まさ(精神科医)

精神科専攻医 専門医試験を受けるに当たり、この年次で得た考えを吐き出してみようとしてます

まさ(精神科医)

精神科専攻医 専門医試験を受けるに当たり、この年次で得た考えを吐き出してみようとしてます

最近の記事

看護師に嫌われてしまわないためにできることはありや 精神科専攻医の徒然草9

◯看護師と上手くやる方法なんて習ってことなんかないのに上手くやることを求められて辛い  医療はチームでやるものなのでスタッフとの関係性が悪いと非常に仕事がしにくいし、コミュニケーションが滞れば医療事故が発生してしまうリスクも高まる。それほど重要なのに我々はチーム医療の具体的な実践方法を学ぶ機会が乏しい。  私は元々デリカシーのかけらも無いような人間ではあったのだが幸いにして人間関係に恵まれ、技術として色々と学んだため今回はそれを共有してみたい。 ◯仕事というものの位置付け

    • 不倫とメンタルヘルス 精神科専攻医の徒然草8

      ◯不倫している人も精神科外来には来るわけで  精神科の患者には誰かと不倫関係にある者も一定数いる。精神科の診察は患者の生活状況を聞き取って病態を把握する必要があるため、誰それと不倫関係にあるんですという話を患者から聞いてしまうことはそれなりにあるわけだ。もちろん我々精神科医が患者に対して、その不倫関係について何らかの評価を与えたりコメントを加えるときは、世間一般の価値観からではなく、必ず精神医学的な視点に立って行われる。つまり、現在の精神症状等を鑑み、主治医の立場でする発言

      • パンを焼く暇もない地域医療の惨状 精神科専攻医の徒然草7

        〇「パン焼いてました」はダメなの?  SNSは日がな一日様々な話題での批判が飛び交っている。全く暇な人たちだ。そんな風にSNSに他者批判を垂れ流すことに忙しい人たちがいるかと思えば、緊急で呼ばれる当番の医師のバックアップ当番の時にパンを焼くことさえできない医師もいるようだ。  夜間に対応をお願いされたのにパンごときで遅れやがってと怒られてはたまったものではないのだが、このエピソードとその後の炎上に私は地域医療の惨状がよく表れているものと見た。 〇地域医療はとっくに崩壊して

        • 子が親を選べないのはこの世の理です 精神科専攻医の徒然草6

          ◯親子愛という幻想  「親が子を想い、子が親を想う」というのは道徳の教科書にすら今どき載らないありふれたコピーであり、世間では更に「子どもは自分で生まれる家庭を選んで生まれてきた」なんて妄言まで聞こえるところだが、実際は子どもの側は一切親を選ぶことはできない。親どころか自身の周りの環境一つさえ、自分の意思だけで選ぶことなんかできやしないのが子どもである。親子というのは親ガチャなんて言葉でさえ生ぬるい、予期せぬ衝突事故の当事者同士に近い哀れな同席者に過ぎないのだから、親子愛があ

        看護師に嫌われてしまわないためにできることはありや 精神科専攻医の徒然草9

          結局カルテって結局何書けばいいのよ!? 精神科専攻医の徒然草5

          ◯カルテの書き方なんか決まっちょらんばい  その精神科医の臨床能力がどの程度かを知るにはカルテを見るのも一つのようだ。人の精神症状という曖昧なものをどう言語化して捉えられるか、そこからどのような治療方針を立てるのか、精神科臨床は意外にも非常に論理的な思考プロセスを経て行われるため、効果的な診療ができていれば自ずと説得力のある論理的なカルテを記載することができる。  とはいえ具体的にどのようにカルテを書けば良いのかというのは常に悩ましい。しっかり書こうとすると冗長で読みにくくな

          結局カルテって結局何書けばいいのよ!? 精神科専攻医の徒然草5

          傾聴と共感と必殺の一撃を叩き込むこと、そんな精神療法 精神科専攻医の徒然草4

          ◯精神科を訪れる人々  精神科を受診する人は様々な困り事を抱えてやってくることが常である。もちろん中には本人は全く病識や病感がない場合も多いが、その場合でも家族なり支援者なりが困って何とか本人を連れて受診に至る。そのような病める患者と接するのに重要な姿勢とは「傾聴と共感」であると我々は医学生時代から何度も教育されてきた。  しかしこれは「うつ病患者に頑張れと言ってはいけない」というレベルのごく初歩的な題目に過ぎない。うつ病患者であっても治療が進んだタイミングでは本人が踏ん張っ

          傾聴と共感と必殺の一撃を叩き込むこと、そんな精神療法 精神科専攻医の徒然草4

          斜陽地域の没落を看取る 精神科専攻医の徒然草3

          〇無限の精神力で以て臨むしかない地域の現状  いくつかの病院で勤務経験のある医師ならわかるように、「地域性」とでも言うのかその地域ごとによって様々な特徴がある。それは産業だったり歴史だったり人柄だったりと様々で、各地域も精一杯PRに励んでいる。  現在関東圏では医師の供給過多を危惧されているようだが、ほとんどの都道府県においてはやはり医師は慢性的に不足しており、私もそのような慢性的な医師不足の環境で身を粉にして働いているつもりだ(ちなみにR5年度の休日を数えてみると40日/年

          斜陽地域の没落を看取る 精神科専攻医の徒然草3

          怒鳴る患者・家族への対応 場数踏んで慣れろ 精神科専攻医の徒然草2

          ◯キレることが正当化されてたまるか  医者をやっていると患者や家族に怒鳴られることも多いし、まして精神科は他の科よりもその機会は多いかもしれない。若手のうちは特にそうで、単に若いからだったり、業務に不慣れでつい礼儀を欠いてしまうこともある。それでも不意に怒鳴られると落ち込んでしまうし惨めな気分になってしまうので、できれば上手な対応ができるようになっておきたいところである。  クレーム対応について学び始めてまず出会うのはクレームの裏にある心理的な訴えに耳を傾けようという考えであ

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          精神科の勉強のしにくさ 精神科専攻医の徒然草1

          ◯初学者が躓くポイントなんか決まってらぁ  学生や初期研修医にとって精神科は非常に勉強がしにくい。医局の専攻医においてはとにかく上から与えられた業務に食らいついていけば自然に知識がまとまっていくので良いが、学生が自分らだけで学ぼうとしてもこれはなかなか難しい。例えば「気分の落ち込み」一つ取ってもうつ病なのか適応障害なのか情緒障害なのかそれぞれの違いがよくわからない。実習場面でも、学生が感じた見立てと実際の診断が大きく異なる。慌てて教科書や国家試験対策の精神科講座を見てもそれぞ

          精神科の勉強のしにくさ 精神科専攻医の徒然草1

          精神科専攻医の徒然草 0 自己紹介

           現在私は卒後5年が終わり6年目に入る年次、つまり専門医・指定医レポートを書いている最中の時期です。書かなきゃいけないレポートを書くにはその何倍もの「今書かなくても良いもの」が必要なので徒然なるままに精神科診療で思うことについて色々書いてみようと思います。  誰に対してよりもレポートからの逃避に過ぎないので杜撰な内容になるかもしれませんが、他の精神科専攻医や精神科志望の研修医・学生、精神科医療に興味のある一般の人に向けるつもりで書き連ねてみます。  文豪でもない自分には青臭

          精神科専攻医の徒然草 0 自己紹介