医療従事者と患者の理想とするコミュニケーションとは
秋が深まってきましたね。前回は、手術の説明会の様子を書きました。
その経験を通して、患者と医療従事者のコミュニケーションにおいて、両者がすべき大事なことにきづきました。それは、インフォームドコンセント(informed consent)です。診断を受けたばかりの方、これから治療にのぞむ方々、そして医療関係の方々に参考になればと思います。
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手術説明会の前に父が、「必ずお医者さんとインフォームドコンセント(informed consent)を取りなさい。わからないことがあったら、納得いくまで説明を受けたうえで同意することが大切」と言われました。
インフォームドコンセント(informed consent)とは?
多くの場合医療現場で、医療従事者と患者間で話し合われる診断や治療法について、医療従事者からのきちんとした説明(Inform)と、患者からの同意(Consent)を得ることをさします。医療技術が進んで、 診断法も治療法も多様化・複雑化している中で、より良い医療の提供と積極的な闘病の姿勢を確保するには、患者と医療従事者の間に新しい関係が作られなけれ ばならないという考えで確立されました。
昔は医療従事者の権威から、患者の同意なしで診断や治療が行われてきた歴史があったようです。また、患者も「お医者さんにおまかせします」という姿勢で、治療について消極的だった背景もあるようです。自分の体のことなのに、同意なしに治療がされていたとは、驚くべきことだと思います。けれど、入院してすぐ、私の言語聴覚士が下記のように話してくれました。
お医者さんが相手でも、遠慮せずに何でも聞いてくださいね。
Dejavuさんは大丈夫と思いますが、とくに年配の方々は医者の言うことに疑問をを持つべきでないと思っていたり、わからないことを質問するのに躊躇してしまうケースが多いです
私はいろいろと考えた結果、インフォームドコンセント(informed consent)は、医療従事者と患者は相互的であれば、なお良いと思います。
患者にとって、治療を行うことは人生がかかっています。治療後の人生を考えて、自分が自分らしく人生を生きるためには、患者からも医療従事者に伝えておくべきこと(Inform)することがあるはずです。特に若い世代は、この先の人生をどう生きたいか、治療の前に真剣に考えたうえで、治療方法の判断したほうが良いと思うからです。
そこで、私は「なりたい私の10箇条」を作成しました。どういう自分になるか(Be)のリストです。例をあげると、
「感謝の気持ちを忘れずに恩返しをしていく」
「いくつになっても学び続ける」
などです。
私が手術後も続く自分の人生を、どういう自分でいることを希望しているのか、文章にして私の主治医に伝えました。
後遺症により、性格が変わるかもしれない、手足が不自由になるかもしれない、失語症になるかもしれない・・・・さまざまなリスクがあることを承知の上で手術を受けることに同意(Consent)しました。
だからこそ、私も主治医にわかってほしかったのです。私というひとりの人間が、決して失いたくない、大事にしている価値観はなにかということを。
すると、主治医はゆっくりと「なりたい私の10箇条」を読み、
はい、承知しました。
と丁寧に目を見て答えてくれました。
ちなみに、最初は Do をベースに「やりたいこと10箇条」を作成していました。それを妹にみせたところ、下記のようにアドバイスをもらいました。
Do だと、もしも叶えられなかった時に、精神的につらくなるよ。どのような形でもかなえるチャンスがある Be にしたほうが、自分でコントロールして生き方に応用することができるんじゃないかな?
なるほどなと心から納得しました。たとえば「XXへ行く」などと書くと、何らかの原因(私の場合病気が理由になる可能性大)で行けなかった時に辛い思いをするのは自分です。
それと同時に、家族は私が今まで出来ていたことが、できなくなることが多くなる可能性を覚悟しているのだと気づいてしまいました。当の本人である自分は、考えが及んでいませんでした。いまとなって思うと、その可能性を考えることから逃げていたのかもしれない。
現在、手術から1年経ち、あらためて「なりたい私の10箇条」の大事さに気づきました。いつも部屋の目に見える場所に貼って、毎日見て自分に問いかけています。
自分はなりたい自分になれているか?
いま診断を受けたばかりの方、これから治療に臨まれる方は、遠慮せずに自分の大事にしている価値観を医療従事者へ伝えてみてはいかがでしょうか?
そして、医療従事者の方々にも、治療後の人生を考えた患者の心の声に耳を傾けていただけることを願っています。