
Vulfpeck 関学文総軽音 完全解説!ロングインタビュー(1) Cory WongからTシャツはもらえたのか?
KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、27回目の連載になる。
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今回は、当マガジン初のインタビュー記事だ。Vulfpeckへの愛を最高の形で表現した、この動画のメンバーの方々へのインタビューである。
まず、簡単にこの動画について説明させていただこう。
2019年11月2日、関西学院大学の文化祭にて行われたVulfpeckのコピーバンドによるこの動画は、2020年7月24日に公開されると、その素晴らしい内容で一気に話題となった。
曲順、演奏、グルーヴ、そして衣装にいたるまで、完璧に本家をコピーしていただけでなく――演奏している本人たちが、本当に、心の底から楽しんでいた姿が、Vulfpeckのファンの心を掴んだのである。


この動画は結果として本家Vulfpeckに認められ、公式Twitterによる二回のリツイート、Woody GossによるInstagramでの投稿、さらに動画のコメント欄にCory Wongが降臨するという事態にまで発展した。
こりゃすげぇ!!https://t.co/wscTDWricd
— Vulfpeck (@vulfpeck) July 24, 2020
bigger than vulf ? https://t.co/g8NOaPYgpa
— Vulfpeck (@vulfpeck) February 26, 2021

Cory Wong : this is so dope. plz have the guitar player email me. i want to send him one of my personal striped shirts
Cory Wong :なんてこった!このギターを弾いている君、僕にメールを送ってくれないか?僕が自分で使ってるボーダーのTシャツをプレゼントしたいんだ。(出典:https://www.youtube.com/watch?v=9-OfK_Gru_A
)
動画は世界中で話題となり、コメント欄は日本語以外の言語があふれ、そのどれもが最大限の賛辞となっている。
さらに最近はまたTwitterでこの動画がバズり、そのバズツイートから逆にVulfpeckを知ってハマる人が大量に現れている。コピーがオリジナルを広めるという、逆転現象が起こっているのだ。
この学祭バンド最高すぎてずっと見てる。 pic.twitter.com/Rb7bBYnWLt
— MIGHTYSTORE (@KAIHATSU_MIGHTY) February 23, 2021
この関学Vulfpeckの動画が、2021年の日本においてVulfpeckの認知を広めるのに、もっとも大きな役割を果たしていると言っても過言ではないだろう。
今回は、彼らが所属する部活、関学文総軽音(KGLMC)のTwitterから連絡を取り、メンバーの方々にオンラインでインタビューをさせていただくことができた。この企画に賛同してくれた関学文総軽音、そしてメンバーの皆様に大きな感謝を申し上げたい。
それでは本編へ進もう!
はじめに、メンバーについて
――はじめまして!Dr.ファンクシッテルーと申します。本日はお忙しい中、お集まりいただき誠にありがとうございます。
まず、自己紹介をお願いできたらと思います。楽器歴や、好きなバンドもお聞かせいただけたら。それではバンドマスターだった、てらださんからお願い致します。

てらだ:はい。当時2回生で(現4回生)、Theo Kaztmanをやっていた、ドラムのてらだと申します。楽器歴は、子どもの頃から家に古い電子ドラムがあったので、それを遊びで叩いてまして。中学は野球、高校はアメフトをしていたので、(バンドでの)ドラムは大学からちゃんと始めました。
――大学からバンドを始めて、2年目であの演奏を!?
てらだ:Vulfpeckの力ですね。笑
好きな音楽は…今は、田中ヤコブや、Jellyfishとかをめちゃくちゃ聴いてます。ブラックミュージックも大好きなんですけど、好きすぎてちょっと言えない感じです。星野源とか、Vulfpeckとか。好きすぎて。笑
――ありがとうございます。それでは、こうすけさん。

こうすけ:当時3回生(現在は卒業)のこうすけです。ギターでCory Wongを担当しました。僕はCoryみたいな顔してたから、ちょうど良かったかもしれません。笑
ギターは小5くらいから、中学でクロマニヨンズやブルーハーツをやって、ちゃんと練習を始めたのは高校生くらいです。高校ではレッチリをやっていました。いまはポールマッカートニー、井上陽水、あとはジプシーキングスがすごい好きです。
――パンクから入って高校でレッチリというのは、Coryと同じ流れです、素晴らしいですね。では、わかばやしさん。

わかばやし:わかばやしと申します。当時最高学年、4回生でした(現在は卒業)。Jackを担当しました。僕は歌謡曲が好きで。高校生のときにギターを始めたのも、BOØWYが好きだったからです。洋楽より、邦楽のほうを多く聴いています。
僕は実はあまりVulfpeck、元ネタを見てなくて…。Vulfpeckはてらだが教えてくれて、「こんな感じで」って言われて。「こんな感じでやればええんやな」ってやりました。笑
――それでも、Jackのギターを弾く動きなども完全にコピーされていて、素晴らしかったと思います。では、とうじょうさん。

とうじょう:とうじょうと申します。当時1回生(現3回生)で、キーボードを担当しました。ベタなんですけど、東京事変とかが好きです。
――Tee Timeのコピーがとにかく素晴らしく、Woody(Vulfpeckのピアノ)も、自分のインスタでそのシーンを取り上げていました。もともとピアノは弾かれていたんですか?
とうじょう:クラシックを長い間やっていました。中高は部活で吹奏楽をやっていたんですが、大学でジャズを弾いてみたくて、ジャズビックバンドがある軽音(関学文総軽音)に入部したんです。
軽音のバンドはあまり参加するつもりはなかったんですけれど…てらださんに誘ってもらってからやるようになりました。笑
――なるほど。最初はジャズをやりたかったのに、最終的にファンクをやっていた、というのも、Woodyと同じストーリーです。笑
それでは最後にゆきのさん、お願いします。

ゆきの:てらださんと同じく、当時2回生(現4回生)だったゆきのです。サックスで参加しました。親の影響で、松任谷由実や山下達郎がずっと好きで、軽音部に入ってからすごい好きになったのはBrand New Heaviesとか…最近はAimer、paris match、嵐とかも。笑
――楽器はずっとやられていたんですか?
ゆきの:小学校4年生のときに始めました。吹奏楽部があって、クラリネットやサックスもいるような部活だったので、そこでサックス担当になったのが最初です。中学と高校も吹奏楽だったので、ちょっと新しいことを始めてみようかな、と思って大学では軽音に入りました。
――なるほど、そうだったんですね。「Outro」のソロなど、素晴らしい演奏でした。
皆さま、ありがとうございます。本日はベースでJoe Dartをご担当されていたビリーさんはご都合が合わず欠席となっておりますが、6名のメンバー中、5名に集まっていただけて非常に嬉しく思います。

では…動画のバズ、そして公式による二回ものRT、本当におめでとうございます。
公式に二回もRTされたVulfpeckコピー動画は、おそらく世界初だと思います。海外の人たちからも絶賛されています。
てらだ:ありがとうございます。…恐れ多いです。好きでやっただけなので、何とも言い難いですけど…これでVulfpeckが広まっているのが嬉しいです。
――Cory Wongからもコメントが来ています。
てらだ:ビックリしましたね。
――みんな気にしているんですが、Cory WongからTシャツはもらえました?
てらだ:もらえていないんですよ、実は。笑

CoryのボーダーTシャツ。画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=rv4wf7bzfFE&t=3115s
――えええ!??
こうすけ:メールアドレスは送ってみたんですけどね。Cory側が気づいていないのか、気の利いたジョークだったのか…。
ゆきの:(メールが)弾かれてるのかもしれないですけどね。
――そうだったんですね…。世界中のVulfpeckファンのみんなが、こうすけさんにTシャツが送られてほしいと思っていると思います…。Cory気づいてほしいですね。
バンド結成・練習について
――それでは、ライブの内容について聞かせてください。どうやってあのバンドが結成されたのか、教えていただけますか?

てらだ:はい。僕らは文総(関西学院大学 文化総部軽音楽部)の中で組まれたコピーバンドで、部活動の一環でイベントに向けてバンドを結成しました。関学には軽音が9団体くらいあるんですが、文総は学内で唯一、公認の軽音で。ふだんから沢山コピーバンドを組んで練習とライブをしています。
僕がとにかくVulfpeckが大好きすぎて…。「これは絶対にやりたいな」と思って、みんなに声をかけて、Vulfpeckを聴かせていきました。メンバーの中では僕しかVulfpeckを知らなかったんで。僕はVulfpeckのライブに衝撃を受けていたので、「やるならライブを全部やりたい」と思ったのが始まりです。
――てらださんはどうやってVulfpeckを知ったんですか?
てらだ:Mr. Finish Lineが出た頃に、「Back Pocket」のミュージックビデオをYouTubeで観て、「えらい楽しい曲をやるバンドがあるもんやな」と思ったのが、Vulfpeckを知ったきっかけです。
そこから入って、ライブ動画も観てみたら、曲以上のパワーを感じまして。こんなライブ観たことない、みたいな。
当時メンバー編成もよく分からなく、「この人はドラム?え、ギター?キーボードも弾いてる!」となって。笑
その映像が面白すぎて、何回も何回も動画を観ましたね。それが「Ancienne Belgique」のライブです。


――Ancienne Belgique!あのライブ最高ですよね。バンド名を「Sleepify」にしたのも、やっぱりVulfpeckが好きだからですか?
てらだ:そうです。誰かVulfpeck好きなひとが、(僕らの)YouTubeの概要欄を見て、ニヤッとしてくれればいいなと思って。あれにさせていただきましたね。笑
――その狙いは完璧でしたね。それでは、メンバーはどうやって集めていったんでしょうか。
てらだ:最初に、やるなら「Jackは絶対にわかばやしさんがいい」とだけ思ってて。フォルム的にも、文総の中のキャラクター的にも。笑
――確かに、体形もどこか似ていらっしゃいますよね。

てらだ:だから、2回生になった時に僕は賭けてたんですよね、わかばやしさんが(当時4回生だったので、すぐに卒業して)引退しちゃうから。「2回生で絶対に成功させないとダメだ」と。笑
こうすけさんのギターも好きで、Cory Wongはこうすけさんで行こう。で、ビリーはベース上手いので、サックスもゆきのちゃん上手いので…と。各パートのエキスパートを集めさせていただいたということですね。

――なるほど!これも、本家Vulfpeckが、大学の中のエキスパートで結成されたというエピソードと見事に一致しています。👇
てらだ:でも、ピアノだけがちょっと決まっていなくて。バンドのアイデアは1回生の終わりからあったんですが、まだとうじょうが文総に入ってきていなかったんです。
そして4月になって、チャリオ(文総の中にあるジャズビックバンド)のリズムセクションの練習で、入部したばかりのとうじょうと一緒になって…試しにTee Timeを聴かせてみたんです。
そしたら好感触だったんで。しかも次の週か、その次の週くらいに、もうTee Timeを軽くコピーして、弾いてみてくれて。そこで決まりましたね。その節はありがとうございました。笑
――それはすごい。とうじょうさん、まだ大学に入ったばかりでしたが、最初にTee Timeを聴いてどう思いました?
とうじょう:むっちゃカッコいいなって思いました。笑
――よく、あの難しい両手のフレーズをすぐにコピーできましたね!
とうじょう:どうやってやったのかは忘れたんですけど、たぶんYouTubeにあった動画を参考にしたんだと思います。

――リハはどれくらいやりました?
てらだ:週1回くらいで、けっこう早くからやっていたと思います。
ゆきの:6月28日の週から集め始めていて、7月5日に、てらださんが「土曜はCory Wongします!」ってLINEをしています。(ライブは11月2日)
てらだ:とにかく早く初めて、演奏に慣れないと…パフォーマンスができないので。演奏のことはさておき、パフォーマンスのことをずっと考えてました。笑
曲の練習自体はあんまりしていないと思うんですけど、Cory Wongのギターだけになるところで、めちゃくちゃ大きい声を出す、とか。その後ステップを踏むときにどっちの足からか、とか。

てらだ:あとは逆立ちの練習を。笑


――逆立ちの練習、けっこうされました?
わかばやし:けっこうやりましたね。一ヶ月くらい。膝の皿打って、歩くのがしんどくなった時もありました。逆立ちした瞬間にポケットの中のものが全部出たり。笑
てらだ:あの頃は、ビリーと僕と3人で一緒に逆立ちしてましたもんね。朝の7時半くらいに、わかばやしさん見てたら僕らもやりたくなって。
ゆきの:ビリーが朝練に寝坊してリハができなくなって、逆立ちの練習になったときもありました。笑
てらだ:その日は朝の7時半からビリーを待ってたんですけど、来なくて。「わかばやしさん、今日は逆立ちの日にしますか」って練習してました。笑
ライブに出るための「審査」
――ライブ会場は野外でしたよね。あそこはどういった場所なんでしょうか?

てらだ:「プラザ」といって、学校の食堂と総合体育館の間にある、ちょっとした広場のようなところです。オープンキャンパスとか、昼休みとかにライブをするような場所で、文総は定期的にライブを行っています。
――「プラザ」で行われているライブ動画、たくさん拝見しました。
――Vulfpeckは文化祭のライブだったと思いますが、文総のメンバーは誰でもあそこで演奏できるんですか?
てらだ:年に2回、部内で録音による「審査」がありまして。あそこでは、審査に通ったバンドが演奏できるんです。何位でしたっけ、Vulfpeck…。
ゆきの:(資料を見て)Vulfpeck、11位でした。このときは15位まで通ってます。
てらだ:11位!?あぶな…。確かに、審査員のコメントも戸惑ってましたもんね。「ずっと一緒」みたいなコメント書かれてましたね。「展開が無さすぎる」みたいな。笑
一応、2曲出せるんですけど。その時は「Cory Wong」と「Outro」を録音して提出しました。
――同じリフの繰り返しになっている曲ですね。笑
てらだ:そうなんです。なかなか、録音では伝わりきらないですよね。笑
――上位はどんなバンドでした?
ゆきの:1位がThe Spandettesのコピーバンド、2位がLarry Carltonです。
――Larry Carlton!わかばやしさんご参加されてますよね?
わかばやし:はい、僕がバンマスやったやつです。
ゆきの:東京事変とかも。
――事変バンドの動画も上がってますね。あれもわかばやしさんでしたっけ?
わかばやし:はい。あれも僕がバンマスでした。単位を犠牲にして…。笑
てらだ:卒業できるのかも分からないのに。笑
――Vulfpeck通ってよかったですね。笑
てらだ:はい。笑

選曲・参考にした動画について
――皆さんがライブをされたのは19年の11月。Vulfpeckの有名なMadison Square Gardenライブ(MSGライブ)は、12月にようやく映像が公開されています。
なのでMSGライブは見ていないと思いますが…皆さんのライブは、結果的に、非常にMSGライブに似ています。
Tee Timeで始まって、Chromatic Walk(It Get Funkier)で終わるところや、最後の逆立ちからのジャンプなど。


てらだ:はい、MSGライブは見ていませんでした。基本的にはさっきも言った、Ancienne Belgiqueのライブを参考にしています。あればっかり見てました。
――メンバーの方々も?
てらだ:メンバーの方々はあれを観てなかったんじゃないですか?笑
ちょっとだけ動画見せて、パフォーマンスの部分とか、「こんな感じでいきますよ」とは伝えました。
――てらださんは「Dean Town」の前に「みなさん一緒に歌いましょう!」と仰っていますが、ダブリンの(ベースラインを観客が大合唱する)動画もご覧になっていますね?

てらだ:はい。ベースラインをオーディエンスが歌うのはありえない、おもろすぎるんで。ちょっとお客さんを信じて言ってみたんですけど。笑
――あれも最高でした。細かいところまでネタが詰まっていて素晴らしいです。
てらだ:ありがとうございます。笑
――選曲についてお聞きしてもいいでしょうか?
てらだ:絶対にやりたいパフォーマンスを優先させて決めました。「Cory Wong」の最初で、こうすけさんが舞台上にいなくて、袖からあのリフを弾いて登場する!っていうのをやりたくて。


それをやるためには、「Cory Wong」の前に1曲必要なんで、一番最初は「Tee Time」だ、と。「Tee Time」のPVも大好きなんで、わかばやしさんとビリーに「飲み物を持って喋っといて、よきところで手拍子して」と指示しまして。


ビリーさんとJoe Dartが完全一致!画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=iFG18LOlj-o&t=3s
てらだ:文総のコピーバンドのライブ中に、さらに別のバンドのコピーをしているバンド、というのを見たことがなかったので、「I Want You Back」もやろうと決めました。Vulfpeckだったらそれも許されるかな、と。
――その選曲も非常にVulfpeck的でしたね。Vulfpeckがやっているカヴァーとして一番有名なのが、「I Want You Back」ですから。
てらだ:「I Want You Back」をやれるんだったら、僕が歌がうまいとかへたとか関係なく、ドラムを叩いてる人が歌ってるというのを見てほしいなと思って、あそこで歌うことも決めました。
――それもTheoとまったく同じパフォーマンスですからね。


てらだ:「Outro」はサックスのゆきのちゃんをフィーチャーしたかったので。あと僕が「Outro」大好きだったので選曲しました。「Outro」は永遠に叩けますね。

――なるほど、(本家で)Joey Dosikがサックスで入る曲から選んだんですね!
てらだ:はい。一応、「Cory Wong」でこうすけさんがフィーチャーされて、「Dean Town」でビリー、「Tee Time」でとうじょう、というふうに考えて選曲しました。
――そうだったんですね…すごく練られた選曲でしたね。
ここで、ちょっとマニアックな質問をします。皆さんのライブの最後の曲は「It Get Funkier」でした。
ですが、皆さんの動画の概要欄では「Chromatic Walk」と書かれています。これは、参考にしたというAncienne Belgiqueライブの概要欄で「Chromatic Walk」と表記されているからですね。
逆立ちに向かうところの演奏も、Ancienne Belgiqueを参考にされていますよね。

とうじょうさんはあの動画で、逆立ちに向かうところでC(ド)の音を連打していますが、実はそれは参考にしたAncienne Belgiqueではやっていないプレイです。
じゃあ、どこでやっているのか言うと――なんと、未見のはずのMSGライブなんです!

MSGライブをまったく見ていないにも関わらず、MSGライブと同じプレイをしていた、というこの偶然の一致、すごすぎるのですが…何故MSGライブと同じようになったか覚えている方いらっしゃいますか?
てらだ:とうじょう覚えてる?
とうじょう:なんにも覚えてないです。笑
てらだ:なんかちょっと弾いといてとは言ったかもしれないですけど…。
――たしかに、何も弾かないとあそこは無音で寂しくなっちゃいますよね。笑
MSGライブではJackが突発的にWoodyに「Cを連打して!」って叫んでるんですけど。もしそれと同じ判断が、皆さんのライブでも行われていたなら、こんな素晴らしいことはありませんね。
衣装について
――衣装について聞かせてください。あの衣装はアイデアが素晴らしすぎます。
本家の衣装をしっかりと再現しつつ、完全に同じではない。たとえばわかばやしさんが着ていたJackの赤いTシャツの袖のラインが、実は白いテープを巻いて作られていたり。

わかばやし:あれ(白いテープを巻いたの)は結構ギリギリだったんですよ。本番始まる直前に、「とりあえずこれ巻いて」みたいな。笑
靴下はAmazonで買いました。ズボンは同期の、元サッカー部のやつに「これいらんからあげるわー」って言われて。「ああ、ありがとう!」みたいな。笑
ゆきの:あの後、部室に飾られてました。笑
――なるほど。Jackが大事にしているユーモアのセンスというのが、皆さんのバンドにも乗り移っていたように思います。本物の赤TもAmazonで売っているんですが、それを使うより、ああやって衣装を作ってしまうのが、「魂の完コピ」だと私は思います。
CoryのボーダーTシャツはどうやって用意されました?
こうすけ:あれはベースのビリーから借りましたね。ちょうとサイズがピッタリで、ピチピチ感が出たので。あと、本番中も、Coryの顔のシワをとにかく出すようにして演奏してました。笑

――ビリーさんのサングラスは?
てらだ:たぶん僕が貸したんだと思います。
――すごい、みんな貸し合ってますね。笑
ゆきの:ビリーのシャツも、後輩からの借り物で。
てらだ:あれ危なかったんよ。後輩が当日忘れて、急いで取りに帰らせて。笑

――とうじょうさんの服もWoodyの鳥のシャツからですよね?すごいよく似ていました。でも絶妙に柄が違っていて。あれは自転車の柄ですか?
とうじょう:はい、そうです。


Woodyはいつも鳥のシャツを着ている 画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=dDL5k9LpZ9w&t=380s
てらだ:ゆきのちゃんの黄色いスウェットも好評でしたね。

――あれはCoenの服ですよね?
ゆきの:そうです。本当はロサンゼルスって書いてある(Joeyの着ているレイカーズの)黄色いやつを探したんですけど、なくって。それで黄色で、近いやつを探して買いました。

てらだ:衣装もわりと早い段階で…。ギリギリで準備できなかったらシャレにならないので、早めに本家のメンバーの写真を見せて、「揃いといてください」とお願いしました。その節はありがとうございました。笑
当日の裏話
――当日の裏話があったら聞かせてください。
てらだ:あの日は、同じ場所で7バンド(ビッグバンド、ORIGINAL LOVE、World Maps、Jamiroquai、Vulfpeck、YUKI、ウルフルズの順で)ライブがあったんですけど。
直前のJamiroquaiでとうじょうが弾いてたピアノが、急に鳴らなくなって。演奏中に。
とうじょう:あの日私は5バンドで演奏したんですけど、そのほとんどでトラブルがあって、まともに弾けていなくって。ショックでした。吹奏楽だったらそういうことがないから、軽音部の洗礼かと。笑
てらだ:Tee Timeの表情はそれを引きずってますよね、完全に。笑
とうじょう:あの後もYUKIバンドで弾く予定があって…あれで終わりじゃなかったので。


Vulfpeckの直後、YUKIバンド。わかばやしさんも赤Tのうえにシャツを着て参加 画像出典https://www.youtube.com/watch?v=Ts3gpUeTP5M
てらだ:そう、あの日はわりとトラブルが多かった日だったから、不安でした。「この格好でトラブル起こってスベったら、つらいなー」とは思ってて。笑
――結果的にトラブルなく終わってよかったですね。
ゆきの:私たち、てらださんやとうじょうも、当時はヤーボ(文総の1~2回生によるライブスタッフ)を兼任しながら出演していたので。トラブルが続いていたことで、係としての責任も感じてて。ライブの時はちょっとメンタル的に大変ではあったのと…。
「録音ヤーボ」っていう、録音するスタッフもいるんですね。演奏を空気録りだけでなくて、ライン録りしてくれるスタッフなんですけど。演奏が終わって録音ヤーボの子がやってきて。「Vulfpeckのラインが録れてませんでした」って。笑
――ライン録音ないんですか!?
ゆきの:「楽しくなっちゃって録れてませんでした」って謝りにきて。笑
てらだ:ありましたねー。笑

――たしかに、ヤーボの皆さんも本当に楽しそうに見ている感じでしたものね。でも残念でしたね…じゃあ、動画にはラインの音は入ってないんですね。
ゆきの:動画はたぶん、空気録りと、録画してたビデオカメラの音声を混ぜてるんじゃないかと思います。編集してくれた人(当時の3回生)に聞かないと正確には分からないんですけれど。
てらだ:楽しすぎてね。ボタン押すの忘れてた、って。笑
あのライブ終わってOBの方から、3000円いただきましたよ。
ゆきの:ほんとに!?初めて聞いた。
てらだ:「もうこれはちょっとカネ払わしてくれ」って。まだ大事に取っておいてありますから。よきところで使っていきましょうね。笑
あと楽器のセッティング位置が、前後のバンドと違いすぎて。他のヤーボにものすごい嫌がられましたね。でも本家の楽器の位置をマネしていたので、「それだけは譲れないからカンベンしてくれ」と。笑
こうすけ:バンドが交代する、「転換」も5分でやらないといけなくて。
――5分は短いですね…ということは、結局5分では終わらなかったということですね?
てらだ:「Outro」の前にちょっとMCでもしようかと思ってたんですけど。スタッフが耳打ちしに来て。時間がすごい押してるから「とにかく早くまいてください」と。笑
――あの耳打ちが何だったのか、すごい気になってたんですよ!
てらだ:「まいてくれ」と。笑

動画を観てくれた皆さま、そしてVulfpeckへ
――それでは、前半の最後の質問になります。今回の動画は、本当に大きな反響がありました。動画を観てくれた皆さまへ、何かメッセージはございますか?
てらだ:ありがとうございます、としか、本当に言いようがないです。
ゆきの:見つけてくれて、本当にありがとうございます。
てらだ:ぜひ、Vulfpeckを、いっぱい聴いていただいて。また聴いたうえで戻ってきてくれたら、嬉しいですね。笑
わりと好きなひとにしか分からんようなことばっかり、盛り込ませてもらったので。ひととおりVulfpeckを一周して、戻ってきて、ニヤニヤしてもらったら嬉しいです。
――素晴らしい、完璧なメッセージです。では…Vulfpeckにメッセージはありますか?
わかばやし:「Tシャツください」って。言っておけばいいんじゃない。笑
ゆきの:Tシャツ待ってます、って。笑
てらだ:そうですね。ありがとうございました。笑
――そうですね、CoryTシャツよこせって。ありがとうございます。笑
それでは後半は皆さんの部活、文総について、詳しくお聞かせいただければと思います!👇

画像提供:「Sleepify」、文化総部軽音楽Twitter、HP(https://twitter.com/KGLMC https://kglmchp.wixsite.com/kglmc) / 無記載スクリーンショット:https://www.youtube.com/watch?v=9-OfK_Gru_A、https://www.youtube.com/watch?v=dDL5k9LpZ9w&t=380s
◆著者◆
Dr.ファンクシッテルー

宇宙からやってきたファンク研究家、音楽ライター。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。
◇既刊情報◇
バンド公認のVulfpeck解説書籍
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