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人生革命セミナーの闇 第10章: 鬱からの回復と新たな学び3

勧誘メールとの向き合い方

鬱の症状が改善し、自己啓発の本質について考えを深めていった田中一郎。しかし、彼の前には新たな課題が待っていた。それは、いまだに届き続けるセミナーや商品の勧誘メールだった。

ある平日の夜、仕事から帰宅した田中は、習慣的にスマートフォンをチェックした。すると、見覚えのあるアドレスからのメールが目に入った。

送信者:大西小悟
件名:特別な機会をお見逃しなく!

田中は深いため息をついた。「また来たか...」

メールを開くと、華々しい文言が並んでいた。

「田中様、お元気ですか?今回は特別に、限定30名様だけのプレミアムセミナーをご用意しました。これであなたの人生が確実に変わります!」

以前の田中なら、すぐにでも申し込もうとしていたかもしれない。しかし、今の彼は冷静に考えることができた。

「限定30名...か。でも、こういうのって結局みんなに送ってるんだろうな」

田中は返信を書き始めた。

「大西様、
ご連絡ありがとうございます。しかし、私はもうセミナーには参加しません。今後このようなメールの送信は控えていただきますようお願いいたします。」

送信ボタンを押した後、田中は少し緊張した。これまで断ることができなかった自分が、はっきりとノーと言えたことに、小さな達成感を覚えた。

翌日、出勤途中の電車の中で、今度は南由紀子からのLINEメッセージが届いた。

「田中さん、お久しぶりです。新しいヒーリングプログラムを始めました。あなたの波動を上げるのに最適です。ぜひ参加してください♪」

田中は少し考えてから、丁寧に返信した。

「南さん、ご連絡ありがとうございます。しかし、私は自分なりの方法で前に進むことにしました。今後はこのような勧誘はご遠慮ください。」

メッセージを送信した後、田中は窓の外を見つめた。以前の自分なら、すぐにでも飛びついていただろう。しかし今は、自分の意思で選択できる。その事実に、田中は小さな誇りを感じていた。

その日の昼休み、同僚の山田が声をかけてきた。

「田中さん、これ見てください。すごいビジネスチャンスがあるんです!」

山田はスマートフォンの画面を田中に見せた。そこには、華やかな文字で「今すぐ始められる副業!」と書かれていた。

田中は優しく微笑んだ。「ありがとう、山田さん。でも、僕はもうそういうのには興味がないんです」

山田は驚いた顔をした。「えっ、でも、こんなチャンス、逃したら...」

田中は静かに言った。「山田さん、本当のチャンスって、そんな簡単には見つからないと思うんです。自分の力で、少しずつ前に進んでいくのが大切だと」

山田は少し考え込んだ様子だった。

その夜、田中は図書館で借りた本を読みながら、これまでの経験を振り返っていた。勧誘メールや誘いの言葉に、いつも弱かった自分。でも、今は違う。

「断る勇気を持つことも、大切な成長なんだな」

そう思いながら、田中は新しいメモを作り始めた。

「勧誘メールとの向き合い方」

  1. 冷静に内容を読む

  2. 感情的にならず、理性的に判断する

  3. 必要なければ、丁寧に断る

  4. 自分の決断に自信を持つ

  5. 周りの意見に流されない

リストを見返しながら、田中は満足げに頷いた。

翌朝、目覚めた田中のスマートフォンには、また新しい勧誘メールが届いていた。しかし、今回は躊躇することなく、すぐに削除した。

「もう、迷わない」

そう呟きながら、田中は新しい一日を始める準備を整えた。鏡に映る自分の顔には、以前にはなかった自信が浮かんでいた。

勧誘メールは、まだしばらく続くかもしれない。でも、それに惑わされることなく、自分の道を歩んでいく。そう決意した田中の心は、穏やかで強かった。

これが、本当の意味での自己啓発なのかもしれない。自分の意志で選択し、自分の人生を歩んでいくこと。

田中は深呼吸をして、家を出た。新しい一日が、彼を待っていた。

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