#95 お別れホスピタル(2024)-久々に出逢った『刺さる』ドラマ
重すぎるNHK紹介文
高齢化が進行し、癌が国民病と化した現在の日本。7割以上の人が病院で最期を迎える。 そんな病院の中でも 、末期がんなど重度の医療ケアが必要な人や、在宅の望めない人を受け入れる療養病棟。そこはまさに医療のセーフティーネット。 その最前線に立つ看護師は、意思表示の難しい患者さんのわずかな変化も見逃さず、そこでの 日々が最善であるよう努める。ただ 苦痛を取り除くだけでなく、その人らしい「限りある生のかたち 」を求めて日々奮闘する。そして、訪れた最期から、その人なりに「生き切った命」を見届ける証人となる。患者さんやその家族、そして彼らと関わる医師や看護師の葛藤や、怒りや、悲しみや、小さな喜びや、笑顔や、素顔の先にあるドラマを通して、「死を迎える」ことと、「生きる」ことの意味を問いかける。 それは、私たちの未来への一筋の光につながっていくはず。「お別れホスピタル」それはー死の一番そばにある病院で繰り広げられる、壮絶で、けれど愛にあふれた人間ドラマです。
スタッフは『透明なゆりかご』
原作・沖田×華、脚本・安達奈緒子、音楽・清水靖晃、主題歌・Chara
これだけのスタッフを揃えれば外れなし。『透明なゆりかご』では出産に伴う命の尊さとコミュニケーションを問い、『お別れホスピタル』では消えゆく命の尊さとコミュニケーションを問うという重厚感が溢れかえっていました。「重さ」という点では、こちらの方がきつかったかもしれません。
第1話からの衝撃
開始早々、同じ病室の入院患者が連鎖的に亡くなります。病死というよりもショックによる発作的な死が多く、医師や看護師の抱えるやり場のない苦しみが鮮明に描かれていました。「余命半年」を受け入れきれず飛び降り自殺する本庄さん(古田新太)、DV夫に安楽死を求めずに人工吸器をつけて延命を図ったにもかかわらず、介護に疲れ果て、夫よりも先に亡くなる水谷さん(泉ピン子)、植物人間状態の娘を道連れに死を選ぼうとした癌患者の佐古さん(筒井真理子)、人生に絶望して看護師に理不尽な行為を取りながらも看護師の使命感に救われる病人(きたろう、木村祐一)などなど、高齢者との向き合いかたとともに、自身の最期を考えさせられる深いドラマでした。
活躍しない主人公
このドラマの主演は、看護師・辺見(岸井ゆきの)と医師・広野(松山ケンイチ)のおふたりですが、特別な活躍をするわけではなく、「死」と葛藤する姿が描かれていました。唯一救われたのは、岸井ゆきのさんとひきこもりの妹(小野花梨)との和解くらいでしょうか。癖の強い担任教師の哀しい現状(認知症)が引きこもり解消のきっかけとなったのは皮肉でした。それにしても「病み」と「闇」を表現させたら、岸井ゆきのさんは抜群ですね。
もうひとりの主人公
高校3年生の息子の大学進学を支援しながら、癌(ステージ3)と向き合う看護師・赤根さん(内田滋)の存在は効いていましたね。病院でがんを宣告されるシーン、進学を渋る息子の背中を強引に押すシーン、強がりながらカラオケで熱唱するシーン、すべて泣けました。
岸井さんの最後の一言
「じたばたしながら生きていく」だったように思います。まぁ、それしかないですよね。ということで、メッセージ性はないけれども、自身の生死と向き合わざるを得ない、刺さるドラマでした。
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