#25 日本で始まっていく排出量取引制度~CO2に対する課金を考える~
こんにちは、GTです。
今回は今後始まる排出量取引制度について書きたいと思います。
まず排出量取引制度についてざっくり話すと、企業が出していいCO2排出量を決めて、それを超える排出量についてはお金を払ってもらうというものです。
広い意味だと「カーボンプライシング」と呼ばれていて、排出量取引はその一種です。他のカーボンプライシングには例えば炭素税があって、日本でも既に炭素税は2012年から導入されています。
今回取り上げる排出量取引制度は日本で既に一部試行されているところはありますが、2026年度から本格的に開始される予定です。まさにその制度設計を政府が検討している段階です。
なぜこういう制度が作られようとしているかというと、カーボンニュートラルに向けて企業の取り組みを進めるためです。企業はカーボンニュートラルの目標を設定してCO2を減らす取り組みを進めている状況ではあるものの、コストがかかる取り組みは進みにくく、取り組みが十分でないことでの不利益は特にないのが現状です。
そんな状況を打破するためにCO2排出量にお金を課して、取り組みをしないと利益が減るという仕組みで経済合理性がある状況をつくろうとしています。
制度設計の論点としてはいくつかありますが、その一つに冒頭で書いた「企業が出していいCO2排出量」をどう決めるかがあります。
決め方としては大きく2つ、業界の上位を基準にする「ベンチマーク方式」と過去の排出実績を基準にする「グランドファザリング方式」です。それぞれの方式には課題があり、ベンチマーク方式では同じ業界といっても単純に比較できなかったり、「グランドファザリング方式」では過去から削減努力をしてきた企業が損をしたりということがあります。
これらの課題も踏まえつつ、どちらの方法がベストなのか議論されながら制度が固まっていくことになります。ただ、どちらの方法でも良し悪しは企業や業界によって分かれるので、一概にどちらがいいとは言えず、各業界のロビー活動にも影響されながら落としどころを探っていくことになるでしょう。
ここで個人的な意見を言えば、省エネ法に基づいて設定するというのが考え方としてはあるんじゃないかと思います。省エネ法ではエネルギー消費原単位を年平均1%削減する努力目標が定められていたり、業界によってはベンチマークが設定されていて、企業はそれに必要な取り組みを推進することになっています。
制度設計をするにあたっては、なぜそのような制度設計にしたのか合理的な説明が必要になりますが、省エネ法を基にすると法的根拠もある内容なので合理的且つ反論もしにくく、ほとんどの企業も納得できるものではないかと思います。
ただし、その場合の課題としてあるのは、カーボンニュートラルを実現できるレベルの排出量設定ではないということです。毎年1%削減していったとしても、30年経っても3割弱くらいしか削減できません。日本のカーボンニュートラル目標は2050年なので、ギャップとしては大きいです。
それでも初めの数年間など期間を区切って一度始めて、その後で段階的に厳しくしていけばよいのではと思います。日本の風潮として根強くあると感じてますが、最初に決めたことをずっと貫き通す必要はなくて、途中で見直していくのは当然あるべきでしょう。実際にヨーロッパもクリーンなエネルギーは再生可能エネルギーだけだ!なんて言っておきながら天然ガスや原子力もクリーンなエネルギーということにしようと大きく前言撤回、方向転換をしたりしています。
カーボンニュートラルに向けて世界と競っていく上でも、日本もこういう柔軟さを持ちながらクイックに始めて途中で見直すというやり方をしてもいいんじゃないかなと思っています。
ではでは、また次回お会いしましょう。
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