ウイスキーについてトラディッショナルであること
DRAMLADは、ウイスキーについてトラディッショナル(伝統的)であることを重要視しています。
ホームページで私達のヴィジョンとして掲げている"Discover New, from Tradition"の説明の中で、ウイスキーの歴史と伝統への解釈を書いていますので、ご一読いただければ幸いです。
その上で、なぜウイスキーについてトラディッショナルであることを重要視しているのか、補足的な説明を書いていきます。
革新の蓄積が伝統となる
"Discover New, from Tradition"の説明で書かれていることを大きくまとめると以下の通りです。(弊社はスコッチ・ウイスキーを取り扱っていますので、スコッチ・ウイスキーを念頭に書いています)
① ウイスキーの歴史では、製造環境、社会情勢、法整備といった大きな変化や転換点があった(外的要因)
② 時代による嗜好の変化を柔軟に受け入れ、また、新たな試みに挑戦する作り手達がいた(内的要因)
③ 進化や革新の蓄積が伝統となり歴史となって紡がれていく
④ 現代を生きる私達は、伝統を受け継ぎ、次世代へ引き継いでいくことが責務である
①と②の事柄から③となり、④へ繋がっていくイメージです。
「伝統」と「革新」は対立関係ではありません。
身近な例で言うと、日本の伝統工芸品が現代の生活様式に合うように形を変えたり、和柄が洋食器に取り入れられたりする事例を目にしたことがあるかと思います。今では良く見られる和モダンなインテリアなどもそうですね。
初めのうちは、目新しく斬新なものに見えて歓迎される一方で、もしかしたら敬遠されるかもしれないし、賛否両論あるかもしれません。ですが、やがて消費者に受け入れられ、徐々に浸透していき、今では当たり前になっていることも往々にしてあります。
これはウイスキーにも同じことが言えます。
例えば、新しい品種が誕生した時、連続式蒸溜器が発明された時、それがどのように受け入れられてきたのか。
幸いにも、私達はウイスキーの歴史を振り返ることができ、その変化や転換点を俯瞰で見ることができます。
そこには紛れもなく「革新的」な品種改良や「革新的」な製造技術、その他の様々な事柄を取捨選択してきた事実があり、今では「伝統的」だと思われることの大半が、昔は「革新的」であったことに気付かされます。
こうした歴史を知り、革新の蓄積が伝統を形成していることを踏まえ、今ウイスキーを提供している私達DRAMLADは、現代のウイスキーが持つ伝統的な側面と革新的な側面の両方を次世代に引き継ぐことが責務であると考えています。
カスクフィニッシュを例に
あるいは、もっと身近な例でフィニッシュはどうでしょうか。
現在、オフィシャル、ボトラーズを問わず、様々なタイプのフィニッシュがリリースされています。シェリー樽やワイン樽が主流ではありますが、赤ワイン樽だけではなく白ワイン樽もフィニッシュに使われるようになったり、ワインの生産地も多岐に渡るようになったり、近年ではコニャック樽やビール樽も登場していることをご存じの方も多いと思います。
こうしたフィニッシュについて、目新しく面白い、あるいは楽しいとポジティブな意見を持つウイスキーファンがいる一方で、ネガティブな意見を持つウイスキーファンもいるかと思います。「味付け」とか「作為的」と評されることも時折見かけます。まさに賛否両論ですね。
フィニッシュといえば、グレンモーレンジやスプリングバンク、アランなどのウッドフィニッシュを連想する方が多いかもしれませんが、その歴史を振り返ってみると、1983年のバルヴェニークラシックが先駆けと言われています。実に約40年に渡って行われてきた熟成の工程技術です。
元の原酒のフレーバーに変化を与え、より良いフレーバーを生み出すことが最大の意義であるフィニッシュ。様々な蒸溜所が自分の原酒の個性に最適なカスクを選び、フィニッシュを試み、試行錯誤を重ねてきた約40年に思いを馳せると、フィニッシュもまた理想的なウイスキーを追い求めて新たな試みに挑戦してきた生産者・職人達による革新の積み重ねであると言えるのではないでしょうか。
かつてのバルヴェニークラシックのように、フィニッシュであってもオールドシェリー感たっぷりの陶酔的で芳醇な味わいを持つボトルが確かに存在していることや、オフィシャルボトルのカスクフィニッシュが好評を得ていることを考えると、現代のバラエティ豊かなフィニッシュの中で良質なカスクを選び出して提供していくことは、現代の私達にしかできないことであり、やるべきことの1つではないかと考えています。
今という点。歴史という線。
ここでお伝えしたいのは、「今」という点の連続こそが「歴史」という長い線になるということです。
はるか昔、初めてウイスキーが誕生した時に生きていた人々にとっての「今」。
単式蒸溜器が、あるいは連続式蒸溜器が誕生した時に生きていた造り手にとっての「今」。
ブレンデッドウイスキーが誕生した時に生きていた人々にとっての「今」。
戦争や不況といった苦境を生き抜いていた当時の蒸溜所にとっての「今」。
フィニッシュという新たな熟成技術が考案された当時のブレンダーにとっての「今」。
そして私達のまさに「今」。
ウイスキーの歴史の中で生きていた人々の「今」という点の連続こそが「歴史」という長い線を作り、それを振り返った時に、ある種の共通点や共通項が「伝統」を形作るのだと考えています。
そして、私達もウイスキーの歴史の中に確かに存在している点の1つであることに気が付いた時、ウイスキーについてトラディショナルであることが、如何に重要で重みを持つのかをご理解いただけるのではないでしょうか。
この考えは、私達DRAMLADのカスク選定における「生産者のプライドに敬意を払い、蒸溜所のハウススタイルを体現するような良質な樽や、今のウイスキーが持つ旨さと豊かな個性を持った樽を、プライドを持って真摯に選び出す」ことに強く結びついており、3つのブランドのラベルデザインにも大いに反映されています。
ウイスキー片手に読んでいただければ幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。