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病気って、治さなきゃいけないんですか?

ー常識を考え直すー

早期発見、早期治療。現代の医学の常識ですね。定期的に健康診断、人間ドックに行き、悪いところを早く見つけ、手遅れになる前に、治す。

発見が遅れて、命を落とすことは避けたいですからね。

私たち歯科医師は、学生時代から患者さんの悪いところ探しの練習をしてきます。
そもそも、医学はそういうものですから。正常像と異常像の違いは何か、鑑別診断は何か、この病気の特徴的な症状は何か、と散々教わります。

口の中を見て、レントゲンや検査結果を見て、あなたのここが悪い、ステージ〇〇まで進行している、と粗探しをするわけです。
口の中には歯が28本、親知らずを入れると32本もあるわけで、それぞれに悪いところを見つけられたら、聞いている患者さんはどんな気持ちになるでしょうか?

良いところもいっぱいありますよ!本当は。

「あー、そんなに悪いのかー。もっと真面目に歯を磨いておけばよかった!」

〜〜〜〜〜 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 〜〜〜〜〜

以前、患者さんに言われて「はっ!」としたことがあります。
「痛くもなんともないんですけど、治療しなきゃダメですか?」

確かに、この患者さんのこの部位は、病気になっています。医学的に間違いありません。診断もつきます。治療方針もたちます。治療後の経過も予想ができます。

しかし、治療を始めるのは、本当に今、なのでしょうか?
それは、よく考える必要があります。
初めてお会いした患者さんの、これまでの経過が全くわからない状態で、すぐに手をつけて良いものなのか、私たちは、その都度自問自答する必要があります。

例えば、虫歯。歯が黒くなっているし、少しくぼんでいます。今治療すれば、神経の治療はしないで、レジンという樹脂を詰めれば、10分くらいで処置は終わります。
だけど、樹脂をつめた後はどうなるのでしょう?おそらく何年かすれば、樹脂の周囲が黒くなり、または樹脂が取れて、さらに大きく樹脂をつめます。その後は...
でも、この患者さん、黒いのは5年も前から変化ないんです。歯ブラシもそれなりに頑張るし、定期的に来院するし。甘いものもそんなに食べていないし。じゃ、このまま何もしないほうが良いんではないか?
木を見て、森を見ず。こうなってはいけません。
歯しか見ていないと、全体が見えなくなってしまいます。

CMでありましたね。いつやるの?今でしょうー!
病気の場合は、違うんです。

予知性の名の下に、侵襲を大きくするよりは、経過を見ながら必要な小さな処置を積み重ねて、いよいよ問題がはっきりした時に、適切な手を打つ。(金子一芳 歯科医師)

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