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sirasagijyousyu
【親友回顧録】幸運なり我が人生 ⑤
奇跡は起こるものであり、案外と起こる。
ジヨンとの出会いはまさに人生最大の奇跡であった。隣に座っても、ずっと静かに黙っていられる相手がジヨンという存在だ。ちょうどムーミンとスナフキンのように、いつも近くにいるわけではないのだけれど、いつも自分の心が相手のすぐそばにある。人生100年世代とはいえ、100人の友達は出来ない(知り合いは出来ると思う)この人生で、出会わなかったら人生無意味と言いたくなるような親友を得たのだから。ジヨンの存在ゆえに、わたしは「奇跡は起こる」のは真実であり事実であると思っている。
ところが、奇跡を意図的に「起こす」というのは文字通り神業。人間のなせる業ではない。ジヨンにも、わたしにも、出来ないことだ。待っているからといって起こるものでもないが、奇跡に起こってもらうのを待つのみである。
ジヨンとわたしの間には、見えない架け橋があったのだろう。それは、わたしたちの経験した奇跡の続きなのだろう。ーー昨夜の夢で、彼女に会った。
わたしが思わず息を呑み、目を疑ったのは言うまでもない(そうはいっても夢の中)。訃報を受けてから一度も夢に出てこなかった。いつ出てくるんだろうって、ずっとずっと待っていたんだよ。
「ジヨン、生きてるの?」
歩み寄ったわたしにジヨンは不思議そうな顔で聞く。
「わたし、もう生きていないの?」
自分の命の火が消えたことを、ジヨンは知らなかった。
わたしも、もしかしたらジヨンの旅立ちは何かの間違いだったんじゃないかと思い始めた。
「きっと、ジヨンがここに居ることの方が、本当だと思う」
そう言って肩に回した手に力を込めた。離れないように、離れないように、終わらないように、終わらないように…と。