなどでJacobもヴォーカル参加。ピアノイントロがJackなのでJack作曲、もしくはJackとJacobの共作である可能性がある。

曲調的にはファンキーなAORで、Jackやメンバーの大好きなSteely Danのような憂いを帯びたテイストがある。

ただサビになると打って変わって一気にポップな雰囲気になっており、ここがタイトルの「This is not the song I wrote(これは私が書いた曲じゃない)」という意味なのかもしれない。

ラストは皆で手を振るアンセム的な流れになるため、ライブでも盛り上がる曲になりそうだ。

画像出典:Vulfpeck /// This is not the song I wrote (LA night 1)




以上、全10曲(11曲?)、現在分かっている範囲で紹介させていただいた。

アルバムの発売がいつかはアナウンスされていないが、ひとまずはこれらの動画を観ながら、リリースを待ちたい。また新しい情報が出たら、その時は随時追記させていただくとしよう。



◆著者◆
Dr.ファンクシッテルー

イラスト:小山ゆうじろう先生

宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。「KINZTO」と並行して、音楽ライターとしても活動しています。

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Dr.ファンクシッテルー
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