
集大成 月の立つ林で
本屋大賞ノミネートおめでとうございます!!!
この本は青山さんの考え方がたくさん詰まった集大成的な作品ではないかと思います。
ちなみに、この本の発売日は、丁度あの皆既月食の日でした。この本を買う為、梅田の丸善ジュンク堂書店に向かって歩いている際、多くの人がスマホを月にかざしているのを見、運命的なものを感じました。(青山さん自身は、それを狙って出した訳では無いと仰っていましたが)
近くにいても分かっているようで分かっていない。でも、心では繋がっていて、お互いに相手を想っている。
知らない誰かが、知らない誰かを支えたり、知らない誰かの背中を押したり、そして、その知らない誰かが実は知っている人だったり。
人は、意識するしないに拘らず、必ず誰かに支えれている。
これまでの作品でも随所に出ているこの青山さんの"考え方"が、まとめとして改めて書かれた作品だと感じています。特に最後の部分には大変感動しました。
この事が根本にありますが、それ以外にも面白いと思えるポイントがたくさん有ります。
1)装丁
まず、表紙が、ペーパークラフト
作家の紙成鳴美さんの月の出ている
竹林で、エンボス加工され周りのブル
ーとのコントラストも絶妙で、この作品をうまく表現していると思いますし、これだけで、一つの美術作品になると思います。
また、カバーを外した裏表紙には、三日月、半月、満月等月の満ち欠けが描かれ、時が流れて行く中で、色んな姿を見せながら、私達を見守ってくれる月の存在を改めて感じました。
岡本歌織さんの装丁は、やはり凄い!
2)お笑いネタ
作品中にポンサクというコンビが出て来て、ネタも少し書かれています。
青山さんは、ただいま神様当番で吉本新喜劇の"しげぞう"をモデルにしたり、
お探しものは図書室まででマツコをモデルにしたり、ユーモアのセンスのある方だとは思っていましたが、人とは違う視点も持っておられますし、一度漫才台本を書いて頂きたいとも思いました。(笑)
3)月のトリビア
青山さん自身、子供の頃から月が好きで、この本を書くに当っても、たくさんの月関連の書籍を読まれたようですが、難しい話ではなく、分かりやすく、へえ、そうだったのかと思える話がたくさん織り込まれ、それが面白くて普段の話のネタとしても使わせて頂いています。(出典明示し、ついでにこの本の宣伝もしています。(笑))
そしてまた、このトリビアは、人と人との距離感等作品中に出てくる重要なポイントともリンクしており、作品の深さも感じます。
この本を読んで、月に対する見方も変わり、より近く、より愛おしく感じるようになりました。
4)月と太陽の対比
どちらが良い悪いではなく、太陽のような人、月のような人という面でも人物が描かれている感じがし、その観点で見ても面白いと思います。
また、バイクショップのサニーオート、劇団名のホルスも太陽絡みの名前で面白いと思いました。
5)ポッドキャスト
月と並ぶこの作品のポイントなるもので、ストーリーとも密接に関係するものです。青山さんが言われていましたが、視覚は新しい色んなものが出て来てもう一杯。でも、聴覚に訴えるものは少ない。それと、その時代時代のものを書き残していきたいと、以前言われていましたので、それもあり、ポッドキャストを取り上げられたのではないかと思います。
確かに聴覚だけを使うと、色んな想像が広がり、視覚より幅の広いものが感じられ、おしゃれな感じもし私も大変好きです。
6)気になった言葉
※悩んでいるときって、自分を見失ったりするじゃない。私がいるよっていうのは、あなたがいるよって伝えるのと同じことだと思うの。彼女を思っている私の存在が、彼女の存在の証になるんじゃないかなって
※月って、願いよりも祈りがふさわしいと思うんです。願いは自分でなんとかしようって強く思って行動できるようなことで、だけど祈りは、なすすべのないことにただ静かに想いを込めることなんじゃないかな。
7)最後に
このような作品を生み出される発想力が凄いと、改めて感じると共に、今年こそ本屋大賞第一位を受賞されることを祈念したいと思います!
最後まで読んで下さり、有難うございました。