#29 IUU漁業の問題から購買行動を考える
こんにちは、GTです。
今回は漁業の闇の部分から私たちがどのような購買行動をすればよいか考えていきたいと思います。
IUU漁業の問題
漁業の闇として、「IUU漁業」という問題が取り沙汰されています。
IUUとは、違法、無報告、無規制の頭文字をとったもので、漁獲量が定められているのにそれを無視して魚を捕ったり、虚偽の漁獲量を報告するといったものです。
このIUU漁業が与えるインパクトは大きく、IUU漁業による世界の漁獲量は金額換算で1兆円を超えると言われています。これは日本の漁獲生産量とほぼ同じです。
その日本も他人事ではなく、輸入する天然水産物の3割前後がIUU漁業によるものと言われています。ちなみに日本の水産物の食糧自給率は50~60%なので、日本で流通している水産物の1~2割くらいがIUU漁業によるものかもしれません。
日本のIUU漁業対策
日本のIUU漁業への対策として法整備が行われ、「水産流通適正化法」という法律が2022年から施行されました。この法律では魚が適法に獲られ、運ばれたことの証明が義務付けられていて、IUU漁業による水産物を国内に流通させないための水際対策の位置づけです。
ただし現段階ではまだ限界があって、この法律の対象となっている水産物はサンマ、イカ、サバ、マイワシの4種で、日本が輸入している水産物のごく一部に留まっています。なので、この法律の対象とする水産物が今後どこまで広がるかが日本でのIUU漁業の規制のポイントの1つになります。
IUU漁業での人権侵害
IUU漁業の問題としては、水産資源の管理ができなくなり資源量が減るということがありますが、他の問題として人権侵害も大きくクローズアップされています。
人権侵害が深刻と言われているケースの1つが台湾のマグロ漁です。
スーパーや飲食店でマグロを目にする機会は多いですが、その半分は輸入されたもので、台湾は主要な輸入国です。
その台湾のマグロ漁での人権侵害が問題視されています。乗組員への暴力や不当労働や適正な賃金が支払われないといった事案であったり、最悪の場合は乗組員が死亡するという状況が発生しています。
魚介類の購買決定要因をどうするか
店によってはマグロの価格がかなり安いところがあり、そういうのを見ると「マグロってこんなに安く提供できるものなんだ」と思うことがあります。
もちろんそれが人権侵害などのIUU漁業によるものかどうかはわかりませんし、提供している人たち自身もそれがIUU漁業によるものかどうかを把握できないという状況もあるでしょう。
台湾のマグロに限らず、目の前の魚介類がIUU漁業によるものかもしれない、そして人権侵害の上で成り立っている価格なのかもしれないという中で、魚介類の購入をどのように判断するのがよいかは悩ましい問題だと思います。
仮に人権侵害が行われたIUU漁業由来の水産物であるとわかっているとして、それを買うことでさらに漁業の人権侵害を助長することになる一方で、買わないことで人権侵害を受けている不当な労働とは言え職がなくなって更に生活に困るかもしれない、というジレンマがありそうな気がします。
そんなジレンマも感じる中で私が考える購買決定要因は、「市場のルールを守っていないかもしれないものは買わない」というものです。
IUU漁業由来のものを買わないことで人権侵害を受けている人たちが職を失い更に困る状況があったとして、IUU漁業由来のものを買うことで困る人もいて、それはきちんと市場のルールを守ってビジネスをしている人たちです。
なぜIUU漁業が横行しているかというと、それをすることで儲けられるからです。
漁獲量を好きなように増やすことで流通量も増えて価格も下がるので更に多く売れる、正当な賃金を払わないことで価格を下げることができて多く確実に売れるようになる。
こうすることでルールを守っている人たちよりも(当然不当な形で)競争優位を築くことができます。
ここには明確にNOを示さないといけないと思います。
上にも書いたように、目の前の魚介類がIUU漁業によるものなのかどうかはわかりませんが、付けられている価格に少しでも違和感を感じたら買わないという判断があるでしょう。
IUU漁業に限らず、値段が相場と比べて安いものは流通過程の中で誰かが我慢を強いられている場合が多いのではと思います。流通に携わる人たちが適正な対価を得られるように、消費者の私たちができるところから購買行動を変えていくというのが地道ながら確実なアプローチではないでしょうか。
ではでは、また次回お会いしましょう。