#6 企業のサステナビリティ評価~中小企業の付き合い方~
こんにちは、GTです。
今回は企業のサステナビリティ評価に関する記事です。
サステナビリティを含む企業の評価、格付けは様々な機関が行っていますが、ここではCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)というものを取り扱います。
そもそもCDPとは何なのか、中小企業はCDPとどのように付き合っていくのがよいかということについて書いていきます。
CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは
CDPはCarbon Disclosure Projectの略称ですが、具体的に何かと言うと組織の名称で、英国のNGO(非政府組織)です。
世界の大企業を中心に毎年サステナビリティに関する質問書を送って回答を求める形で、企業のサステナビリティ情報開示を促しています。
ちなみにサステナビリティと一口に言っても様々な分野がありますが、CDPでは気候変動、水、森林の3分野を主な対象としています。
企業からの回答は定められた基準でスコア化され、スコアに応じたランク付けが行われていて、評価結果として回答したすべての企業のランクが公開されています。
ランクは最高のAから最低のD-までと評価不可能であるFの9段階があり、世界で2万社を超える企業が回答していますが最高のA評価を取れているのはわずか数%と非常に狭き門です。
皆さんも知っているような著名な企業の多くはこのランクをできるだけ上げようとして毎年やっきになって回答内容を考えて作っていたりします。
尚、冒頭に書いたようにCDPとは本来は組織の名称ですが、質問書への回答やランク付けによる評価までの総称を指して使われていることも多いです。
中小企業のCDPとの付き合い方
ここまでCDPについて大まかに説明してきましたが、すべての企業が質問書に回答しなければいけないわけではなく、言ってしまえばNGOの活動なので義務も法的拘束力もありません。
質問書に回答している企業はCDPから質問書に回答するよう要請されたか、または自主的に回答すると決めた企業ですが、回答することのメリットや回答しないことのデメリットで判断していて、主な判断基準は投資家からの評価です。
投資家はCDPの評価結果を投資判断の基準の1つとしていて、CDPに回答しなかったり評価が低い企業はサステナビリティへの対応をおろそかにしていると思われて投資対象から外される可能性があるわけです。
では、CDPから回答を要請されておらず、非上場で投資家のことを気にしなくていいような中小企業は回答する必要性やメリットはないのでしょうか。
それに対しては、差別化のために中小企業もできるなら回答するのがいいというのが私の考えです。
ちなみに、今年から新たにSME版という中小企業を対象にした質問書の内容が設定されました。
(SMEはSmall and Medium-sized Enterprisesの略称で、中小企業の意味です)
ここからは中小企業もCDPの回答を行うのがいいと考える理由を2つの観点で見ていきます。
サプライチェーンの観点
まずはサプライチェーンの観点での理由です。
地球温暖化の対策として、自社のCO2排出量ゼロを目指すだけでなく、サプライチェーンを含めたCO2排出量ゼロを目指す動きが近年多くなっています。
例えばAppleはサプライヤーに対して、2030年までに自社で使用する電力によるCO2排出量をゼロにするように要請しています。
Appleの例は極端な話だとしても、サプライヤーにもCO2排出量削減を求める動きは今後多くなってくるでしょう。
そして、CDPでも「CDPサプライチェーン」というプログラムで、企業がサプライヤーに対して質問書への回答を要請できる仕組みがあり、実際に運用されています。
カーボンニュートラルという大きな目標に向けてこうした動きがある以上、この動きが進むことはあっても止まることはないでしょう。
CO2削減の取組や情報開示の有無が取引条件や購買決定要因になっていくことを考えると、今のうちからCDPの回答という形でこういう動きに乗っておくことができれば、同じ中小企業の競合他社と差別化できる可能性もあるのではないかと思います。
人材採用の観点
次に人材採用の観点での理由です。
数年前からSDGsやエシカルといった言葉が世間に出回るようになり、環境問題や社会問題に対する意識がより幅広い層に浸透してきました。
それは就職活動を控える大学生も例外ではなく、「エシカル就活」という言葉も一定の市民権を得ているようです。
この記事にもありますが、就活生のSDGsの認知度は上がっていて今やその言葉を知らない人はほとんどいないレベルになっています。
そして、企業のSDGsの取組が志望度に影響する割合が約4割いて、決して無視はできない数字だと思います。
就活生が企業のSDGsの取組を把握するには企業側が情報をオープンにする必要がありますが、そのためには当然ながらオープンにする情報として実際の取組が必要です。
その点で今回のCDPの回答の利用価値が高いんじゃないかと思います。
中小企業の方々とお話する機会がありますが、いろんな経営課題がありすぎてSDGsの取組をする余裕がなかったり、CO2排出量の計算の仕方を知らない、という場合も少なくありません。
中小企業が全体的にそんな状況下にあるからこそ、率先してCDPの回答の取組を行うことは採用の面でも他の中小企業との差別化に繋がるのではと思います。
しかもCDPのSME版(中小企業版)は今年が1回目。「CDPのSME版に1回目から回答しています」というメッセージは年月が経つにつれてかなり力強いものになるんじゃないでしょうか。
歴史を味方につけることは、他の企業が逆立ちしても真似できない差別化要素にできるので。
実際に、さっそくCDPのSME版に回答することをコミットした企業がありました。
応援の意味も込めてリンクを貼っておきます。
中小企業の経営者の方々は収益や人材、資金繰りなど、挙げればキリがないほどの問題に日々頭を悩まされているものと思います。
もし社内に少しでも割けるリソースがあれば、CDPのSME版への回答を考えてみてはいかがでしょうか。
(ちなみに、9月18日が回答期限なので期間的な余裕はあまり多くはないですが。。。)
ではでは、また次回お会いしましょう。