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学びが凝縮されていた中華料理店での体験 その20

父から疎まれていると思っていた私は、父に大事な娘だと言ってもらえて、今までの苦労が報われる気持ちだった。

もう中華料理店に未練はなかった、早くこの場を立ち去り、新しく出直したいと思っていた。

娘と引っ越しの準備の為に荷物を整理していた時、突然玄関の引き戸を乱暴に叩く音が聞こえた。

私は身構える、そして娘に絶対にここから出ないで待っててと言い、玄関に向かった。

怒鳴りながらガラスを割る勢いで叩く清掃業の女社長、遂に直接対決の日が来た!!と私は覚悟を決めて、鍵を外し戸を開けた。

彼女は鬼の形相で私に向かって怒鳴る「金を返せ!!あんたら夫婦が元凶なんは会長から聞いて知ってるんや!清掃作業にかかった費用を全額今ここで払ってもらうで!それまで帰らんからな!」

私は臆病者でこんな怖い人を前にすると震え上がり何も言えなくなる、なのに実際はとても頭がクリアになり、冷静な私の隠れた一面が顔を出すのだ、それが私には不思議だった。

この時も、凛とした態度で女社長に対応していた「どうして私がそちらにお金を払う必要があるんですか?私も被害者です、私が働いた分は未払いで、手元にお金はありません、こちらに金を返せと言ってこられても、どうしようもありません」と言って女社長の目を真っ直ぐ見つめた。

すると彼女は私に掴みかかり、金を返せ!!と言い続けた、私は対抗しながら、この女をどうやってここから追い出そうか?と考えていた、するといつの間にか娘が側に来ていて、ハンガーを手に持ち、それで女社長の体を叩き始めたのだ!

女社長は痛い痛いと言いながら、力任せに娘を押した、娘は尻もちをついて転んだ、それを見た私は完全に逆上して、狂ったように女社長に飛び付き悪態をついた。

「クソババア!!ここから出て行け!!許さんからな!私の大事な娘を突飛ばしやがって、恐ろしい悪魔め!私は被害者なんや!今までずっと騙されてきた、私は何も悪いことはしてない!なんでお前なんかにこんな仕打ちされないかんのや!」

すると突然女社長は笑いだした「このやり取りは録音させてもらったからな!あんたの言ったこと全部残っている、これで裁判はこっちの勝利になる!ざまあみろ!」と言い捨て去って行ったのだ。

悪夢のような時間だった、一体女社長の目的は何なのか?私はまずいことをあの女に口走ってしまったのだろうか?裁判ってどういうこと!?と色々な思考が巡り落ち着かない。

それよりも娘を突き飛ばされたことが許せなかった、娘は健気に私を助けようとハンガーで立ち向かってくれたのだ、そんな娘を守れなかった自分にも腹が立った。

元夫が仕事から戻って来て、その日にあった事を興奮しながら説明した、さすがに娘が危険な目に合ったことに元夫も怒り、早急に引っ越し先を見つけようと決めたのだった。

そしてその時元夫から真実を聞かされた、会長とマネージャーは、全責任を元夫に被せ、中華料理店をこっそり逃げようと画策していたらしい。

これを知った清掃業の女社長は会長に抗議した、そしてうまく会長に言いくるめられて、私達夫婦が元凶だと思い込み、実家に取り立てに行ったり、直接うちにも乗り込んだりしてきたようだった。

それにしても元夫は平気な顔をしている、どうしてそんな余裕があるのか?元夫は会長の弱味を握っている、その弱味はよっぽど凄い事なのだろう、だから元夫は会長を恐れてはいないのだ、いざとなれば切り札がある、元夫の方が優位に立っていられた訳なのだ。

それからは不動産を何軒も周り、手頃な家を探し続けた、やっと見つかった物件に引っ越すことになるのは二週間後だった。

引っ越す日まで、ビクビクと怯えながら、その家で暮らした、また借金の取り立てがやって来たらどうしようと心配で怖かった。

なにせ完全なアウェイの世界にいたのだから、誰も私達家族を快く思う人のいない世界は恐ろしい。

毎日、隣接した中華料理店から食器同士が擦れて鳴るカチャカチャ音が聞こえる、私は働いていた時のことを思い懐かしくその音を聞いていた、今でも食器のカチャカチャ音は私を癒す音になっている。

休憩で外でタバコを吸うため主任や副主任が勝手口から出てきた時、顔を合わせる時もあった、主任はふてくされたような表情をする、副主任は同情してくれているような悲しい表情をしていた。

本当ならもっと親しく挨拶して、仲間として楽しく交流したかった、悪い人達ではなかったのだから、こんな形で敵対する立場になることが残念だった。

次回で長い物語も最終回になります。

中華料理店での楽しかった思い出を最後に記しておきたいと思っています。

ここまで生きてきてやっと最悪だと思い込んでいた中華料理店の体験を忠実に振り返り、最悪ではなく、寧ろ最高の体験だったのだと思えてきました、だからこのnoteに投稿して本当に良かったと思い感謝しています。

次回の最終回まで読んでいただけたら嬉しいです。

幸せをありがとう♡

いつも読んでくださって感謝します。




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