見出し画像

ヒッチハイクした人だけが知っている感情


皆さんこんにちは。

皆さんはヒッチハイクをしたことがありますか?

きっとほとんどの人がないですよね。具体的なデータを調べて見たのですが、「ヒッチハイクをしたことがある人の割合」なんて出てくるわけもありませんでした。

私の人生の体感的には、1%未満であることは確実だと思います。

世の中の人間の100人に1人未満の人しか経験したことがない、ヒッチハイクという抜きん出たアクティビティ。

全く知らない人に声をかけ、目的地まで車に乗せて貰う。犯罪に巻き込まれる恐怖はもちろん、そもそも何を話せばいいか分からない、気まずくなってしまうかもしれない、他人の車に乗って何が楽しいのか分からない、そんな感情が普通でしょう。

私もそう思っていましたが、学生の時にひょんなことからヒッチハイクに熱中しました。

そこで経験した感情というのは、アラサーまで生きてきた人生の中で振り返っても、極めて特殊な感情だったなと、そう思うのです。

そこで、今回は「(おそらく)ヒッチハイクを経験した人だけしかしらない感情」について、以下の順番でお話します。


そもそもなぜヒッチハイクをしたのか

そもそも私はなぜヒッチハイクに熱中するに至ったかというと、絶望していた学生生活の渇きを埋めるため、という理由からでした。

当時大学2年生だった私は、順調だった高校生活とは一変し、友達の輪も広がらず恋人もいない、好きな勉強をしているはずなのに只々教授の話を一方的に聞く講義の毎日、挙げ句の果てにはバイトでミスを連発するという散々な毎日でした。

思い描いていた理想のキャンパスライフとは程遠い、そんな焦りと実感が常にありました。

そんな時に何かを変えたい、今までとは全く違った経験をしたい、昔から行動力だけあった私はネットでヒッチハイクに関する記事をたまたま見つけ、何の迷いもなく実行しました。

とはいえ最初は1人で行う勇気がなく、高校時代の友人を誘いました。彼も新しい体験に飢えており、直ぐに賛同してくれました。

ヒッチハイクという未知の体験を通して、日々の絶望を埋め合わせたい、自分の殻を破りたい、いわゆる大学生の自分探しというやつなのでしょう。

時間はあるけどお金はない、そんな大学生という存在の受け皿にヒッチハイクは適していたのです。

どんなヒッチハイクをしていたのか

私が主にしていたヒッチハイクは、東京から東北方面を目指して常磐自動車道を北上するというものです。

埼玉県の川口市からスタートし、次の目的地を書いたスケッチブックを掲げ道端でひたすら車を待ちます。

平均2時間程度で止まってくれるドライバーがおり、5〜6回乗り継げば、宮城県仙台市に到着します。

さらにそこから東北自動車道に乗り継ぎ、青森県青森市を目指して5〜6回乗り継ぎます。

感覚的には1日で青森に到達すればかなり良く、基本的には仙台で一泊することになります。

中々車が止まってくれない時はサービスエリアで休憩しつつ、車に乗せてもらった時にはドライバーや助手席の皆さんと沢山色んなお話をします。

乗せてくれた時や、目的地にたどり着いた時は達成感が凄いです。

基本的には総行程で3〜4日掛かるので、大学の授業がない長期休みに行きますが、講義をサボっていくときもありました。

代わりに出席シートを出してもらうように頼んだ友人は私を裏切り、「ヒッチハイクに行っているため欠席します」と私の名前で書いて提出しました。

その講義は残念ながら落第しました。

ヒッチハイクで楽しいポイント

そんなヒッチハイクですが、普段の日常では味わえない楽しい瞬間が沢山あります。

列挙すると、以下の通りかなと思います。

・絶対に出会えなかった人たちと出会える
・今しかない出会いに感謝できる
・人の優しさを感じられる
・自己肯定感が上がる

絶対に出会えなかった人たちと出会える

ヒッチハイクをしていると、普段通り生きていたら絶対に出会うことが出来なかった人たちと出会うことが出来ます。

栃木でみかん農家をしているご夫婦、福島の賑やかな大家族、青森の強面トラック運転手、皆さんヒッチハイクをしなければ一生のうちで話す機会すらなかったであろう人たちです。

世の中にこんなに素敵な人たちが沢山いるんだ、と改めて知り、それぞれの人たちの人生ドラマを聞いていると、消化してもしきれない、世の中という者が自分に正面を向いて近づいてきて、肩を揺さぶっているようなそんな物理的な感覚を覚えたように思います。

今しかない出会いに感謝できる

出会った人たちとは、あえてこちらから連絡先を交換することはしません。

ヒッチハイクは、一期一会と割り切ってその瞬間を楽しもうという、暗黙の共通認識のようなものがあると思いますし、お互いのプライバシーに干渉しすぎても良いことはないと思います。

だからこそ、その2時間3時間、一生に一度しか会えないであろう目の前の人と、全身全霊を傾けて真剣に、そして濃密な会話が出来ます。

ヒッチハイクで出会う方々は、皆さん自分の人生観を教えてくれますが、それはヒッチハイクの出会いという特殊な状況が、自然と深い話を引き出しているのだと思います。

人の優しさを感じられる

普通、見ず知らずの他人を車に乗せてあげるなんてこと、しませんよね。

こちらから声をかけても断られるのが普通で、だからこそ

「頑張っているから」
「いい人そうだから」
「疲れてるようで可愛そうだったから」


そんな言葉をかけて車に乗せてくれる人がいると、心が温かくなります。大変なことをしているからこそ、より人の優しさが身に染みます。

何時間も乗せてくれる人が見つからなかった時に、缶コーヒーを差し入れてくれたお兄さん、お菓子をくれたご家族、皆さんの優しさは絶対に忘れません。

自己肯定感が上がる

ヒッチハイクは大変ですが、諦めずに一日中声をかけ続けて、沢山の人に出会い、自分たちの体だけで遠くの土地に辿り着くと、やればできるんだ、行動して良かったという感覚を得られます。

その高揚感はとてつもないですし、カプセルホテルで過ごす夜は人生屈指の深さで眠れます。

自分の勇気と行動で大変なことを成し遂げるという、分かりやすい成功体験になり、自己肯定感が上がります。

ヒッチハイクで苦痛なポイント

逆に当然ながら、ヒッチハイクには辛い瞬間も沢山あります。

・誰も止まってくれない中、何時間も立ち続ける
・好奇の目に晒される
・とてつもなく疲れる

誰も止まってくれない中、何時間も立ち続ける

基本的に、普通の人というのは見ず知らずの人間を車に乗せません。

少し乗せてみようかな、と思ってくれてもその内の10人に9人は
時間的にどうしても余裕がない、車に余白のスペースがない、車の中が散らかっていて他人に見せられる状態じゃない、そんな具体的な理由が原因で断念します。

乗せてあげたいとは思ってるんだけど、ごめん!

ヒッチハイクを本気ですれば、この言葉を1日に軽く100回くらいは聞くことになると思います。

精神的な疲労もしかり、単純に立ち続け、声をかけ続ける肉体的疲労もかなりのもので、クリスマス時期のディズニー帰りの人もびっくりするくらい疲れます。

好奇の目に晒される

ヒッチハイクをしている人を見たら、あなたはなんて思いますか?

"北に行きたいです"と書いてあるスケッチブックを掲げながらキラキラした瞳で通行人を見つめる学生二人を見つけたらあなたはなんて思いますか?

うわあ、若いなあ…

そう思いますよね?それが普通だと思います。

そういう「いかにも自分探しみたいな行為を本当に恥ずかしげもなくしている人がいる」という目線に晒され続けることになりますし、人によっては直接指を指して、「見ろよあれ」なんて言葉をかけられます。

もちろん、それでも優しい人たちが沢山いるので何とかやっていけましたし、正直人の目も半日すれば何も気にならなくなります。

ヒッチハイクをする上ではこの好奇の目は避けられません。

とてつもなく疲れる

一日中立ち続け、沢山の人と話し、常に濃密な時間を使い続けるヒッチハイクは、当然のことながら想像を絶するくらい疲れます。

私は今までの人生で、24時間をぶっ通しで歩いたり、フルマラソンに出たりしていますが、このヒッチハイクの方がきつかったとすら思います。

実際に目的地に着いてから疲労で発熱し、友人に迷惑をかけてしまったこともあります。

本当に全身から湯気が出そうなほど疲れるので、私は何度か目眩を起こしていました笑
(友人はそれほどではなかったらしいので、人によりそうです)

揺らめく感情

お伝えしているように、ヒッチハイクは非常に濃密で特殊なアクティビティであり、感情のジェットコースターを経験することになります。

ヒッチハイクを始める瞬間の高揚感、不安、期待、心ない言葉や好奇の視線に対する焦燥感、怒り、人の優しさに対する感謝、幸福感、人の人生に触れることで知る未来への希望、人生というものに対する渇望が、内から湧き出てきます。

FUJIYAMAと、ええじゃないかと、スペース・マウンテンとタワー・オブ・テラーを掛け合わせた心躍るローリング・感情エンターテインメント、それがヒッチハイクなのです。

は?

(おそらく)ヒッチハイクを経験した人だけしか知っている感情

そんなヒッチハイクの経験を振り返ってみると、ヒッチハイクでしか経験できない感情がいくつかあったことに気がつきました。

より正確に言うと、私の人生の中で、ヒッチハイクを熱中していた時にだけ感じていた感情、学びがあるということです。

・恥ずかしさは、驚くほどすぐに慣れる
・赤の他人は想像以上に優しい
・日本は思ったより広い
・お金では買えないものが世の中には沢山ある
・コミュニケーション能力は、場数がほぼ全て

上記に加え、最も重要な学びは






「トイレに行きたいけど、寄ってくれなんて図々しくて言えねえ!!!
漏れる!!!!!!!
漏れ.………、あ……………、アブねえ!!!!」


という気持ちを知ることが出来ることです。

膀胱炎は極めて危険な病気なので、皆さんも気をつけて下さい。



今日も良い日にしたいですね。
皆さんも良い年末をお過ごし下さい。

アフロ早乙女


いいなと思ったら応援しよう!