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あと29年間残されているならば 2

義父が入院してから今日で10日目。妻とふたりで見舞いにいった。
妻は今日が誕生日。自分のために何かをしてもらうのではなく、誰かのために何かをする日として誕生日を過ごすことになった。
せめて寄り添ってやりたかったので、予定をやりくりして同行することにした。

10日ぶりに会った義父は、別人に見えた。
顔色が土気色で、体がひと回り小さくなっているように感じられる。
せん妄なのか、意味不明なことを口にする。
だがよく聴くとそのストーリーラインには一貫性も感じられる。
妻がショックを受けていないかと思い、顔を見遣ると案外落ち着いている。
聞くと、父から何度か電話を受けていたのだそうだ。
そしてその都度、せん妄のような状況でよくわからないことを話していたので、妻には免疫力が生じていたようだ。
それでも「この間は、ここまでじゃなかった…」というひと言が洩れた。

私にはショックだった。
実の父も母も80代後半で入院を経験した。が、いずれの場合もせん妄に陥らずに済んだ。
そうならなかったのは本当に幸運で祝福だったのだ、と今日、思い知った。

29年後の自分。
健康で、生きがいを持って、その時にできることを喜んで行っている姿を思い描く。
そうしなければ不安でたまらなくなるような気がしたからだ。
別な言い方をすると、うかうかしていたら自分には予想もできない未来が訪れかねない。
だから自分で未来を設定する。設定した未来から逆算して今を、生きる。

義父とは良い関係性をこれまでも保ってきたと信じている。
そしてそれ故に、義父が私に未来を設定する機会をくれていると感じる。

今、できることをやろう。
それがどんなに小さなことでも。
自分の望む29年後から遡って、今できることをしよう。
そう決めたので今日、この原稿を書いた。
思い通りの未来に向けて、今日自分は旅立ったのだ。

つづく

若い頃に希死念慮で苦しんでいた私は自殺未遂とうつを繰り返してきました。でも人生は苦しむためにあるのではない、という当たり前のことを心底感じられるようになった今、自分にできることをしたい。あなたのサポートがそれを後押ししてくれます。一緒にこの世界を輝かせていきませんか?