#45 泥濘の食卓(2023)-泥濘は続くよどこまでも
刺さるドラマが年々減る中、違う意味で刺さるドラマに出逢いました。ホームページには「最恐のパラサイト不倫」とありますが、そんな生易しいレベルではなかったです。要約すると『結末の見えない泥濘』でした。
泥濘の不倫シーンは皆無
母親の歪んだ愛情の影響で店長(吉沢悠)との不倫に走りながらも、店長の奥さん(戸田菜穂)のカウンセリングを担当し、店長の息子(桜井海音)とも一線を越えかけた主人公・捻木深愛(ねじきみあ)を演じたのが日向坂46の斎藤京子さん。「アイドルに不倫を演じさせるのか?」と思っていたら、エロいシーンは一切なし。キスシーンは遠巻き撮影、ベッドシーンは始まる前と終ったあとのみ。事務所への忖度が見事でした(笑)
深夜枠の不倫夫、吉沢悠
「夫婦が壊れるとき」では、令嬢(優希美青)を妊娠させて、妻(稲森いずみ)に捨てられる夫。今作では、鬱病の奥さん(戸田菜穂)や鬱状態の息子(桜井海音)から逃避するために、スーパーの女性スタッフとの不倫に依存し続けるダメ夫。深夜ドラマの不倫夫役の立ち位置を確立させましたね。
狂気の女子高生、原菜乃華
演技力は映画「ミステリという勿れ」でお馴染みですが、このドラマでの発狂ぶりはすさまじかったですね。幼い頃から好きだったハルキ(桜井海音)を独占するために行った数々の奇行の末、最終回では、ハルキの代わりに誤って店長をナイフで刺してしまうのですが、泣きながら走り去ってフェードアウトします。なんと罪を犯したままのクランクアップでした。
泥濘の最終回(怒涛の1時間SP)のネタ①
深夜ドラマの最終回で1時間SPなんて前代未聞ですね。しかも、常軌を逸したシーンが連発するのです。ナイフで刺されて瀕死の重傷を負って救急車に運ばれた店長が、救命士のいない車内で、奥さんとの信頼関係を回復するシーンが延々と流されます。思わず「はよ、救急車を出せよ!」と叫びそうになりました。
泥濘の最終回(怒涛の1時間SP)のネタ②
母親との確執のため帰る場所のない深愛がバスに乗り、ハルキが同乗するのですが、乗客はそのふたりだけで、とても東京とは思えない山村を延々と走ります。そして、無人の停留所で深愛がハルキをバスから下すため、延々と説得するのですが、思わず「運転手はどこや?」と叫びそうになりました。
泥濘の最終回(怒涛の1時間SP)のネタ③
ハルキを下し、再始動したバスの後部座席で思いつめた表情で俯く深愛。ここでドラマが終わります。マジの泥濘(ぬかるみ)でした。こんなに救いのない、でも、展開が速く、妙な後味の残らない爽やかな不倫ドラマは初めてです。まさに、違う意味で心に刺さりました。話題性なら、2023年を代表するドラマだと言っても過言ではないでしょう。