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組織コーチングに最適なメソッド:AI(Appreciative Inquiry:価値を認める探求)を知ってますか?

こんにちは。つっつー(堤 藤成)です。

オランダからフルリモートでスタートアップに勤務する傍ら、最近はクリエイティブ・コーチとしても活動しています。

本日は組織コーチングに最適な手法についてお伝えしたいと思います。この手法に関しては私がマレーシアのMBA時代に組織変革「チェンジ・マネジメント」の講義で習った手法であり、当時はあまりコーチングの文脈とつなげて考えたことはなかったのですが、コーチングを学んだ今、この手法は改めて「組織コーチング」と相性が良いメソッドであると感じます。それは、AIもしくは4Dモデルと呼ばれる手法です。この手法は個人の内省を促すコーチングとしても機能しますし、大規模な組織コーチング的なワークショップでも使える手法です。ではこの手法を紹介する前に、まずはいわゆる一般的な「問題解決アプローチ」の何が問題なのか、から考えてみたいと思います。

「問題解決」思考の問題点

第1ステップ:「問題」探し→自己肯定感を下げる

普段チームで打ち合わせを行う際は、「課題は何か」から話題は始まります。つまり自分のできていない点やチームの問題点など、ダメな所に向き合うことから始まるのです。つまり、ダメな部分に目を向けることで、いきなりネガティブ思考に陥り、自己肯定感が下がります。つまり「問題解決思考」が向き合うのは、失敗体験・負けパターン・弱みです。自らの傷をえぐりながら、できていないところを語っていると、どんどん卑屈な自分になり、自分が出来損ないの人間、最悪なチームに思えてきてしまいます。

第2ステップ:「原因」探し→チームの雰囲気が悪化

続いて問題を発見したら、次は「その問題が起きた原因は何か?」についてさらに探っていくことになります。ここで起きてくるのは「犯人探し」です。「あの人がきちんと役割をはたしてくれなかったらこのプロジェクトは失敗した」とか、「そもそも時間や予算が足りなかった」「あいつには力不足だった」といったように、失敗の原因を他人に押し付ける思考が働きます。直接避難しなかったとしても、頭の中では自分以外の誰かを犯人に仕立て上げてしまい、チームの雰囲気がギクシャクします。また必要以上に自責の念に駆られてしまう人もいて、それはそれで場が暗く悲壮感が漂ってきます。またこうした原因探しのフェーズにおいては、チームの人間関係が悪化し、心理的安全性が担保されず、互いに愚痴と批判が飛び交う状況が生まれてしまうのです。

第3ステップ:解決手法の検討→小さな改善に留まる

こうして自己肯定感が低く、疑心暗鬼になったメンバーたちは思考も硬直しています。そのため、大体なアイデアを考えられる心理状況ではなくなっています。また仮に突飛なアイデアを出してまた批判されたり、失敗してしまったら、今度は自分が次の「犯人」として糾弾されてしまいます。そのため、こうした会議で出されるアイデアは、現実的ですぐに達成できそうないわゆる小規模な改善策に留まることが多いのです。

第4ステップ:実行する→ノルマの分最低限だけ実施

最後に計画したことを実行するフェーズですが、ここでも問題解決アプローチから生まれたアイデアは、実行するモチベーションがとても低くなりがちです。なぜならやること自体が「ノルマ」になっており、周りから批判されないために「やらねば」ならないからやるというマインドセットが生じるからです。義務感で渋々行うアクションでは、与えられたノルマ以上をこなす人はいませんし、互いに無駄な仕事を増やさないように押しつけあうことになります。

問題解決アプローチの限界

こうして問題解決思考から出てきた結果をみてみましょう。自己肯定感を下げて、相手を批判して、居心地悪い雰囲気の中で苦労して実行したのに、きっと成果もあまり芳しいものではないでしょう。なぜなら、それぞれのメンバーが自分が苦手だったり失敗した領域を、互いに助け合わずに、意外性のない改善策を、ただ義務感から行っているため、しんどくて苦しいプロセスに対して、得られる結果は小さくなります。各自の欠点を少しだけ克服しても、いわゆる平均点に近いアウトプットが出るだけです。そして生み出されたソリューションも、特徴のないソリューションが完成してしまうのです。

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ここまで見てきていかがでしたでしょうか?いわゆる、問題解決アプローチの問題点がありありと浮かんできたのではないでしょうか。それでは、こうした問題解決アプローチの課題を克服する方法はあるのでしょうか。

もちろん、あります。それがAIです。と言っても、今流行の人工知能ではありません(笑)。もちろん外資系などの打ち合わせの最後に使うAI、アクションアイテムという意味とも違います。

組織コーチング手法:アプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry)とは?

ここで紹介する「組織コーチング手法としてのAI」は、アプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry)の略です。Appreciativeは「価値を認める」、Inquiryは「探求」を意味します。デービッド・クーパーライダー教授らによって1987年に提唱された、歴史あるチェンジ・マネジメントの手法です。

この手法は4つのDから成り立つため、4Dモデルという言い方をすることもあります。

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4つのDとは下記の通りです。

1:Discover(発見)
過去の成功体験についてインタビューを行い個人や組織の強みを見出す。

具体的にはペアになって、相手の過去の成功体験や強みをひたすら聞き出していきます。まさにヒーローインタビューのようなものです。よりスキルが必要なコーチングとは違い、よりテレビのインタビュアーのように自然に相手の成功体験やその成功の理由、強みを引き出していく形になります。

ディスカバーに関する質問例

Q:「あなたの一番の成功体験は何ですか?」
Q:「どのように関わったことでその成功に寄与しましたか?」
Q:「成功体験を振り返って、自分の強みはどんな所だと思いますか?」

こうした質問を投げかけ、心から関心を示すこと。そしてワークショップの時間に合わせて、ある程度の時間10分ー20分程度のインタビューを行います。またインタビュアーはそのインタビューした内容を要約し、相手に簡単に伝えます。そこまで終わったら次は相手と交代してインタビューを行います。

この最初のステップで起きることとしては、とにかく自己肯定感が高まることです。そして自分の過去の成功体験を振り返ることで、自分の得意なスキル、勝ちパターンを得ることができます。また聴き手であるインタビュアーにとっても、その相手の本当の良さを感じ、チームとしての一体感も生まれてきます。


2:Dream(夢)
組織や個人の持つ長所や可能性をもとにビジョンを描く。

続いてこの夢を描くフェーズでは、成功体験を語り自分の強みを強く認識した状態から始まります。そのため、各個人が普段よりも自己肯定感が高い状態から始まります。また成功体験と自分の勝ちパターン、強みを認識した上で、描く夢やビジョンになるので、より積極的に物事を描くことができます。そしてここでは、できたら紙でもホワイトボードでも、スクリーンのペイントソフトでも良いので、夢を文字通り「描く」ことをしてください。絵は下手でも構いません。人によっては、例えば「南の島で暮らしたい」という夢ならば、そうした画像をスライドに貼り付けても構いません。また複数の写真のコラージュでも良いでしょう。その夢を出来るだけビジュアライズできる形で描いてください。もちろん言葉を大きく書いたり、そこにちょっとしたイラストを書き添えることでも構いません。普段の事業計画書のように数字やテキストだけでなく、イラストや写真など出来るだけ右脳を活用して行うことが大切です。

ドリームに関する質問例

Q:「どんな制約もないとしたら、私は何をかなえたいんだろう?」
Q:「自分の強みや勝ちパターンを活かすと3年後どんなことが実現できる?」
Q:「私の夢・ビジョンにふさわしい風景やモチーフは何だろう?(実際に写真を探したり、イラストを書いてみる)

このフェーズで起きることとしては、ビジュアルに示すことで、その夢を具体的に思い浮かべられるようになることです。ビジョンという言葉が示す通り視覚化された夢は、強力な推進力となります。また組織コーチングにおいては共通の絵を描けることは、目線の高さを揃える意味でも大きなメリットとなります。


3:Design(設計)
ビジョンを共有し、可能性を活かした組織の姿を設計

第3のDは、デザインになります。あなたが思い描いた夢をデザイン思考で柔軟に組み立てていきます。この際には最初にペアになった相手・もしくは少人数のグループで取り組みます。まずステップ2で描いた夢について、相手やメンバーにシェアします。その際に、自分の強みや勝ちパターンについても語っておきます。そして今度は、その夢のかなえかたを考える際には、常識に縛られない、ということが大事になってきます。例えば、「世界一周旅行にいきたい」という夢があったとします。普通に考えたら解決策は「数年頑張ってお金を溜める。退職してから旅に出る」みたいな方法が浮かんできそうです。ですがもっと普段の常識から外れて柔軟に考えて、かなえ方についてみんなでブレストしてみてください。もし強みとして「写真が得意」という人がいたら、「世界一周カメラマン」として働きながら旅するという道もあります。また「イベントを企画するのが得意」というマーケターがいたら、世界の課題を実際に目にしながら旅中にサービスをつくりあげる「世界一周ベンチャープランコンテスト」などを企画して、一緒に旅する状況をつくりあげることもできるでしょう。とにかくこのフェーズでは、自分一人の頭だけではなく、他の参加者も柔軟にその人の夢を達成する方法を限りなくあげていきましょう。またこのフェーズにおいては、実現可能性はあまり求めなくて大丈夫です。あくまでもブレストのルールと同じく、思いつく限りの大胆な選択肢を互いに出し合えると良いと思います。

デザインに関する質問例

Q:その夢をかなえるための王道な方法と、意外性のある方法を3つ挙げるとすれば?
Q:どんなリソースが揃えば、この夢は達成できる?
Q:そのリソースは、どうすれば集められる?
Q:10年後じゃなくて、今すぐその夢を実現するにはどうすれば良い?

このデザインフェーズの良いところは、自分一人だけの頭で考えないことです。また、問題解決アプローチのようにAだからBのようにロジカルに考えるだけ出なく、AとBをやることでZがかなう、などと柔軟にブレストすることで思いもよらぬ打開策が生まれてくることがあります。


4:Destiny(運命)
理想像の実現に向けアクションプランを実行する

自分の強みと勝ちパターンを発見し、ワクワクする夢やビジョンを描き、その大胆なかなえかたの設計図ができたら、あとは実行して現実となる運命にするだけです。では具体的にその夢をかなえるためのアクションプランを考えていきましょう。その際も大事なことは、あくまでも自分の強みや勝ちパターンから始まっているということ。苦手なことやワクワクしないことはどうせ形になりにくいですし、できたとしても元が苦手な分、あまり際立った成果に繋がりません。こうして自分の強みや勝ちパターンをベースにしたアクションかつ、自分が心から願う夢に向かってのアクションであるからこそ、言われなくてもやるし、高いモチベーションで取り組むことができるのです。

ディスティニーに関する質問

Q:あなたの強みを活かすなら最初にどんなアクションをする?
Q:夢を運命に変えるために、あなたの得意の勝ちパターンを使うなら何をする?
Q:もしその夢が実現する運命ならば、今何をするのが最善の策だと思う?

ワークショップの最後では、自分がその夢を運命に変えるためにアクションプランを宣言して終了するという形になります。これは個人の夢をベースにした発表でも構いませんし、今回のフロー自体を部やチームごとに設定することで、自分たちの目指すビジョンを共に作り上げ発表するという組織変革のワークショップに応用することも可能です。できればその際、実際に描いた夢や計画、アクションプランなどは模造紙の場合はオフィスに張り出したり、画面キャプチャーしてデスクトップの壁紙にしたり、個人やチーム全員にシェアしていつも目に付く所に場所に置いておけると効果が高いと思います。

この最後のフェーズではとにかく自分がこれは私の運命だと思えるところにまで心から納得し、とるべき行動を完全に把握することが大事です。また1回のワークショップだけで解像度があげられなかった時は、また時間を置いてまたトライしてみることをお勧めします。少しずつ心理的安全性高く、互いに強みを活かしあい運命を信じられる組織になっていくと思われます。

問題解決アプローチとAIを比較してみた結果

このように今回AI(4Dモデル)を紹介しました。改めてみると、一般的な問題解決アプローチのいわゆる対極にあるのが、AI(4Dモデル)だと言えるのではないでしょうか。

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前述の通り、問題解決アプローチとは、自己肯定感を下げ、チームの雰囲気を悪くし、小さな改善策を義務感だけでやっていくサイクルでした。その結果、弱点をやや補強した特徴のない弱い組織やサービスが生まれます。

一方、AI(4Dモデル)から生み出された結果について考えてみましょう。4Dモデルの場合は、各メンバーが自分の強みと勝ちパターンを軸にビジョンを描く故にただでさえ生産性が高いと思われます。また褒め合う過程で、チームの雰囲気もよくなり、多少の失敗をカバーし合う心理的安全性の高い組織になるでしょう。また各自が強みを磨き、自主的に夢の達成に向けて働くためにプラスアルファの努力も厭わないでしょうし、結果的に得意なことを磨きあげ、高い生産性で、特徴な強みのあるソリューションをつくることができるのです。

AI(4D)モデルを、GROWモデルと比較してみた

またせっかくなのでもうひとつの比較として、コーチングのGROWモデルとも対比して特徴を説明したいと思います。ちなみにGROWモデルとは、コーチングやコンサルで使われている目標達成手法です。私自身、このGROWモデルは多くのクライアントさんとのコーチングでも活用させていただき、とても使いやすく効果が高い手法だと感じています。とはいえあえて今回は比較の意味で、あくまでそのGROWの強みとAIの強みを対比して説明したいと思います。

1:GOAL:目標を設定する

GROWモデルは、ゴール目標を定めるところからスタートします。もちろんコーチングにおいても、「前提条件を気にしなくてもいいとしたら、どんな自分になりたいですか?」などと質問した際に、すぐにどんどん理想の未来像が浮かんで話をしてくれる人もいます。ただし現実的な積み上げ思考の方の場合、なかなかこの最初の夢を描くフェーズで苦戦する場合があります。もちろんここはコーチの腕の見せ所で、様々な角度からの質問や傾聴力で引き出していく部分なのですが、このGOALの設定の角度と再現性の部分で、個人のコーチの力量に左右されてしまうことがあります。この部分がAIとの一番の違いです。AIの場合は、個人の過去の成功体験について詳しく語ってもらい、その成功パターンを炙り出し、自己肯定感を高めつつ、そのゴールに近づけていくことができます。

R:Reality/Resources:現状を認識する

続いて現状認識と自分のリソースを確認するフェーズです。ここでは自分の現状認識に関して、客観的に判断できる人と、自己肯定感が低く、そもそも可能性を見積もれない人もいます。自己肯定感が低い場合は、一般的な課題解決思考で現状を悲観的に見てしまう人もいるため、コーチは現状認識を行いながらも、その強みの部分をうまく引き出すという工夫が必要になります。

O:Opptions:選択肢をあげる

続いて、ゴールと現状の間のギャップを埋めるための選択肢をとにかくあげていく段階です。これはAIにおけるデザインのフェーズに近いです。ただ違いとしては、GROWモデルにおけるオプション(選択肢)という言葉が行動の選択肢をあげていくという感覚があります。AIのデザインはそのあげた選択肢を組み合わせたり、分解して再構築したり、というデザイン思考的な要素が含まれていくイメージです。

W:Will:やってみたいことを実施する

GROWモデルの最後は、Willです。自分の意志を持って、選択肢の中から一番やってみたいことを宣言し、実際に行動に写していくというステップになります。ここでもAIの運命のフェーズと意味合いは近いです。より意志を現実にするという重みが加わるイメージでしょうか。

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こうして見ると、個人のコーチング/コンサルティングで行われるGROWモデルと、組織コーチングのAIには多くの共通点があることがわかると思います。

そしてあえて下記のように時間軸でステップを並べ直して見ると、GROWモデルが未来から話が始まっているのに対し、AIは過去の成功体験という軸からスタートするところに大きな特徴があると思います。

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私自身、この個人コーチング手法のGROWモデルも、組織コーチング手法のAIもどちらも大変使いやすく、両軸となる手法だと思っています。また個人のコーチングにおいても、未来軸から考えるGROWモデルがハマりにくい方に関しては、あえてAI的な過去の成功体験からみていくという風に活用することもできると思います。

そしてまさに個人軸のコーチングで考える、GROWモデル的アプローチと、会社やチームなど組織軸で考えるAI的アプローチ。この両軸の重なるところに、今の自分のビジョン・ミッション・バリューが生まれていくと考えています。

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ちなみにライフビジョン・ミッション・バリューのつくりかたについては、下記の記事をご覧ください。FOCUS法でより詳しく紹介しています。

また実は上記のライフビジョン・ミッション・バリューについていきなり考えることが苦手な方にこそ、今回のAI的なワークショップで多面的に自分の成功体験や勝ちパターンを見つけること、またGROWモデル的に内面を探るステップを事前に行ってから取り組むことをお勧めします。

ちなみに今回、オンラインサロン One Parkさん内で、今回紹介したAIのワークショップを行うことになりました。ご興味あるかたはこちらもぜひチェックお願いします。

10月22日(木)19:00ー20:30(90Min)

場所:One Park*オンラインワークショップ

タイトル:クリエイティブコーチング講座①

     かなえる、きっかけをつくる 

     AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)ワークショップ

講師:クリエイティブコーチ つっつー(堤 藤成)

略歴:元電通のコピーライター、クリエイティブディレクターであり、
現在はオランダからフルリモートでスタートアップのクリエイティブ・ディレクターに従事。またZaPASSでコーチングを学び、クリエイティブコーチとしても活動中。

以上、クリエイティブコーチング(AIワークショップ、GROW、ライフビジョンの制作等)に興味ある方はDMください。それでは、この記事があなたの「かなえる、のきっかけ」になれば幸いです。

追伸:YouTubeにより詳しい解説をアップしました。興味を持った方はこちらもぜひ。↓





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