学びが凝縮されていた中華料理店での体験 その19
私は中華料理店から逃げるように辞めてしまった、マネージャーや会長に直接挨拶することなく辞めたことを、後ろめたく思っていた。
それでも地獄のような労働の日々から解放されて、安堵していたのだ。
そんな時悪魔👿はやって来る、母から電話があり、実家の作業場に清掃業の夫婦が押しかけ、金を返せ!!と罵声を浴びせて来たらしい!娘の借金は親が肩代わりするのが当然やろう!と凄い剣幕だったそうで、でも父が一喝するとあまりの迫力に、スゴスゴと退散したとのことだった。
この一件で弟のお嫁さんが激怒して、私と元夫に対して益々不信感を持ち、どうしても意見したいから呼び出して欲しいと言っているのだそうだ。
私は大ショックだった、どうして実家に迷惑をかけることになるのだろう!お嫁さんに嫌われ、もう実家にはお世話にならないと決めていたのに、何故実家を巻き込むことが起こるのか、悪魔は私を何処までも追い詰めて来るのだ。
私は仕事から戻った元夫に母からの電話の内容を伝えた、そして明日一緒に実家に顔を出し、今の状態を説明して、実家に迷惑をかけたことをお詫びして、今後絶対こんなことのないようにすると約束しに行こうと言った。
元夫は実家に行くことを伝えた直後に表情を曇らせた、彼は実家とは距離を置きたいのだ、謝ることは非を認めることなので、絶対に謝罪はしたくない人だから。
次の日、実家に行く準備をしていたら、案の定元夫は別の用事にかこつけて 私だけで行かせようとしてきた、そうは行くか!!引きずってでも必ず一緒に行ってもらう!と私は決めていた。
根負けして、渋々私について来る元夫、私は両親に心からの謝罪をさせるつもりだったのだ、苺の出荷作業をしている作業場へ行き、ドアを開けた。
両親と弟とお嫁さんがこちらを凝視している、特にお嫁さんの視線は物凄い怨念を感じた、恐ろしくてその場に居られない!それほどの恨みがましい目だった。
元夫が緊張しながら今回の件を謝った、そして現状の中華料理店の借金は、全て会長の責任だからうちには全く非はないこと、それは会長と約束しているので、今後一切こちらの実家に迷惑がかかることはないので安心してください、さらにはこれからの仕事のことも説明して、心配をかけないように家族を守って頑張りますので許してください、そんなことを元夫は語った。
両親は親身になり頷いて聞いていた、お嫁さんは元夫に抗議したくてたまらない様子で、しおらしく謝る元夫を許そうなんて思ってもいないようだった。
お嫁さんが怒りで悔し涙を浮かべながら元夫に話す「私達家族をどこまで苦しめたら気が済むんですか?私達がどれだけ怖い思いをしたか、あなたにわかりますか?そんな軽い説明だけでは納得出来ません!!もっと真剣に謝ってください!二度とこんな事態が起こらないように約束してください!約束を守る為にどんなことをしてくれますか?納得出来るように説明してください」
的を得た内容だ、お嫁さんはしっかりと言うことを決めていたのだろう、適当に誤魔化す元夫の性質をよくわかっている、心の中で私はお嫁さんの冷静さに感心していた。
お嫁さんの剣幕にタジタジになりながら、元夫は何度か頭を下げて謝り、さっきと同じ説明を繰り返した、お嫁さんはそれが気に入らず、それでは安心出来ない!とさらに詳しい説明を求めてくる、元夫が苛立っているのがわかった。
父が辺りに響き渡る声でお嫁さんを遮った、「もういい!大の男がこれだけ頭を下げて謝るのは大変な覚悟なんや、もう許したろう、これだけ反省してるんやから」
お嫁さんはまだまだ物足りない様子、弟はそれを察して「とにかく嫁の言い分を全部吐き出させてやってくれ!ずっと我慢してきたから、この際言わしてやってくれ」
そしてまたお嫁さんが「本当にこちらに迷惑はかけないんですね!誓えるんですね!あんな怖い人達がここに乗り込むことはもう無いんですね!」と言った。
元夫も意地になり、絶対に清掃業の人達を一歩たりともここへは踏み入れさせないことを誓う!とまで言い切った。
急に私は悔しくなった、私だって被害者なのになんでこのお嫁さんだけが正当化されているのだろう?思わずお嫁さんに向かって言葉が飛び出した。
「○○ちゃん(お嫁さんのこと)は私が離婚してここに戻って来るのが嫌なんやろ?私に消えて欲しいと思ってるんやろ?だから私はもうここには来ないって決めたんや!この人と離婚せず、一緒に頑張ることにしたんや!だからもうそれでいいやんか!私は頼る場所を失ったんやから、それで充分やろう?」
その時、予想外のことが起こったのだ。
父が突然話し出した「そんなこと無い!お前は大事な娘や!お前の帰る場所はここや!そんな悲しいこと言うな、いつでもここに帰って来たらええんや、誰に遠慮することもない、正々堂々と帰って来たらええんや」
驚いたことに父は泣いていたのだ!泣きながら言ってくれている、私は父に疎まれていると思っていたから、予想外の展開にビックリして、そして父の涙を見た瞬間、号泣していた。
一通り泣き、ふとお嫁さんを見ると、彼女は能面のように無表情で一気に涙が引っ込んだ。
この時のことを今も思い出す、私の心は変化して今はお嫁さんの気持ちも理解できる、だから責めることはない、父は私を思ってくれていた、それを実感できたことが大きい、父が威圧的で怖かった、父にとって気に入らない結婚を選択した私を許してくれないと勘違いしてきた、父は父なりに娘を大事に思い自分にできることをしてやろうと思ってくれていたのだ。
最悪と思えた結末、父の本心がわかり、これだけで中華料理店をした甲斐はあったと思えた、とても満たされた気持ちになれた。
実家に借金を肩代わりさせようと乗り込んだ清掃業の夫婦、それで諦めることはない、次に続きます。
幸せをありがとう♡
ここまで読んでくださって感謝します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?