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社員のスキル向上に!『鍋スープワーク』

株式会社田中務補(かねすけ)商店のたなかななです。社長の嫁です。会社では、商品の販売諸々にも携わっていますが、人材育成の役割も担っています。今日は、人材育成の一環として行ない成果のあったオリジナルの体験型ワークショップについてお話したいと思います。

私たちの会社は現在、社員一人ひとりが働きがいを感じながら、存分に力を発揮できる職場づくりを目指して変革に取り組んでいます。以前の私たちは、社員同士が直接顔を合わせて話し合う機会や、目的意識を持った学びの場を設けることがほとんどありませんでした。会社の方針や重要な決定事項は、経営陣が一方的に決め、それを社員に指示するという、いわゆるトップダウンの運営スタイルが主流でした。

しかし、今の私たちはこれまでとは異なり、社員の皆さんのアイデアや意見を積極的に受け入れる風土を大切にしています。その結果、働きやすい職場環境の整備や業務分担の見直しといった、日々の業務改善に関する提案が多く寄せられるようになりました。このような社員の声を活かす取り組みにより、業務の効率化が進むだけでなく、一人ひとりがより働きやすい環境を実現することにもつながっています。

今回実施した『鍋スープワーク』は、従業員の発想力をより引き出し、そのアイデアを職場環境や業務改善だけでなく、商品やサービスの開発に活かすプロセスを体験してもらうことを主目的としました。ワークを考えるときの条件としては、以下のものを設定しました。

  • 楽しみながら取り組んでほしい

  • 個の能力を伸ばすワークにしたい

  • 考えることに時間を使いたい

  • 相手を思う気持ちを体感してほしい

そして、“人を想いながら料理を企画する”ワークに決定しました。順を追って、ワークの内容をご説明いたしましょう。

【準備1】鍋の素を人数分だけ用意する。種類はバラバラがよい。

さまざまな種類の鍋の素

【準備2】テーマカードを各座席ごとに設置する。

座席ごとに異なるテーマカードを伏せて置く

テーマカードは以下の10種類を用意しました。テーマごとにカードの裏側には次のようなストーリー設定を記載しています。

当選:「季節の鍋セットに当選しました」と季節感溢れる鍋の具材が届きました。どんな鍋だったでしょうか?

受験生: あなたは中学3年生。明日、受験当日を迎えます。そんなあなたを応援するためにお母さんが作ってくれたお鍋です。きっとこれを食べたら合格できる!さて、どんなお鍋?

大切な家族: 今日はあなたの大切な家族の誕生日。サプライズでお鍋パーティを企画しました。どんなお鍋で感動させる?

同窓会: 学生の頃の仲良しメンバー4人でプチ同窓会を開催することにしました。あなたが幹事で、メンバーの好みを想像しながら鍋を準備することになりました。どんな鍋を用意する?

畑: あなたは自分で野菜を育てていて、今日いよいよ収穫の日を迎えました。大切に育てた野菜を生かすとっておきの鍋を思いつきました。さて、どんな鍋?

喧嘩相手: あなたは誰かと先日喧嘩をしてしまいましたが、原因は自分にあると思っています。今日訪ねてくる相手のために仲直りの鍋を用意しました。それはどんな鍋?

ネットの友人: 趣味でつながったネット上の友人たちと今日初めて顔を合わせるというのに、なぜか鍋パーティーをすることになりました。しかもあなたが鍋担当。初顔合わせにぴったりな鍋はどんな鍋?

特産物: 隣に住んでいるお節介なおばさんが「うちの田舎から送ってきたから」と、とっておきの特産物をお裾分けしてくれました。この特産物でどんな鍋をいただきたい?

推し活: あなたが憧れる芸能人と二人きりでお鍋をいただくことになりました。最高の思い出に残るお鍋とは?

料理人: あなたは日本鍋グランプリで優勝した料理人です。そんなあなたが「家庭で簡単に作れる最高のおもてなし鍋」というタイトルで鍋をプロデュースすることになりました。どんな鍋を作る?

【準備3】各座席にテーマカードと合わせて、ワークシートを設置する

今回取り組んでもらうワークシート

【ワークの手順】

【1】参加者は各自鍋の素を1つ選んで好きな席に着席する。

【2】座席に置かれたテーマカードを裏返して読み、テーマに沿って鍋の名前を決める。

【3】つけた名前のイメージと鍋の素に合わせて具材を考え、20分でワークシートを仕上げる。

実際ワークに取り組む様子

【4】1人1分で出来上がったワークシートをプレゼンテーションする。聞き手は審査員になったつもりで、優勝者を選ぶ。

【5】各自、優勝だと思う人のワークシートに「具体的にどこがよかったか」を付箋に書いて貼り付ける。付箋が一番多く貼り付けられた人が優勝。

テーマに沿った個性豊かな鍋が出揃った様子

優勝者には、優勝商品の「選べる鍋グルメ!カタログギフト」をプレゼントしました。ちなみに、《投票を実施すること》と《投票の基準》はワークに取り組む前に伝えていました。
《投票の基準》は以下のとおりです。
1. テーマに添った鍋であるか
2. 鍋の名前と具材のアイデアとが合致しているか
3. 発想がおもしろいか(アイデアのおもしろさ。ワークシートの描き方も基準に)
4. 食べたいか食べたくないかは評価にしない。味は評価の基準ではないので、自由にどんな具材を入れてもOK。

どんな具材を入れてもOKとしていたので、「〆にピザを丸ごと1枚入れる」、「推しの息で出汁を取る」「鉄分補給のために針金を入れる」などのアイデアがあり面白かったです。

優勝者の表彰を終えて、今回のワークで体験してほしかったことや引き出したかった能力について皆さんに説明しました。

まず、体験して欲しかったのは、普段の自分とは異なる立場にたって考えることです。同僚やお客様は自分と同じ考え・立場・環境・状況ではありません。相手の視点に立ち、異なる背景や価値観を想像しながら形にするという体験を通じて、皆さんの思いやりや共感の気持ちがさらに深まるといいな、と思っていました。

またこのワークは、想像と創造の力を引き出す取り組みでした。従業員のみなさんは普段企画に携わることがありません。あえて企画にチャレンジしてもらうことで、企画を身近に感じてほしかったのです。

そして、審査員になることで、相手のいいところを見つける体験をしていただきました。審査を通して、相手の作品の中に褒めるポイントを見つけることができたと思います。普段から家族や同僚のいいところに着目してほしいという思いがこもっています。

最後に、時間の活用も大事な目的のひとつでした。時間を区切ったことで、制限時間内に仕事をやり遂げる体験をしていただきました。時間は全員平等です。時間が足りない/余るという感覚を感じて、限られた時間の中で自分が納得の成果を出せたら気持ちがいいし、出せなかったとしたら工夫をしてみてほしいと期待していました。

ワークで使った鍋の素は、みなさんに持ち帰っていただきました。「皆さんの大切なご主人、奥様、お父様、お母様、パートナー、お子さんに、心のこもった鍋を作ってあげてください」という課題もプラスしました(お野菜が買えるくらいの寸志もプラスしました)。どれくらい皆さんがそれを真面目に受け取って作ってくれるかは分かりませんが、真面目な会社を目指してはいないので作っても作らなくてもまぁいいか、と思ってます。何か今日のワークがご家庭の話題にのぼるだけでも嬉しいな。