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第2章 天与のプラン、プリマ参番館


最初の2棟のプリマ竣工後、入居者募集でお世話になったA社から、立て続けに3人の地主さんを紹介され、

横浜市内で3棟のプリマを受注しました。プリマ弐番館の敷地をM氏に売却した歯科医師のS氏からも

駐車場にしていた土地の有効活用でプリマの受注を頂きました。

 

知り合いの不動産会社の社長Y氏は店舗併用のプリマを、弐番館のオーナーのM氏は、新たに土地を購入し、

2棟目のプリマを注文してくれました。取引のあった金融機関から、またA社とは別の賃貸不動産会社からも

地主さんの紹介を頂き、2008年に紹介と口コミで10棟のプリマを契約しました。

 

プリマの受注が順調に推移する中、私自身も自己所有のプリマを増やそうと、

2008年6月に京都府木津市に所有していた区分所有のマンションを売却しました。

 

その売却資金を元にプリマ壱番館と同じ横須賀市安浦町内に90坪の借地を新たに購入しました。

購入した借地は裏表の2面が道路に接する両面道路の物件でした。

各道路を接道面に各棟8戸で2棟、プリマ参番館、プリマ五番館の計画を始めました。もちろん、2棟共女性専用のプリマです。

建築資金はプリマ壱番館でお世話になった地元の信用金庫が引き続き融資を引き受けてくれました。

 

プリマ壱番館の際は建築資金の融資が3,200万円だったのですが、

今回は一棟あたり4,200万円、2棟合計で8,400万円の融資を受けられました。

壱番館では敷地面積と建築資金の制限が厳しくてできなかったことが今回は可能です。

 

壱番館では、一戸あたりの専有面積を16㎡しか取れなかったのですが、参番館は専有面積を22㎡まで広げました。
22㎡にしたのには訳があります。

計画地のある横須賀市では建物の延床面積を200㎡以下にし、かつ建物を45分準耐火構造にすれば、市の建築基準条例で集合住宅に求められる2方向の避難通路の確保、2階部屋からの避難機具の設置が必要ないのです。

 全体の面積を200㎡以内に抑えるには、プリマは2階建てなので、各階の面積は100㎡以下となります。

その内、プリマは玄関、階段、廊下の共用部の面積が合計で約12㎡あり、残った面積を各階の戸数4で割れば、

100-12=88÷4=22㎡となるのです。その限界まで各戸の専有面積を広げました。

 そして建築基準法で許容されるロフト面積は専有面積の2分の1まで、ロフトの面積は最大で11㎡です。

22+11=33㎡、1LDKの賃貸マンションの専有面積は30~35㎡なので、

今回のプランはロフトを寝室として使えば、単身者が住むには余裕のある広さです。

 

賃貸物件を探す際に、寝室と居室を別にできる1LDKを希望する人は多くいるのですが、実際には1LDKは物件自体が少ないことと、仮にあったとしても、家賃が高く、予算に合わず、そこに住めない人が多くいるのです。

参番館は本来であれば、1LDKの間取りを希望する女性の単身者まで入居者の募集範囲を広げました。

次に、改良を図ったのは設備です。壱番館のキッチンはスペースに余裕がなく、冷蔵庫付きのミニキッチンだったのですが、入居者の評判が芳しくありませんでした。参番館では2口IHコンロ付き、

人工大理石カウンターのシステムキッチンを導入しました。そしてキッチンスペースを居室から独立させ、ダイニングと対面で配置しました。

 以前は主婦の憧れだった対面キッチンです。対面キッチンは今では注文住宅、分譲住宅で一般化しましたが、アパートではまだまた少なく、単身者用の物件では稀にしかありません。

これで、参番館はキッチンで他の物件と大きな差別化が図れます。キッチンは女性が物件を選ぶ際に、セキュリティーと共に最も重視するポイントです。居室が広いほうがいいとか、単身者がいったい誰と対面するのか?

という関係者の真っ当な意見もありましたが、妻に相談したところ、妻は大いに賛成で、対面キッチンの導入が決まりました。

 キッチン以外では、壱番館の洗面台はユニットバスの中にありましたが、参番館ではトイレを兼ねた脱衣室に独立のシャンプードレッサーを設置しました。便器には洗浄便座を付けました。


プリマ参番館 対面キッチンと三面鏡付のシャンプードレッサー


 

間取り的には壱番館ではやむなく諦めた物入れが参番館ではしっかり取れました。更に、11㎡あるロフト面積の3㎡分をウォークインクロゼットにしました。

ロフトにあるとはいえ、普段使わないもの、季節物の衣類等を収納するにはとても便利です。

 収納スペースの充実も、物件選択の際の重要ポイントのひとつです。このウォークインクロゼットは予想外に好評でした。もともとロフト自体が居室にサービスで付随する空間なのですが、

その奥にウォークインクロゼットまであるのです。入居者はおまけに更におまけが付いているような得をした気分になります。LDKは合わせて約9畳、ダイニングテーブルと椅子が2脚、二人掛けのソファーとコーヒーテーブル、ローボードが無理なく置けるスペースです。

専有面積を22㎡に抑え、LDKで9畳の広さを確保するのは、通常のアパートプランでは不可能です。

しかし、プリマでは可能です。なぜなら、プリマには部屋の専有部分には廊下がない、あったとしても最低限にしかないからです。

 建物中央に各室の玄関を配置するプリマの設計構想が22㎡の物件でLDK9畳を可能にしたのです。

従来の片廊下型アパートではできないことです。

 プラン用紙に向い、私は30分ほどで参番館のプランを書き上げました。

感覚的には一瞬でした。考えたというより、手を動かしたという感じです。出来上がったプランはまさに天与のプランでした。

何度見直しても、改良の余地がありません。一切無駄が無い完璧なプランです。

参番館の完成後、このプランがその後に建つプリマの基本プランとなります。


1階床面積98.61㎡ 2階床面積99.81㎡ 延床面積198.42㎡(60.02坪)


参番館の外観デザインは南フランスの建物を参考にして決めましました。

壱番館の外壁には会社に在庫のあった擬石を使ったのですが、参番館ではインターネットで見つけた

アンティーク煉瓦をわざわざカナダから輸入して使いました。また、モールディングにも凝りました。

 参番館はその平面プランが30分で完成したのに対し、外観のデザインと使用する部材の選定には難航しました。

何回も外観デザインのスケッチを画き直し、2008年11月に着工する直前まで

イメージに合う部材をカタログやネットで探しました。

 また、参番館では間取り、デザインだけでなく、構造、性能、設備に関しても、壱番館の設計仕様に大幅な改良を試みましたので、着工後は大工さん、職人さんとの詳細の打合せ、納品された部材の実際のイメージの確認と、現場通いの日々が続きます。工事中の変更も多く、LDKの壁が寂しいので腰板を追加したり、共用階段の手摺りを木製の既製品から手造りのロートアイアンに変更したりと、当初の予算は無視して、デザインも性能も最高のアパートを作る努力を私は続けました。

そして2棟目の自己所有アパート、プリマ参番館が2009年3月20日に竣工しました。



今回はモデルルームの一室を除く全室の入居申し込みを竣工前に受けました。

参番館の平均家賃は、壱番館より1万円高い7万円、近隣にある同じ広さの単身者用物件と比較すれば、かなり高め、予算的にも入居者層は限られます。それでも、竣工時には3人のキャンセル待ちがありました。

 同じ時期に参番館のすぐ近くに竣工した大手ハウスメーカーの外階段、ケージ型のアパートは4月を過ぎても半分以上が空室のままです。

 入居者が魅力を感じないただ住むだけの従来のアパートは、新築というだけでは、入居者に選択されません。

賃貸住宅は既に貸手市場から借手市場に移行しています。私は時代の変化を実感しました。

 プリマ参番館では当初からモデルルームを設置する計画がありました。壱番館のモデルルームは入居希望者に見せるのが目的でしたが、参番館のモデルルームは入居希望者だけでなく、むしろプリマのオーナーとなる投資家や地主さんを案内し、プリマの受注を促進するのがその主な目的でした。

 

そのため、モデルルームを設置する部屋は最初から入居者を募集しませんでした。

壱番館の完成後、新規プリマの受注が順調に続きますが、オーナーとの商談において、

建物の外観だけでなく部屋の中も見たいと希望する人が多くいました。
けれども、完成したプリマは常に満室で、共用部の階段、廊下以外は、

実際に中を見ることはできません。施工写真を見せながら、説明するのですが、3.6mある吹抜けの空間や、ロフトのイメージが伝わりません。

 今後のプリマの受注のためには、いつでもプリマのオーナーとなるお客様を案内できるモデルルームが必要でした。

新たに家具一式を購入、参番館の完成と同時にプリマの新しいモデルルームができ上がりました。

 このモデルルームを拠点にして、2009年に新たに10棟のプリマを受注しました。その内3棟は、参番館と全く同じプランでの契約でした。

アパートプランの新規打合わせに際しては、常に参番館がその基本プランとなり、参番館で採用した対面キッチンが標準化します。

新たに土地を購入し、アパート経営を希望する多くの人から、参番館のプランが建つ土地を探して欲しいという要望を受けるようになりました。

参番館のプランは私が30分で仕上げたプランです。 プリマ自体も私はそう思うのですが、参番館のプランは私が神様から頂いた突然の贈り物です。




【コラム01 ちょっと嬉しかったこと】

プリマ参番館への入居者全員の引越しが終わりかけていた頃のことです。

私は共用部の電気代金の支払いの件で、電力会社の担当者をアパートで待っていました。

約束した時間より少し早かったので、私は共用部の掃除をしようと建物の中に入りました。

すると、幾つかの部屋の玄関ドアのノブにかわいいメモ用紙に書かれた

手紙と小さなビニールの袋がかけてありました。


○○号室に引っ越してきた○○です。
これから一緒に暮らさせていただきます。宜しくお願いします。
何て素敵な心づかい、 袋の中には小さな贈り物が入っているようでした。
オートロックから入る内廊下のプリマだから、女性専用のプリマだから、こんなことも可能なのでしょう。
 
単身者用のアパートは入居者の入れ替わりも早く、隣は他人、
どんな人が住んでいるのかもわからないのが最近の世情ですが、ひとつの玄関から中に入って、
共用部のあるプリマではその中で入居者のコミュニティーが形成されます。
 
入居者のコミュニティーこそが住む人の安全性を高める最も重要なポイントです。新しくできたプリマ参番館で、
新しいコミュニティーが芽生えつつあるのが分かって、私はちょっと嬉しかったです。本当は、とっても嬉しかったです。
プリマ開発者 AUGUST 中谷光伸氏


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