せいたもとつぐ

元 在ロスアンジェルス日本語放送局アナウンサー テレビ番組・映画プロデューサー、通訳・…

せいたもとつぐ

元 在ロスアンジェルス日本語放送局アナウンサー テレビ番組・映画プロデューサー、通訳・イベント講師のキャリアを通して 「声と成功」「声と健康」「声と精神」が密接につながっていることを実感。 現在は「声」を通した日本人のエンパワメントが人生の目的。

最近の記事

あと29年間残されているならば 2

義父が入院してから今日で10日目。妻とふたりで見舞いにいった。 妻は今日が誕生日。自分のために何かをしてもらうのではなく、誰かのために何かをする日として誕生日を過ごすことになった。 せめて寄り添ってやりたかったので、予定をやりくりして同行することにした。 10日ぶりに会った義父は、別人に見えた。 顔色が土気色で、体がひと回り小さくなっているように感じられる。 せん妄なのか、意味不明なことを口にする。 だがよく聴くとそのストーリーラインには一貫性も感じられる。 妻がショックを

    • あと29年間残されているならば

      昨日、義父が倒れて入院した。 全身が痛くて仕方ないと訴えるので起き上がらせることも、背負ってタクシーに乗せることもできず、救急車に来てもらって送り出すまで様々にサポートした。 ひたすら目の前の作業に没頭している中で、ふと胸に湧いて来たのが、「生命に残された時間」という想いだった。 義父と私の年齢差は29歳。つまり29年後の私に同じことが起きてもおかしくないと言える。 そこから思考にふたつのルートが生じた。 「ああならないためにはどうしたらいいんだろう?」 という、怖れ

      • スキになる 22

        エポケることができるかどうかは、様々な要因が関わってくる。 というのは、相手をめっちゃスキ!だとエポケることができないからだ。 相手をイヤだと思っていても、エポケれない。 …だんだんと「エポケる」という動詞が活用され始めてる感もあるけど。 「スキじゃない」はエポケれる。 ら抜き言葉でごめんなさい、「エポケられる」でもいいです。 相手を「スキ」だと容易くエポケれる。 相手を「イヤ」だとエポケれない。 相手をめっちゃ「スキ」だとエポケれない。 と言うのは、エポケるための客観性

        • スキになる 21

          エポケる、という勝手な造語をひねりだした。 Epoché(エポケー)というギリシャ語がある。 批判しないで聴くという時に使われるマインドの使い方と言っていい。 英英辞典だと大抵、"Suspension of judgement"と定義されている。 つまり、「判断を留保する」という意味になる。 スキな相手の価値観をわかりあいながら、ふたりの共通の世界を広げあっていくプロセスの中でムリスキが登場した時、どれだけエポケるかが関係性の寿命を決定する。 相手が投げつけてくる余りにも

        あと29年間残されているならば 2

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          相手のスキを受け容れてスキな誰かとのスキの積集合を大きくしていく。 そもそもスキだと感じ合うということは、お互いに自分との共通点を感じている筈だ。自分と違うトコが新鮮でスキ、ということももちろんあるが、違いすぎる感じると同じ舞台に立っていない気分になってしまうことがある。 つまり共通点から始まって、お互いのスキを認めて受け容れてふたりの共通点を増やしていっている、というのが「スキになる」ことの本質なのじゃないかと考えてしまう。 そんな中で、前回挙げた「ちょっとこれはムリか

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          自分のパラダイム。自分のスキが創りあげた世界。 それは"World"という世界よりも"Domain(世界・領土・領域)"と呼びたいくらい、広大なものでもありうる。 なぜかと言えば、このパラダイムを構成している要素の中には、積極的にスキになったわけじゃないスキも含まれているからだ。 特に大きいのが家庭や社会や世界から押しつけられた価値観。 みんなが信じているから仕方なく信じなければならなかった、自分のパラダイムの構成要素。 これはノーと言ってはいけないと考えてスキに入れた、

          スキになる 18

          相手のスキを理解できないことは結構あるんじゃないかと思う。 自分に理解できない相手のスキを受け容れることはチャレンジだと思う。 自分のパラダイムが揺さぶられる瞬間を体験するから。 パラダイムとはこれまで自分(だと思ってきた意識の主体)が、記憶の集大成として創りあげたコード・オブ・オナーみたいなものだ。 コード・オブ・オナーが言い過ぎならば、金科玉条のようなもの。 いや、これだともっと言い過ぎか。 言い方はともかく、自分にとっての基準だとかスタンダードだとか規範だとかルール

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          誰かのスキを理解できたら、もしかしたら自分もそれをスキになれる。 中には、理解するのはちょっとハードルが高い、と感じるスキがある。 まったく理解できない、と感じるスキもある。 理解できないどころか、呆然としてしまうスキさえある。 でも、理解できなくても、寄り添うことはできる。 寄り添うというのは理解したふりをすることじゃない。 むしろ、自分には理解できないということを理解して、その上でただ相手のそのスキを受け容れる、ということなのかもしれない。 つきあい始めたカップルがい

          スキになる 16

          たった一度だけ出会ったタクシーの運転手さんの人生を、何も知らない私が勝手に想像している。 もしかしたら運転手さんは全然、掛川と関わりない人なのかもしれない。 高知の出身で、土佐藩・山内家のルーツ調べた結果、掛川に興味を持っただけかもしれない。出身じゃないけど土佐が好きなだけかもしれない。 あるいは日本茶が好きなのかもしれない。 掛川を訪れて好きになったのかもしれない。 何かはわからないけど、何かの理由で彼は「掛川」を境にしてこの国をふたつに分けている。 今こうやっ

          スキになる 15

          タクシーを降りた時にはもう意識は「打ち合わせ」に入っていたので、「掛川より西」のことはそのまま忘れていた。 二年後だったと思うのだが、高校野球のラジオ中継をまたタクシーの中で聴く機会があって、その時に突然憶い出したのだ。 「掛川より西」を。 時間をかけて熟成された(?)からなのか、そのフレーズはそれ以来私の顕在意識の中のどこかに刻まれてきた。 そして今、思う。 これもスキのひとつじゃないかな、と。 理由を問いただすことはできなかったが、とにかくあの運転手さんにとって、お

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          人生に偶然というものはなくて全て必然。そういう言葉をよく聞く。 だから、やっと「掛川より西!」だったと聴き取れた言葉の意味を尋ねる間もなく、タクシーを降りなければならなくなってしまったのも必然なのか。 急いでいなければ支払いをしながら質問できただろう。 「『掛川より西』だとどうして嬉しいんですか?」 あるいはこう聞くかな。 「運転手さんにとって『掛川より西』って何を意味してるんですか?」 質問の言葉はともかくとして、知りたいのはWhyだ。 なぜ「掛川より西」がこの運転手さ

          スキになる 13

          「運転手さんのご出身地の高校なんですか?」と聞いたのだから、返ってくる答は「そう!」か「いや、違うけど」のどっちかだろうと思ってた。 でも運転手さんはこう言ったのだ。 「カケガワヨリニシ!」 え? 何て言った? 一瞬、理解が追いつかなかった。 YES or NOじゃない回答が来たことがすでに予想外だったが、しかもなんか固有名詞っぽい。 さっきの「よしっ!!!」は明らかに「身内が勝ってる!」感じの「言葉のガッツポーズ」だった。だから今のは学校名だったかもしれない。 「イェ

          スキになる 12

          スキが意図になる。意図が現実を創る。前回その話をした。 具体的にそれってどういうことか、ひとつ例を挙げてみよう。 もう何年も前の夏のある日、タクシーで移動していた。車内では高校野球のラジオ中継が流れ、運転手さんは運転しつつ夢中になって聴いている。 突然、実況中継のアナウンサーの声が興奮で昂った声で叫んだ。 「ついに均衡が破れましたー!!1対0、〇〇高校が先制!」 同時に運転手さんも叫んだ。 「よしっ!!!」 私にとって馴染みのない高校名だった。思わずたずねた。 「運転手

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          そういうわけで、ジャーニーは「展開する」がしっくりくる、と言いたかったのだった。 何かが展開する時、それまでそこにあったのに見えていなかったものが、姿を顕すからだ。 これって量子の世界の不思議さに似てる、と感じる。 ご存じの方も多いだろう、素粒子レベルになるとあらゆるものは粒であるけれど、波でもなる。ふたつの状態が重ね合わせになっている。 波だけど、ある一瞬、観測者の意図が働いた時は粒になる。 観察していない瞬間は、どうなっているかを「こうなっている」と言い切ること

          スキになる 10

          「展開する」という言葉を表す英単語に"Unfold"がある。 Unは打ち消したり逆の状態を創りだす接頭語で、Foldは動詞の場合には「折り畳む」とか「収める」あるいは「折り重なる」を意味する。 ふたつ合わさると「展開する」。シンプルに「広げる」という意味にもなる。 この"Unfold"という言葉に私はすごくビジュアルなイメージを感じる。 折り畳まれていたものの、折り目をほどく。 折られていたものが広げられる。 するとそれまで見えない状態だったものが、姿を顕す。 スキを

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          自分の人生というジャーニーは日々展開していく。 最初はそんな意識もなく、ただ純粋にスキを見つけて楽しんでいるのだが、だんだんとそこに道が生じたかのようにジャーニーが「展開」する。 そしてある時点で「あ、展開してってる」という事実に気づく。 無限の広がりという状態の中からだんだんと固定化された意識を持つようになっていく、そのプロセスは個別化していくことだとも言えるだろう。 個別化とは、「選択肢を持つこと」ではないだろうか。 無限に広がる世界は選択肢という形にすらなって