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人生革命セミナーの闇 人生革命セミナーの闇 第4章: SNSコミュニティでの出来事2
大芝恵子からの厳しい指摘
毎日の自撮り投稿を続けて1ヶ月が経過した頃、田中一郎のSNSに異変が起きた。これまで好意的なコメントばかりだったのに、突如として厳しい指摘が現れ始めたのだ。
その日も、いつものように自撮り写真を投稿した田中だった。
「今日も感謝の気持ちを忘れずに! #波動上昇 #自己啓発 」
しかし、その投稿に対して、見知らぬアカウントからコメントが付いた。
「@tanaka_ichirou 笑え。お前の笑顔は笑っていない」
署名は「大芝恵子」。セミナーでは見たことがない名前だった。
田中は困惑した。「何だこれ...」
しかし、その厳しいコメントに「いいね」がつき始めた。しかも、セミナーの常連たちからだ。
翌日、恐る恐る自撮りを投稿すると、また大芝からコメントが。
「目が死んでいる。本当の自分を出せ」
田中は動揺した。これまで褒められてばかりだったのに、急に厳しい指摘を受けて戸惑いを隠せない。
悩んだ末、田中は南由紀子にメールで相談することにした。
「大芝恵子さんという方からコメントをもらうようになったのですが...」
南からの返信は意外なものだった。
「あら、大芝さんですか。彼女は私たちのコミュニティの古株で、とても鋭い洞察力の持ち主よ。彼女に注目されたなんて、田中さんは幸運ね」
田中は混乱した。厳しい指摘が「幸運」だなんて...。
しかし、南のアドバイスに従い、田中は大芝のコメントを真摯に受け止めようと決意した。
次の日の投稿。田中は必死に「本当の笑顔」を作ろうとした。
「今日も一日、全力で頑張ります! #本気の笑顔」
すると、またしても大芝からコメントが。
「力み過ぎ。自然体が一番だ」
田中は落胆した。一生懸命頑張ったのに...。
その夜、田中は鏡の前で何度も練習した。自然な笑顔、本当の自分...。しかし、どれも違うような気がして、眠れない夜を過ごした。
翌朝、疲れた顔で投稿した写真。
「おはようございます。今日も...頑張ります」
すると、大芝から思いがけないコメントが。
「やっと少し本当の顔が見えてきたな」
田中は驚いた。疲れているのに、それが「本当の顔」だというのか。
混乱する田中だったが、不思議とその日は投稿への反応が多かった。
「田中さん、今日の表情いいですね」
「なんだか親近感わきます」
その反応に、田中は少し自信を持ち始めた。
しかし、その自信も長くは続かなかった。数日後、再び大芝から厳しいコメントが。
「また仮面をかぶっているな。自分に正直になれ」
田中はついに我慢の限界を迎えた。大芝に直接メッセージを送ることにした。
「大芝さん、いつも厳しいコメントをありがとうございます。でも、正直何を求められているのか分かりません」
すぐに返信が来た。
「分からないのが当然だ。お前はまだ自分自身のことすら分かっていない」
その言葉に、田中は強い衝撃を受けた。
「自分自身のことが...分かっていない?」
大芝は続けた。
「なぜそんなに必死に『いい人』を演じようとする? 本当の自分を受け入れることから始めろ」
田中は言葉を失った。確かに、自分は必死に「セミナーで学んだ理想の自分」を演じようとしていたのかもしれない。
その夜、田中は久しぶりに投稿をせずに過ごした。代わりに、自分自身と向き合う時間を持った。
なぜセミナーに参加したのか、何を求めているのか、本当の自分とは...。
翌朝、田中は決意を新たに自撮りに臨んだ。特別な表情を作ろうとはせず、ありのままの自分を写した。
「おはようございます。今日の自分です」
シンプルな一言と共に投稿すると、すぐに大芝からコメントが。
「やっと少し進歩が見えてきたな」
その言葉に、田中は小さな達成感を覚えた。
しかし同時に、新たな疑問も生まれていた。
「本当の自分」とは何なのか。セミナーで学んだことと、自分の本質とは、どう折り合いをつければいいのか。
答えは簡単には出そうにない。しかし田中は、初めて自分自身と真剣に向き合うきっかけを得たのだった。
その日以降、田中の投稿は少しずつ変わっていった。無理に明るく振る舞うのではなく、時には疲れた表情や悩んでいる姿も投稿するようになった。
そんな田中の変化に、フォロワーたちの反応も変わっていった。
「田中さん、最近すごく人間味を感じます」
「悩んでいる姿も素敵です。一緒に頑張りましょう」
大芝からのコメントは相変わらず厳しかったが、田中はそれを恐れなくなっていた。
「まだまだだ。でも、少しずつ前に進んでいるな」
その言葉に、田中は小さくつぶやいた。
「ありがとうございます。これからも頑張ります」