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ウイスキーの自社輸入で注意していること

DRAMLADは、リリースしている全てのウイスキーを自社輸入しています。

この記事では、ウイスキー輸入の流れを簡単に触れながら、特に注意を払っている点を書いていきます。

現地取引先との交渉

まずは、スコットランドの取引先にカスクサンプルの依頼をします。全てはここからです。

DRAMLADで依頼する場合、どういう蒸溜所で、どのようなスペックが良いか、なぜそれが欲しいのか、具体的な資料を作成して依頼しています。

例えば、欲しい蒸溜所をリストアップしたら、それぞれヴィンテージやカスクタイプも細かく言及します。ピンポイントで欲しいものを明確に伝えて交渉することは、良質なカスク選定をするために非常に重要です。

一方で、例えばヴィンテージに固執することなく10年以下、12〜15年程度、20年以上…といった大まかな熟成年数の範囲でまとめて蒸溜所をリストアップしたり、あるいは蒸溜所を指定する以外にも、カスクタイプだけの指定も資料内に併記しています。

そうすることで、取引先もサンプル提案の幅が広がり「希望している○○は今は無いけど、○○はある」といった提案が可能になり、それによって私達も予想外の新しい発見に出会うことが多々ありますので、結果的に良質なサンプリングに繋がっていくと考えています。

逆算スケジューリング

カスク選定の際は、いつリリースするのかが重要になってきます。

通年で美味しいウイスキーもありますが、やはり季節感を理解していないと、せっかく良いカスクであっても季節によっては受け入れられないことがあるためです。

この時、いつリリースしたいのかを想定し、そこから輸入プロセスを全て逆算して、PO(Purchase Order)を送るタイミングを決めています。

また、カスク選定は1種類だけではなく複数に及びますので、いつ入荷するのかを暫定的に把握しておくことで、それぞれのカスクを何月にリリースするのが相応しいのかを検討して決定していきます。

輸送コスト面から考えても、1樽だけを輸入するのではなく複数樽をまとめて輸入する方が効率的ですので、おおよそ半年先を想定してスケジューリングをしています。

ボトリングから集荷まで

ここからは取引先・フォワーダーとの連携になります。

取引先にPOを送ります。この時、事前にボトリングスケジュールを把握していると確実な集荷日が分かるので、スケジュール管理がしやすくなります。同時に、フォワーダーと情報共有し、暫定の集荷日を基に現地集荷業者と本船手配をしてもらいます。(輸入がEXW(工場渡)である場合)

さて、ボトリングする日はブローカーやボトラー各社で様々なのですが、タイミングが悪いとPO送付からボトリングまでに思わぬタイムロスが発生します。

ボトリング日が数日や翌週なら良いのですが、2〜3週間後となると輸入スケジュールに大きく影響が出てしまいます。ボトリングが完了しなければ、総本数や度数などのスペックが分からないので、ラベル制作が遅れ、結果的に輸入の遅れにつながるので、特に注意しています。

ボトリングが完了すると、スペックデータの連絡が来ますので、それらを記載したラベルデータを送付して、現地で印刷・貼付作業をしてもらいます。

当然、スペックが分かってからラベルデザイン制作となると日本側で時間がかかることになります。こちらが時間をかけることで入荷時期が遅れることはあってはならないので、事前にスペック以外を完成させておくことも重要です。

ここまで約1カ月間、DRAMLAD・取引先・フォワーダー・集荷業者の4社で全て進捗が共有されますので、取引先と集荷業者が直接やり取りする内容も全て把握できます。

輸送中に書類準備

無事に集荷され本船が出港したら、日本に入港するまでの間に輸入に必要な書類を全て仕上げておきます。

ここで、もし通関と検疫所への食品等輸入届の輸入業務の全てをフォワーダーに委託するのであれば、必要書類をフォワーダーに渡したら、ただひたすら入荷を待つのみです。

DRAMLADの場合、現状では通関はフォワーダーに委託して、食品等輸入届は自社で…と、業務を分けています。

これには幾つかの理由があるのですが、一番の理由としては、貨物が入港したら速やかに通関させるためです。

ウイスキー等の酒類を含め、食品全般の輸入については管轄検疫所へ輸入届出をして審査を受けるのですが、検疫所の審査次第ではモニタリング検査が必要になることがあり、そうなると場合によっては2週間程かかってしまいます。

既に日本には着いているのに検査で時間がかかってしまうのは痛いタイムロスです。

原産地証明書

特に、輸入実績が無い(または少ない)場合は検査になってしまう事例が多々ありますので、輸入届出に添付する「原材料、成分または製造工程に関する説明書」と併せて、「原産地証明書」「原産品申告書」「原産品申告説明書」を用意します。

「原産品申告書」と「原産品申告説明書」は日英EPAに基づくフォーマットで用意しますが、「原産地証明書」は英国歳入関税庁発行ですのでスコットランドの供給元に用意してもらう必要があります。

「原産品申告説明書」は輸入者の知識に基づくものですので、「原産地証明書」が無い場合に提出することになるのですが、DRAMLADでは確実性を高めるため全て用意して提出しています。

検疫所での審査から通関まで

書類が全て揃ったら管轄検疫所へ提出し、検疫所による審査に入ります。基本は本船入港後の提出ですが、事前に入港日と保税倉庫等が確定している場合は事前申告も可能です。

DRAMLADでの初回輸入は紙での申告でした。理由は単純で、慣れている方法だったからです。しかし、2回目からは全てオンライン申告にしています。

紙の申告の場合、書類を郵送するか管轄検疫所に直接提出するのですが、申告受理後に不備があった場合、書き直して再提出しなければいけません。オンライン申告の場合は、不備があればすぐに通知されオンラインで修正申告できますので、圧倒的な時間短縮になります。

無事に管轄検疫所の審査を終えると、済証が発行されますので、その他の必要書類と一緒に税関に提出して通関手続に入ります。

この済証の発行も、紙の申告では郵送で届きますが、オンライン申告であればデータで通知、発行されます。紙の申告が書類郵送から済証の到着までに4〜5日かかるのに対して、オンライン申告であれば数時間で済みます。

入港後から通関までの保税倉庫保管料は日々発生しますので、そのコストが販売価格に加算されていくことなどを鑑みると、速やかな通関のために不備なく進めたいものです。

通関手続きはフォワーダーの通関士に委託していますが、余程の不備が無い限り、書類審査と現物検査を含めて約5時間ほどで輸入許可の連絡が来ます。

金曜の深夜から土日祝に入港する場合は致し方ないのですが、例えば平日早朝に入港した場合などは、翌日には通関が切れる計算ですので、いかに慎重かつスピーディーに動くことが重要かお分かりいただけるかと思います。

まとめ

良質なウイスキーをリリースするために、その大前提となるカスクサンプルの交渉と、輸入スケジューリング、輸入書類作成と迅速な提出、そして全てに慎重かつスピーディーに動くこと。

これらが自社輸入で特に意識して注意を払っている点です。

昨年よりは少しずつ回復しているとは言え、まだまだコンテナ滞留などの物流の混乱は続いていますので、通常の感覚よりも数ヶ月前から動いてもイレギュラーな遅延が発生することも多々あります。

ですが、リリースしてからが本当のスタート。
スタートさせるために出来る限りの準備は怠らずに進めていきたいと考えています。

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ウイスキー片手に読んでいただければ幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。

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