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著者と読者をつなぐのが、編集者の役割。
伝えたいけど伝えられない著者を助ける
編集者の役割として、「何が伝えたいことがあるけど、どうやってそれを伝えたらいいかわからない」という人を助ける一面があります。
例えば何かについてのノウハウや、何かの分野についての入門の知識。自分の経験や次世代へのアドバイスなどがあります。
伝えたい大まかなテーマや充分の分量はあるけれども、どういった順序でどういう文章で伝えればいいのかわからないというケースがあります。
とりあえず自分で思いつくままに書いてみたけれども、頭の中が整理できていないばっかりに、書いても書いてもまとまらない。
または逆にアレコレ考えすぎて、頭の中に色々あるのに全く文章が書けない。
編集者の仕事はこうした、「伝えたいけど伝えられない」人の最初の一歩を指し示してあげることだと思います。
例えば参考になる本を渡して「こういう文章の書き方をすればスラスラ書けますよ」と言ってみたり、「二十歳の大学生に向かって教えているつもりで分かりやすく書いてみてください」などのアドバイスをすれば、途端に筆が進むようになります。
自分の中に眠っている面白いコンテンツを意識してもらう
もうひとつの役割としてはそもそも自分が面白いコンテンツを持っているということを知らない人に対して、「あなたの話はそのままでも十分面白いですよ」と言ってあげることです。
文章を書いたり電子書籍を出したりすることが一般化しましたが、それでもなお自分が持っている知識や経験が、誰かにとって価値あるものであると意識できていない人が多いということです。
本の取材をしていると、「こんな当たり前の話をするだけでいいのですか」と驚かれることがよくあります。
しかしながら、本人が当たり前と思っている情報であっても、違う業界や年齢が違う人にとってはそれだけで面白いものです。
編集者の役割はそうした埋もれている面白さを外から発見してあげることです。
編集者がいなければ世の中に出ていなかったコンテンツはたくさんあります。
実際に本に書く内容を考えるのは著者ですし、著者の頭の中にないものは本の内容に入れることはできません。
しかし編集者がいることでそれらを表に出すことができるのです。
たくさんの情報のなかから、読者がいま読むべきものを指し示す
続いては読者にとっても編集者がいかにあるべきかを話していきたいと思います。
現在では本に限らずテレビ、新聞、雑誌、ラジオ、ネットニュース、ブログ、YouTube、有料の動画配信、無料の動画配信、電子書籍、Facebook、Twitter、Instagramなど、見たり読んだりするだけでも膨大な量のコンテンツが溢れています。
一日は24時間しかありませんから、一人の読者が一日で触れることができるコンテンツの量は限られています。
多すぎてどれを選んだらいいかわからないと悩むのは当然のことです。
そこでは編集者が、自分の得意な分野について読むべきものをセレクトする役割を果たすことが必要になってくると思います。
編集者は、自分の担当ジャンルについてのあらゆるメディアに詳しくなっているものです。
仕事中も仕事の時間以外も自分の好きな分野について日々見聞きしたりリサーチしたり、自分で企画を考えたりしているわけですから、必然的に「その分野で何が優れているか」「どこのチャンネルを抑えていればその分野を効率的に知ることができるか」について判断がつくようになります。
これからの編集者は、そうした自分の選択眼をも、読者にとっても解放していくべきだと思います。
僕自身はビジネス書の編集者ですから、ビジネス書に関わるようなコンテンツや著者、よくまとめられているメディアについては人並み以上に詳しくなっています。
量が多くても質が低いものも見分けがつきますし、まだそれほど知名度はないけれども良質なものを揃えている会社やサービスも知っています。
例えば入社3年目のビジネスパーソンで、「これからビジネス書やビジネスコンテンツについて、できるだけ多く良いものを取り込んで成長したい」と考えている人がいるならば、その人にとってビジネス書の編集者は良い方法を提示するべきです。
「これを読むと良いですよ」
「これはチェックしなくていいですよ」
といったアドバイスひとつで、相手は人生の時間を有効活用できるわけですから、編集者は積極的に情報発信をすべきです。
「キュレーター」という言葉がありますが、たくさんの情報の中からあるテーマや習熟度レベルに応じて取捨選択し並びかえると言う意味でいうならば、編集者はまさにキュレーターにあたります。
毎月一冊の本を作るノルマに追われている会社員編集者だと、なかなか手間がとれないもの。
本来相手にすべき読者が置き去りになったまま、世の中にコンテンツを一つ増やすだけの作業に汲々としている人も多くいるでしょう。
僕自身も会社員時代はそうでしたが、独立して2年半たった今では、それだけではダメだなと痛感しています。
読者にとって最善であるべきですし、作るのであれば最善のものを作るべきです。
著者と読者をつなぐために、あたらしい編集者に必要なこと
編集者の両側には、できるだけ良い形でノウハウや経験を発信したい著者と、最善のものに出会いたい読者が存在します。
著者と読者を繋ぐためにこれからの編集者に必要なことは、その両側にともに視線を配り、つねに繋ぐ役割に徹することだと思います。
著者サイドばかり見ていると、どの読者も求めていないコンテンツを量産することになりますし、読者サイドばかり見ていると、まだ世の中に出ていない面白いものを発見する力が鈍ります。
僕自身の反省で言えば、独立起業してからの1〜2年は本当の意味で読者のほうを向いていなかったと感じています。
実際に読む人が何を考えて手に取っているのか、値段の分以上は満足してもらえるか。人に勧めたくなるか。SNSにシェアしたくなるか。
読者のほうを向いているかいないかで、日々の企画・執筆・編集活動も全く違うものになってきます。
自分の得意分野と定めたものについてはあらゆるメディアを横断して常にアンテナを張っておくべきですし、それまでの常識に囚われていてはだめです。
テレビの時代は終わったと言われますが、テレビの中で面白いものが新たに生まれているかもしれないし、最先端のサービスと言われているものも実はそれほどメリットはなかったりするかもしれません。
自分の過ごす時間が、著者へのアドバイスに代わり、読者へのキュレーションの源になるという意識でいるべきです。
このブログを立ち上げたのも、そうした意識からです。
本当の意味で読者にとって必要なものを、ビジネスジャンルに詳しい僕がひとつひとつ選別して伝える。
優れているとされるベストセラー本が本当に読むべきなのかもひとつひとつ精査しますし、あまり知られていないけれども僕が良質だと確信できるものは迷いなく紹介します。
情報を発信するだけではなく常に読者からの感想やフィードバックを参考にしながら方針を変えていくことを大事にしていきたいと思います。
ブロガーとしてではなくあくまで編集者として、僕が大切にしたいことだけを実践していきたいと思います。