動きを止める
「カエルの声、聞こえる?」
子どもたちに声をかけると静かになりました。
空中を見つめ、耳を澄ましています。
わたしの耳には田んぼで鳴くカエルの合唱が聞こえた(ような気がした)
のですが、子どもたちは数秒間の沈黙の後「何も聞こえないよ」と
遊びに戻っていきました。
あんなに大騒ぎして遊んでいた三人の子どもたち。
カエルの声を聞こうとピタっと動きを止め、シーンとなりました。
すごいな、知ってるんだな。小さな音、遠くの音を聞くためには
こちらの動きを止め、音をたてないようにしないと聞こえないってこと。
ことが飛躍しますが、この子たちはきっと声なき声に耳を傾けることが出来る人間になるだろうな、とわたしは安堵したのでした。
雲の流れ、風の温度、雨の降り具合、虫や動物の様子を観察するには、わたしたちの方で動きを止め、時には息を殺してまなざしを向けないといけません。その「動きを止める」を無意識にできるのって人間として非常に優れた能力だと思います。気持ちの底の方で「わかりたい」と願ってこそ、出来ることだから。その「わかりたい」が折り重なって、相手への愛が表現される。そんな風におおげさなことを考えた、雨続きの春のひと時でした。